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「この敗北の意味」 (ルヴァンカップ準決勝2ndレグ・アルビレックス新潟戦:0-2)

10月13日、Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsuで行われたYBCルヴァンカップ準決勝第2戦・アルビレックス新潟戦。

 3点差の勝利が絶対条件だった川崎フロンターレは、前半終了間際に手痛い失点を喫していた。2戦合計によるトータルスコアは後半開始の時点で1-5となっている。

 その後もゴールネットが揺れることはなく、決定機らしい場面も少なく、時間だけが過ぎていった。時間とともに、クラブ史上初のファイナル進出を確信し始めたオレンジ軍団の声援がどんどん大きくなっている。

 そして80分を過ぎてからのスタジアムには、この後に何も起こらないことを覚悟したような、期待も何もない時間がただただ流れていた。

試合前にあれだけ誓っていた「最後まで諦めない」という言葉が虚しくなり始まる。もっと言えば、3点差で勝とうとしていたこと自体が悲しくなるような展開だった。

 そんな試合を目の前で見せられて、なかなか平常心ではいられない。
試合前のプレビューで僕は「先にゴールを奪えば、新潟の選手たちの『平常心』を奪うことにもつながる。その展開になれば、決勝戦に進んだこともない彼らにとって、等々力の大声援もプレッシャーになり、平常心では戦えなくなるはずだ」みたいなことを書いたのだが、平常心でいられなくなったのはこちらの方だった。

 いろんな感情が渦巻きながら、それでもタイムアップまでの数分で自分の気持ちになんとか折り合いをつけていく。悲しいかな、大差で負けている状態だったことで、現実を受け入れるだけの冷静な時間を作れたとも言える。

 将棋のタイトル戦を見ていると、負けを悟った棋士はすぐに投了しないことが多い。

 諦めが悪いのではない。負けという現実を受け入れながらも、残りの時間を自分の気持ちを整えるために使っているのだ。そうやって自分なりに気持ちを落ち着かせてから、「負けました」と深く頭を下げて、投了を告げるのである。

「投了前に気持ちを整える棋士というのはこういう感覚なのだろうな」と記者席でなんとなく思った。

 敗退が決定的だった終了間際の89分、太田修介にダメ押しとなる2点目を決められる。この時間帯になると、タイムアップを待たずに、記者席の前のメインスタンドにいたサポーターが、ちらほらと席を立ち始めていた。そそくさと席を立つ人もいれば、歩きながら手すりを殴って怒りをぶつける人もいた。感情表情はそれぞれだが、みんな悲しいし、悔しいのだ。

※10月16日、クラブから鬼木達監督の契約満了に関するリリースがありました。その後、予定されていた鬼木監督のオンライン囲み取材では今回の退任に関する質疑応答も行われています。終始、明るい表情で語ってくれましたが、「鬼木フロンターレ」に関して自分なりに書き残しておきたい話をまとめておきました。約4000文字になってます。よろしくどうぞ。

→■(※追記:10月16日)。「これだけ長くやった中で責任を取れるのは自分しかいないというところもあります」(鬼木達監督)。退任が発表された日に書き残しておこうと思ったこと。

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