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「TRUST ME」 (ルヴァンカップ準々決勝1stレグ・ヴァンフォーレ甲府戦:1-0)

「もう本当に『やばい!』と焦りました」

声の主は山田新だ。試合後のミックスゾーンであの記憶を尋ねると、彼はそう苦く笑っていた。

それは1-0のリードで迎えた88分の場面である。

ゴール前のセットプレーを弾き返し、佐々木旭が大きく前線にクリアをする。そのこぼれ球を山田新が中盤で回収。それを確認した川崎フロンターレの選手たちはディフェンスラインをグッと押し上げることで、ゴール前に残っていたヴァンフォーレ甲府の選手たちをオフサイドポジションに置き去りにしていた。

 ただボールを持っていた山田新、は前線の出しどころが見つけれず、サイドにボールを運んでいる。すると素早く前と後ろから白いユニフォームの選手が挟んできた。囲まれる格好になった山田は、たまらずバックパスを選択した。

 ゴール前に相手選手は誰もおらず、GK山口瑠伊にやり直すを促す、セーフティ
なバックパスにしたはずだった。

 ところが、いたのだ・・・そこにピーター・ウタカが。

「(ウタカは)見えてなかったです」と山田新は言う。だが、それがゴール前に残っていた40歳のストライカーへの絶好のプレゼントパスになってしまったのである。

当然ながら、オフサイドはない。山田は猛スピードで戻ろうとしたが、すでにウタカはGKと1対1だった。

 不意に訪れた大ピンチ。ただ、この日初めて先発したGK山口瑠伊は冷静だった。すぐには足元に飛び込まず、ウタカのフェイントにも粘り強く対応。うまく切り返しをさせることで、味方が帰陣する時間をわずかに作っていたのである。

 倒れながらも、それでもウタカの足元に喰らいつく山口瑠伊。そして必死に戻ってきた山田新と車屋紳太郎でシュートコースを限定させ、シュートはカバーリングに入っていたセサル・アイダルが左足で間一髪で弾き出す。ボールはゴールラインを割って、コーナーキックになった。

 まさに九死に一生。

フロンターレに加入して間もない仲間たちで見せた、見事な連携。山口瑠伊はセサル・アイダルとハイタッチし、そのカバーを労っていた。

「みんなに感謝しています」

今年、いくつものゴールでチームを救ってきたストライカーは、そう言ってほっと胸を撫で下ろしていた。

※ルヴァンカップ翌日に行われたW杯アジア最終予選の日本代表対中国代表戦。その前日に20歳を迎えた高井幸大が、待望の日本代表デビューを飾りました。

高井幸大のように、ポテンシャルを秘めた若い選手をみていると、ふと思うことがあります。それは「才能ってなんだろう?」です。

今年、パリ五輪を控えた直前、ロングインタビューをする機会がありました。そこで「高井選手は才能って聞いたらどんなことを思います?」とストレートに聞いてみました。なぜなら同僚であった大南拓磨が、高井幸大のことを「ポテンシャルの化け物」って言ってたんですね。高井本人は才能ってどういうものだと思っているのか。その考えを聞いてみたかったのです。彼らしい答えだったので、そんなコラムを追記してみました。約2000文字です。

■(※追記:9月6日)「だめです。全然才能ではないです」(高井幸大)。才能について語るとき、高井幸大が語っていたこと。


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