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「Problem」(リーグ第36節・京都サンガF.C.戦:1-1)

 ちょっと意外な言葉だった。

それは、試合後のミックスゾーンで、ディフェンスリーダーの丸山祐市に前半の攻撃の組み立てについて尋ねた際に、彼が話してくれた視点である。

 この試合の前半を振り返ると、互いにハイラインで前からプレッシャーをかけるため、陣形がかなりコンパクトで、中盤は選手が密集。切り替えも早く、両者がなかなか落ち着いてボールを持てないような状態だった。どちらのプレスも早いので、最終ラインの選手はラインの裏を突く攻撃を繰り出す展開が続いていた。

 ただ裏を返すと、ゲームがあまり落ち着いていない印象も受けた。
このハイテンポで進んだ前半は臨むところだったのか。それとも、もう少しスローテンポで試合を進めたかったのか。試合後の会見で鬼木達監督に尋ねてみたところ、前半の展開は「自分が求めていたこと」との答えが返ってきた。

「前半はスタートから前へ前へという選手が多かったですが、それは自分が求めていたことなのでよくやってくれたと思います。ただ行ったり来たりという難しい展開になっていたので、縦が速かったですが、もう少し横の揺さぶりが出てくればよかったと思います」

 背後の狙いを徹底するのはプラン通りだったというわけである。ただ問題は、その配分だった。指揮官の指摘通り、前半に関して言えば、やや一辺倒になってしまったのである。

 では選手目線ではどうだったのか。
左サイド攻撃に的確な展開をしていた丸山祐市に前半の狙いを尋ねたのだが、「お互い様かもしれないけれど」と前置きした上で、彼は意外なことを話し始めた。

 それはデーゲームで行われていたスタジアムの試合中に差し込んでいた日差しである。前半はその影響が少なくなかったと触れたのである。

「「相手が(プレスに)来ていたと言うのはありますが・・・正直言うと、ボールが見えにくかったというのがありました。(ピッチの場所によって)日陰と日向の部分があって、ボールが見えなかったり、急に(ボールが)出てきたりした」

確かにDAZNで前半の試合映像を確認すると、日陰と日向の部分がかなりくっきりと分かれている。プレーエリアによっては、逆光が強く差し込んでいた中でプレーしなくてはいけなかった場面もあったのだろうと推測される。

 いつボールが出てくるか判断できないと後ろは守りにくい。ボールを持っても、逆光で相手のプレスが見えにくければ、セーフティに長いボールで逃げたくもなる。もちろん、そこはお互い様だし、彼はそこに言い訳をしているわけでもない。ただこのスタジアムでの日差しは、この日の選手のプレー選択に小さくない影響を与えていたということだ。ピッチにいた選手に聞かないとわからない話である。

 この試合のレビューはそうした視点も踏まえて読んでいただけると幸いである。

※11月13日の公開練習後、京都戦後のミックスゾーンで話が聞けなかった大島僚太に、先制アシストに関して聞かせてもらいました。あの場面、受け手の山田新との関係というよりも、相手GKとの駆け引きでパスの種類とタイミングを選択していたことがわかり、軽い衝撃を受けました。コラムを追記しましたので、ぜひ読んで、あのアシストに表現されていた大島僚太の世界を堪能してみてください。

→■(※追記:11月13日)「あのパスだけで言えば、ほぼほぼ狙い通りです」(大島僚太)。なぜスペースではなく、山田新の足元にバウンドしないボールを届けたのか。あの先制アシストに表現されていた、大島僚太が見ている世界とは。

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