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「次につながるではなく、つなげなくてはいけない」 (ルヴァンカップ準決勝1stレグ・アルビレックス新潟戦:1-4)

ほんの2週間前、5-1で大勝した相手に後半開始10分までに4失点。

この日のデンカビッグスワンスタジアムのビジョンには、試合前は多くの人が想像していなかったであろうスコア差が表示されていた。

 71分、コーナーキックから追撃の1点が生まれる。山本悠樹が蹴ったボールをファンウェルメスケルケン際が頭で逸らすと、中央で反応したのは瀬川祐輔だ。こぼれてきたボールを足で止めて、素早く蹴り込んだ。

「あのままです。来たボールを止めて、すぐに反応できた」

ほとんど感覚だったのだろう。あのゴールについて瀬川祐輔はそう説明してくれた。

たかが1点、されど1点である。

このワンゴールは、第2戦に向けたチームに勇気を与えるものとなった。自らの得点が週末の逆襲につながると信じている彼は、試合後のミックスゾーンで力を込めて言った。

「あとはホームでやれるし、フロンターレだからこそできると信じている」

 瀬川祐輔がゴールネットに流し込んだこの追撃弾。実は、そのボールを素早く拾い上げ、抱えてセンターサークルに走った選手がいた。

この後半途中、瀬川祐輔と同時にピッチに投入された丸山祐市である。

後半途中からセンターバックに入った彼の振る舞いは、失点を重ねていたチームに落ち着きをもたらしてくれた。

前半の戦況をベンチからどう見ていたのかを試合後に尋ねると、35歳のベテランは、いつものように淡々とした口調で振り返り始めた。

「相手のホームなので(前半の)1失点は仕方がないかなと思っていました。ただ正直、前半は0-1で折り返したかった。相手の圧力にやられてしまい、プレッシャーをかわせるようなポジショニングが取れていないのかなと感じました」

入ってから意識したのは、後ろからの組み立てだ。セサル・アダイルの位置に入った彼は、左サイドに的確にボールを配給し続けた。

「次もあるので細かいことは言えませんが、相手も僕が入ってから(守備の)圧力はそこまでかかっていなかったので」

 次の試合は3点差を追いつかなくていけない。
1点が大きな意味を持つサッカーにおいて、それは簡単な作業ではない。バスケットボールのように33ポイントシュートもなければ、野球のように逆転満塁ホームランもないのだ。どんなに綺麗にゴールネットを揺らしても、1ゴールしか与えられないのがサッカーである。

 しかし試合時間は90分ある。難しいが、決して不可能ではない。そう水を向けると、丸山は同意してくれた。


※10月11日、鬼木監督と三浦颯太のオンライン囲み取材がありました。週末のルヴァンカップ準決勝2ndレグに向けたもので、大逆転でのファイナル進出に向けた想いを語ってくれたので、追記しております。

■(※追記:10月11日)「簡単なゲームではないと思いますけど、自分たちにしかできないミッションだと思って取り組みたい」(鬼木監督)、「試合直後に、オニさん(鬼木監督)も『試合をひっくり返すための準備をこの瞬間からしていこう』と話していました。そのための準備を、いま全員ができています」(三浦颯太)。等々力の大逆転劇を見据えて、鬼木監督と選手が語ったこと。



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