谷口彰悟について語るとき僕の語ること(前編)
谷口彰悟を初めて取材したのは、いつだったかな。
記憶の糸をフンフンと手繰り寄せてみると、彼が新人だった2014年のシーズン前、2月の宮崎キャンプのときでした。
当時は筑波大から加入したばかりの大卒新人。
センターバックの印象が強いけれど、もともとは大学ナンバーワンボランチという触れ込みでやってきた選手でした。この日は、チームとして今年初の練習試合で3本目と4本目のゲームに大島僚太とボランチを組んでプレーしていました。
中盤や後ろでボールの動かすときのこまめなポジショニングが抜群で、いわゆる味方から「隠れない受け方」がスムーズにできていることに驚かされました。センターバックから中盤に入るボールにはまず前を向き、そこから狭い場所にも縦パスを通せる技術があったんですね。
筑波大で風間八宏監督のもとでやっていたのだから当然かもしれませんが、想像以上のパフォーマンスでした。ボールを正確に扱う技術に加えて、サイズがあるので最終ラインの前で防波堤にもなる守備も出来るのも、個人的にも高評価でした。なのでチームの志向するスタイルを考えると、「これは即戦力でしょ」と思ったのを覚えています。マスクも良いので、「こりゃあ、人気もでるぞ」というのも予想できましたね。
この練習試合後、谷口彰悟に声をかけて初めて取材させてもらいました。当時のやりとりはメモが残っていたので、再現しておきます。
─-試合の感想を。
「今年初めての実戦でしたが、そのわりにはやれたかな、と思います」
─-ボールを受ける技術が高いですね。
「まだまだボールを受けられるし、動きの質を高めていかないと思っています」
─-大島選手とのボランチ、やりやすそうでした。
「僚太は技術がある選手ですし、ボールを受けるのも上手いです。良い関係を築けていきたいです」
-----風間監督のこのスタイルのなかで追求していきたいことは?
「受けてつなぐことをもっと意識していきたいですね。今日はミスも多かったので」
─森谷選手が去年移籍してきた時、風間監督から「思い出せ」と言われたそうです。谷口選手は監督から何か言われましたか?
「思い出せとは言われてないですね(笑)。ちょっと前までは、もっと『前を見ろ』とは言われていました。横や後ろでつなぐことばかり考えていたので、前を向いてやれというのは言われていました。それは今も意識しています」
─-個人の目標設定。今年はどのあたりに?
「多く試合に絡むこと。簡単にスタメンで出れるチームではないですが、そういう思いは持ち続けたいですね」
─ボランチとCB、試合に出る為にはどっちのポジションで勝負したいなどのこだわりはあるほう?
「こだわりはないです。『出たとこ勝負』でしっかりやりたいですね」
─-出たとこ勝負ですか。なかなか面白い言い方しますね、
「出たとこ勝負・・・いや、『出されたところ勝負』ですね(笑)」
─-ボールを触るのが好きなら、ボランチじゃないですか?
「ボールを触るのは好きではないんですよ。いや、好きなのかな・・・?できれば、あんまりボールは受けたくないかも(笑)」
─ボールを受けることを嫌がったら、風間監督に怒られますよ。
「あはは。ボールを受けてリズム作れるように頑張ります」
・・・・とまぁ、こんな感じで雑談みたいに聞かせてもらいました。出たとこ勝負ならぬ「出されたところ勝負」とは面白い表現をするなぁ、と思ったのをよく覚えています。
もちろん、選手たるもの監督に言われた場所で勝負しなくてはなりませんが、その後、まさか左サイドバックでJリーグデビューを飾るとは思わなかったですけどね・笑。
優等生のイメージが強いですが、1年目(2014年)の夏には、いきなり金髪に染めて周囲を驚かしています。実は少しずつ茶色に染めていたそうなのですが、先輩たちから「ビビッてるんじゃねぇよ」とイジられていたため、思い切って金髪に挑戦。ただ実際にやると、「何年目なんだよ?」、「調子にのるなよ」などとあえなく先輩たちの手のひら返しを受けたみたいです。
そんな中、ベテラン・稲本潤一だけが「最近は若手に勢いなかったから、いいよ!」と褒めてくれたと明かしています。周囲から不評だったため、ほんの2週間ほどで金髪は終了してます。ただ記念すべきJリーグ初ゴールをその金髪のヘディングで記録していたりします。
「金髪でやれることはやったんで!」と未練はないと言ってたんですけど、2016年の開幕戦直前に今度はシルバーヘアーにして周囲を驚愕させています・笑。
基本的にはとても真面目なんですけど、たまにやることが大胆なんですよね。なので今回の海外移籍も、実は谷口彰悟らしい決断だなとも思ったりします。
そんな彼の川崎フロンターレでのキャリアを、シーズン別に振り返っていきたいと思います。
9シーズンあるので、3年区切りでまとめていきます。2014〜16年を前期、17年〜19年を中期、そして20年〜22年を後期としてみました。
今回は前期です。ルーキーイヤーの2014年から、風間八宏体制でのラストイヤーとなった16年までの谷口彰悟のアレコレ。ここでしか読めないモノもあると思うので、ぜひ読んでみてください!!
■多摩川クラシコで果たしたJリーグデビュー!まさかの左サイドバック起用!(※2014年)
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