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「何が変わるのか」 試合をディープに観戦するためのポイントプレビュー (ACLE MD7・浦項スティーラーズ戦)
長谷部フロンターレの初陣となります。
AFCチャンピオンズリーグエリートの第7戦、相手はKリーグの浦項スティーラーズ。現在4位につけている川崎フロンターレにとっては、勝てばリーグステージ突破が決まる1戦となっています。一方の浦項は5位。リーグステージは残り2試合なので、なんとしても連勝したいはずです。
初陣なので、ここまでのチーム作りについて振り下げていきたいと思います。
「守備の部分では練習試合は一番うまくいきました。整備されてきたのかなと思います」
三浦颯太の言葉です。
先週、チームは非公開で練習試合を実施しました。開幕前のタイミングでは、最後となる練習試合です。取り組んでいた守備だけではなく、攻撃にも良い感触があったようで、三浦はそこの手応えにも言及しています。
「この前はいい距離感で出来ていたし、遅攻と速攻も使い分けていた。あとは最後のクオリティのところでも複数得点が出来たかな」
沖縄キャンプでの練習試合は、スコアも内容も芳しくありませんでした。それだけに開幕直前でのこの言葉には少しホッとさせられたのも事実です。
■戦術眼を備えている山本悠樹が語る長谷部フロンターレにおける継続と変化
キャンプ後の麻生グラウンドでボランチの一角を担う山本悠樹に話を聞いたときのことです。彼には、チームの現状や戦い方の浸透具合に関して色々と尋ねてみました。戦術眼を備えており、ピッチの出来事を巧みに言語化してくれる存在ですから、チームの現在地を把握するには適任だと思ったからです。
「去年の最後らへんで良かったところがありますし、その継続というところですね」
まず口にしていたのは、変化ではなく継続の部分でした。
ちょっと意外でしたね。
チームの指揮官が鬼木達監督から長谷部茂利監督に代わったこともあり、こうしたチームの流れ自体がリセットされるものだと思い込んでいたからです。監督交代自体が9年ぶりなので、監督変わったらチーム作りもリセットされるものだと僕も勝手に考えていたんですね。
そもそも前任者の鬼木監督も、風間監督の元でコーチを長くやっていたわけで、要は内部昇格でした。スタイルを継承する流れでした。なので、前任者からのスタイルを引き継いでいない監督交代というのは、相馬直樹→風間八宏以来(2012年)となります。それこそ12~13年ぶりぐらいなんです。当時の相馬フロンターレから風間フロンターレの以降は、かなりの方向転換でした。
あの時代ほどではなくとも、長谷部フロンターレからの志向するスタイルやサッカーの捉え方も認識を変える必要があるのだろうなと思っていたのですが、「継続」というキーワードが出てきたことは少し意外でした。
ただ言われてみると、去年のシーズン終盤、チームは公式戦4連勝で終えています(ACLEのブリーラム:3-0、東京ヴェルディ:5-4、ACLEの山東泰山:4-0、アビスパ福岡:3-1)。
チームは4-4-2システムを採用し、2トップによるハイプレスを基調としており、その戦いのバランスがうまく機能。よい守備から複数得点も奪えていましたし、いいイメージのままシーズンを終えています。
そして山本悠樹の実感として、この流れを継続しているというわけです。
言い換えると、大枠の方向性は、そんなに転換していないとも言えます。実際、採用しているフォーメーションもアビスパ福岡時代の3バックではなく、去年の終盤に鬼木フロンターレが採用していた4-4-2(4-2-3-1)を導入しています。選手もほとんど変わってないですし、配置に関しても慣れ親しんだ形でやれているのは大きいと言えそうです。
だから、初陣のピッチで展開されるサッカーを見ると、「去年とあんまり変わってないんじゃない」と思う可能性だってあります。
しかし、だからと言って、長谷部監督は鬼木監督時代のコピーをやろうとしているわけではありません。
じゃあ、何を変えていこうとしているのか。
取材を通じて見えてきた「長谷部フロンターレ」について、長谷部監督や選手たちの証言から読み解いていきましょう。
今回は浦項スティーラーズ戦のプレビューでもありますが、シーズン開幕の展望も兼ねた内容になっておりますので、全部で約13000文字のボリュームです。読み応えは抜群なので、ぜひどうぞ。
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