「等々力から愛を込めて」 (リーグ第38節・アビスパ福岡戦:3-1)
キックオフ前、円陣を組んだ選手たちが散り、それぞれのポジションについていく。そして主審が試合開始を告げるホイッスルが吹かれるまでのあの間、スタジアムには独特の空気感が漂うものである。
試合が始まる前のドキドキ感もあれば、ピッチで表現される光景に対するワクワク感もある。あるいは、試合によって結果に対する緊張感も入り混じるだろう。
そういうさまざまな感情をめぐらせながら、キックオフまでの瞬間を待つ。試合前の特別な時間であり、それがリーグ最終節ならば、なおさらだ。
2024年12月8日のUvanceとどろきスタジアムby Fujitsu。その特別な時間に響き渡り続けていたのが、「鬼木フロンターレ」のコールだった。
鬼木達監督はいつものようにベンチから立ち上がり、Gゾーンに向かって手を上げてコールに応える・・・この8年間、指揮官がやってきた変わらない儀式だ。
だが、この日はいつもと少し違っていた。
普段はその場から少し前に出てコールに応えるだけだが、この試合ではテクニカルエリアの中央付近まで歩みを進めてから両手をあげて応え、そして頭を下げている。
それだけではない。
ベンチの後ろもくるりと振り返り、メインスタンドにも手を上げて応えていた。
いつもよりも前に出ていき、コールに応える。そして後ろに向かっても挨拶する。そんな指揮官の振る舞いに、キックオフ直前のスタジアム全体は温かい拍手に包まれていた。
この試合が最後だということを、誰もがわかっているからだ。
その光景を記者席から噛み締めていた自分も、どこか不思議な感覚だった。
もちろん、頭では最後だとわかっているのだ。
でも、心のどこかでは鬼木達監督がいなくなるという現実をまだ受け入れていない。そんな気持ちでキックオフを待ち、ゲームを見るのは初めてだった。
※12月10日に約4000文字のコラムを追記しました。等々力にいる神様の話です。
→■(※追記:12月10日)どんな困難にも立ち向かい、言い訳もしない。そして常に矢印を自分に向け続けてきた鬼木達監督に、等々力にいる神様はやっぱり優しかった。
※12月13日、12日の長谷部茂利新監督の就任、さらに鬼木達監督の鹿島アントラーズ監督就任を受けて2本ほど追記しました。
→■(※追記:12月13日)「長谷部フロンターレ」が正式に誕生。鬼木達監督から「強い信念のある方」と評されていた長谷部茂利新監督。
→■(※追記:12月13日)「環境が変わったらまた刺激自体があるし、その中で学ぶことも多い」(鬼木監督)。鬼木監督が語っていた、充電期間を設けずに、来年も走り続ける理由。そして指揮官としての強み。
ここから先は
¥ 500
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
ご覧いただきありがとうございます。いただいたサポートは、継続的な取材活動や、自己投資の費用に使わせてもらいます。