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「サテツの塔」 (リーグ第31節・名古屋グランパス戦:0-2)

 それにしても、うまくいかないゲームだった。
歯車が噛み合わないと、こうもなす術なく負けてしまうものかと。

 2点差になっても反発するパワーを見せてくれるのではないかと思っていたが、ACL帰りのチームは疲労の色を隠せていなかったように見えた。さらに噛み合わなさを象徴するかのように、ファンウェルメスケルケン際が珍しく冷静さを欠いたファウルによる退場。10人となっては、抵抗するにも限界がある。

 これだけうまくいかないゲームだと、試合後のミックスゾーンでも選手に何を聞けばよいのか。すぐには頭の中を整理できない部分もある。

 そんな風に悩んでいるうちに選手がミックスゾーンに現れるのだが、この日はなかなか出てこなかった。

 試合後のミックスゾーンというのは、アウェイチームが先に現れるのが相場で、特にホームチームが勝った場合、ちょっとしたセレモニー(「あんたが大賞」的なやつ)やスタジアムを周回しての挨拶などもあるので、だいたい遅くなる。

 だが、この日はアウェイ側の川崎の選手たちが一向に出てこない。
あまりに遅いので、先に名古屋の選手がポツポツと現れ始めたほどだった。

 そして川崎の場合、一番最初にミックスゾーンを通るのは決まって遠野大弥だ。ただこの日は2番目だった。

 意外なことに、一番最初に現れたのは脇坂泰斗である。
この日は途中交代でピッチに立ち、渡されたキャプテンマークを巻いて奮闘したが、報わることはなかった。それでも試合後の挨拶では、先頭に立ってゴール裏の多くを埋めたサポーターと向き合ってる。

※9月24日に退団が発表されたバフェティンビ・ゴミスに関するコラムを25日に追記しています。20日をもってチームから離脱。双方の合意の上、円満に契約解除に至ったもので、その経緯を竹内弘明強化本部長が語ってくれました。

その会見で触れられた言葉と同時に、フロンターレがアジアを制覇するために昨年夏にやってきたバフェとのプロジェクトは、ここで幕を閉じることに。

では「バフェティンビ・ゴミスとは何だったのか」。彼のターニングポイントになった試合、そしてACLでの舞台で印象的だったシーンも含めて総括をしています。全部で約5500文字の追記です。

→■(※追記:9月25日)バフェティンビ・ゴミスとは何だったのか。クラブがアジアを制覇するためにやってきた元フランス代表ストライカーが、このチームに注入しようとしていたもの。そして残してくれたもの。

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