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【45分でわかる】白潟総研流「採用力」大全 ~思考編「中小ベンチャー企業は、誰かにとっての楽園になれる」~

 いま、「採用力」はものすごく重要な経営テーマです。経営リソースの中でも、「ヒト」の確保が異常に難しい時代になったといえると思います。しかも、毎年毎年その難易度は上がり続けています。
 仮に採用ができたとしても、ミスマッチなどを原因に離職してしまう…人材の流動性が増していく環境下で、人材の定着も中小ベンチャー企業の大きな課題です。

 『本当に自社に入ってもらうべき人に入ってもらう』
そんな本物の「採用力」はいま、中小ベンチャー企業にもっとも大切な力
であると感じます。
 逆にいえば「採用力」さえあれば全て好転するという中小ベンチャー企業は、本当に多いと思うのです。

 そんな中で「中小ベンチャー企業を元気にする!」を存在意義に掲げる白潟総研が今できることは何か?を考えた結果、弊社の持つ採用ノウハウの全公開を決めました。

 本noteが1社でも多くの中小ベンチャー企業が「採用力」を自社の強みにかえ、その想いを実現する一助になれば幸甚です。
 価値観が多様化し様々な生き方を選択できるようになっていくこれからの日本では、中小ベンチャー企業こそが主役になると思っています。
 本当に「採用力」のある中小ベンチャー企業こそが「誰かにとっての楽園」になれると信じています。

 そんな願いをこめて、「中小ベンチャー企業の採用力を上げる方法」についてnoteを公開していきたいと思います。

 「思考編」「実践編」とある中で、今回は「思考編」に絞って、
採用上の小手先のテクニックや方法論を超えて、経営の中で採用が果たすべき役割を見直していく。そんな採用に対する考え方を、根っこから捉え直していけたらと思います。

3章構成で、
 1章では「採用力とは?」をともに考え、
 2章では「採用力」を上げる大前提と5つのポイントを解説し、
 3章では本noteのサマリーと「採用力」の先にあるものについて、私の想いを伝えていきます。

 今後、「実践編」を折りにふれて公開していきます。もしよかったら見逃さないよう本noteかTwitterをチェックしていただけますと嬉しいです!


1章「採用力」とは?~我々の会社は誰にとっての楽園なのか?を追求する~

■採用の成否を決める究極の本質とは?

 そもそも企業の採用の成否は、何が決めるのでしょうか?

それは、『魅力的な会社であること』です。

 魅力的で素晴らしい商品・サービスであれば、そのマーケティング・営業が簡単なように、魅力的で素晴らしい会社であれば、採用はものすごく簡単です。我々はこの真実から目を背けてはいけないのです。

本当に「採用力」のある会社は、採用と魅力的な会社づくりが分断されていないのです。「採用力」のある会社は経営者と採用チームは採用活動を行いながら、自社の魅力をつくり続けているのです。磨き続けているのです。

■では、魅力的な会社とは何なのか?

 魅力的な会社とは、どんな会社でしょうか?

・給料が高い会社でしょうか?
・労働環境が整った会社でしょうか?
・成長できる会社でしょうか?
・やりがいのある会社でしょうか?
・人間関係の良い会社でしょうか?

・・・数多くの企業を見てきた中で、
『万人にとって魅力的な会社などない』
と私は確信しています。
おそらく現実世界に全人類にとって最高の会社なんで、存在しないのです。

 あるのは、
『特定の誰かにとって魅力的な会社』だけです。

 この観点で自社を見れば、世の中に魅力のない会社は1社もないと思います。必ず誰かにとっての魅力があります。それを見つけて、磨いていくのです。

■中小ベンチャー企業は、クセやにおいをつくろう!

 万人にとって魅力的な会社をつくろうとすると上手くいきません。
特に中小ベンチャー企業は、絶対に上手くいかない。

「我々の会社は誰にとっての楽園なのだろうか?」
ますはこの問いからすべてをスタートするべきです。

この究極の問いに向き合うこと。
言語化を行い、採用も自社の魅力づくりもそこに向かって行うこと。

そうすれば、自社のクセやにおいが生まれます。
人はそれを「ブランド」と呼ぶ
のだと思います。

この観点で考えた時、一番のお手本はSONYの設立趣意書だと思います。

会社創立の目的
一、真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設
一、日本再建、文化向上に対する技術面、生産面よりの活発なる活動
一、戦時中、各方面に非常に進歩したる技術の国民生活内への即時応用
一、諸大学、研究所等の研究成果のうち、最も国民生活に応用価値を有する優秀なるものの迅速なる製品、商品化
一、無線通信機類の日常生活への浸透化、並びに家庭電化の促進
一、戦災通信網の復旧作業に対する積極的参加、並びに必要なる技術の提供
一、新時代にふさわしき優秀ラヂオセットの製作・普及、並びにラヂオサービスの徹底化
一、国民科学知識の実際的啓蒙活動

https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/History/prospectus.html

 1946年に創業者の井深大さんによって書かれた設立趣意書にある
"一、真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設"
この一文には「我々の会社は誰にとっての楽園なのだろうか?」の全てが込められていると思います。香り立つクセやにおいを強く感じます


 外部からの見え方を工夫して、お化粧をしても意味がないです。
採用ブランディングとは、外面を整えることでなく、香り立つ自社のクセをつくりこんでいくこと…つまり本当に魅力的な会社づくりをすることだと思います。

■自社の魅力を伸ばすために、採用はどうあるべきか?本当の「採用力」とは?

 では、自社の魅力を伸ばすために採用はどうあるべきでしょうか?
「採用力」がある、とはどういう状態なのでしょうか?

⑴「我々の会社は誰にとっての楽園なのか?」を言語化すること
 自社のクセとにおいを言語化していくのに、採用活動ほど効果的な場はないと思います。自社を思いっきり外部にさらす場だからです。自分たちの会社は誰にとっての楽園なのか?の言語化を重ねていく力は、採用力の根幹になります。
 本当に採用力のある会社さんには、聴けば必ず出てきます。言語化されていなかったとしても、質問を重ねていけば間違いなく出てきます。

⑵徹底的に採用にかかるムダな費用と時間を削減すること
「採用力」のない会社は、採用にかかるお金と時間を無駄に垂れ流しています。そのお金と時間は、本来魅力的な会社づくりに使えたリソースであったはずです。
無駄の多い採用は、組織をゆっくりとすり減らします。しかも、誰にも気づかれずに、自分でさえも気づかずに。
採用チームが楽をするための採用を、選択していないでしょうか?
常に我々採用チームが自問自答すべき問いです。

⑶自社の魅力を引き上げるような人材の採用を行うこと
 「どんな人と働けるか?」は、自社の魅力をダイレクトに引き上げます。
自社が誰にとっての楽園なのか?を意識したうえで、その楽園をより素晴らしいものにしてくれる人材の採用を行うことができれば、採用を起点により魅力的な会社づくりを実現できます。

"半径5メートルの法則"と呼ばれる
「人はその半径5メートルにいる人から大きな影響を受ける」
という人材・組織業界で経験則的に見い出された法則があります。

 この半径5メートルの魅力を引き上げてくれる人材(= 今までの自社の採用力では採れなかった人材)の採用にはお金と時間を集中投下すべきです。

~~~~~

以上、3点が本当に「採用力」のある会社の採用です。
ちょっとまとめてみると、
まずは自社が誰にとっての楽園なのか?を言語化すること。
 ⇓
そのうえで、徹底的に時間とお金の無駄を省いた採用を行うこと。
 ⇓
そこで浮いた時間とお金を、自社の魅力づくりに投下すること。
自社の魅力を引き上げてくれる素晴らしい人材の採用に投下すること。

これこそが本当の「採用力」の正体であると考えます。

この力を伸ばすことで
「採用力」こそ自社の最大の強みだ!
と誇れる未来がくると思います!

2章「採用力」を上げる大前提と5つのポイント

ここまで「採用力」とは何か?についてお話してきました。
ここからはいかに「採用力」を上げるか?について、大前提と5つのポイントでまとめていきたいと思います。

■「採用力」上げるための大前提

 まず大前提として、会社として採用に本気になること。
元も子もないことをいうようですが、採用が上手くいっていない企業はそもそも採用に本気じゃないです。

※ちょっとここで補足です。
採用も、企業目的を達成するための手段の1つです。もし採用に本気にならないなら、「ヒト」に関わらず上手くいく戦略を選択を明確にとるべきです。正社員に頼らず、仕組みで自社のミッション・ビジョンに向かっている中小ベンチャー企業もたくさんあります。

では、会社として採用に本気になる、とは何をすることなのか?
下記の項目をチェックしてみてください。

 採用に本気なら、5つ全部とは言わずとも、3つくらいはチェックがついたのではないかと思います。

※またまた補足です。補足が続いてすみません。
採用担当者の方は、上記5つこそ経営陣と議論・ディスカッションしてみてください。ひどい真実ですが、採用が経営の重要テーマになるか…会社として本気になるかは、採用担当者さんの影響範囲の外になります。経営全体の中で採用をどの優先度におくかは、経営者マターなのです。採用担当者さんができるのは、経営者さんと議論を尽くすことだけだと思います。

■「採用力」をあげる5つのポイント

 大前提をクリアしたうえで採用力をあげるためのポイントを5つにまとめました。

⑴「戦略」を間違えない力
 そもそも採用戦略を持っていない会社さんも多いかと思いますが、この戦略を間違えないことがとっても重要です。戦略を間違えると、採用にムダな時間をお金が発生するうえに、自社に合わない人材を採用してしまいます。

⑵「集める」力
 集める力は、採用力の中核です。どれだけ魅力的な会社でも、知ってもらい応募してもらわないと採用できないからです。

⑶「選考プロセス」の力
 選考プロセスが強いと、採用が劇的に変わります。
100人集めて1名しか採用できない会社でなく、10人集めて1名採用できる会社を目指しましょう。

⑷「ミスマッチ」を減らす力
 採用の最大のムダがミスマッチによる離職です。かなりの部分を技術的に回避することができるので、ミスマッチによるムダを極力減らしましょう。

⑸「採用資産」を貯める力
 媒体出稿などは、一度出したらそれっきりの「掛け捨て型」と呼ばれる採用手法ですが、やったことがそのまま来年の採用力につながるような「積み立て型」の採用手法が存在します。やればやるだけ「採用力」が上がるので、できる限り採用資産を貯めるようにしましょう。

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では、5つのポイントについて次で説明していきます。

2章‐⑴「戦略」を間違えない~戦略とは、捨てること~

 大前提として、我々中小ベンチャー企業にはリソースがない。なので、
「もっとお金があれば・・・」
「もっと時間があれば・・・」
「もっと自社の給料が高ければ・・・」
「もっと自社に知名度があれば・・・」
というのは、一切言い訳にしてはいけないと思います。
リソースがないのは「課題」ではなく「与件」なのです。

だからこそ、我々には「戦略」が必要になります。

■「戦略」とは

 白潟総研では、戦略を「戦を略すと書いて戦略である」と教わります。

つまり、戦う場所を捨てる/ズラすことによって、戦わなくてもよい場所をつくり(=戦を略し)、戦うべき場所にリソースを集中させるという思考・行動が「戦略」だというわけです。

そもそも真正面からぶつかって勝てるくらいリソースが潤沢にあるのであれば、戦略的思考なんて必要ないのです。逆に、リソースが限られている我々中小ベンチャー企業は「戦略」がないと100%負けます

■5つの捨てるもの/ズラすもの

 では、「採用」戦略では何を捨てればよいのか?
代表的な捨てるもの/ズラすもの切り口を5つにまとめました。

 誰もが欲しがるような人を、たくさんの企業が集まる場所で、たくさんの企業が採用を頑張る時期に、他者と同じような魅力と選考方法で打ちだしたら、当然中小ベンチャー企業は負けます。
 これまでの自社の採用で上手くいっていた期間では、この5つのどれかしらが他社とズレていたはずです。

「従業員20名くらいまでは採用がとても上手くいってたのに、あるタイミングから全然採用できなくなった。」

 上記のようなケース、中小ベンチャー企業で散見されます。
20名までは採用ターゲットや打ち出す魅力がズレていたのが、企業の成長とともに気づかぬうちに大企業と競るような採用になっちゃっているのです。企業は変わり続けるので、毎年毎年見直し続けないといけません。

 ぜひこの5つの切り口で「捨てたりズラしたりできるものはないだろうか?」と経営者さんと採用チームで議論を重ねてみてください!

そしてその際、「自社は誰にとっての楽園なのだろうか?」という議論も必ずセットで行ってください!それが定義できれば、自ずから5つの切り口で捨てるべきものズラすべきものも見つかります!

2章‐⑵「集める」力~採用ターゲットが全てを決める~

 いかに求職者を集めるか?母集団形成は多くの中小ベンチャー企業が課題とするところです。前述した戦略の5つの切り口の「募集をかける人」「募集をかける場所」とからめながら「集める」力について解説していきます。

■募集をかける人=採用ターゲットの設定

 「御社の採用ターゲットはどんな人ですか?」ときくと、

「素直で、地頭が良くて、コミュニケーション力がある人です」

という回答をいただくことがよくあります。

これ、採用ターゲットを設定するときによくある間違いなんです。
人材が潤沢にいてある程度選び放題だった採用市場であれば、この考え方でもワークします。
しかし、採用難易度が極めて高い現在では通用しません。

採用ターゲットをつくるときには、
『どんな人が欲しいか?』
つまり、自社起点の"採用要件"から考えてはいけない
んです。

まず考えるべきは、
「自社は誰にとっての楽園なのか?」
そして、
「どんな人なら、そんな自社に入りたいと思ってくれるだろうか?」
です。

そして、入りたいと思ってくれる人の中から、
「どんな人が欲しいか?」
を考え、選び取る。この順番なんです。

そうして設定した採用ターゲットは"素直"とか"地頭がいい"とかの要件ではなく、
どこの会社で働いていて、
どんな夢をもっていて、
どんな仕事に対する価値観をもっていて、
どんなことに悩んでいて・・・
といった、具体的な人物像になるはずです。
「採用力」のある会社は、この解像度が異常に高く、ユニークなのです。

そして、「どんな人なら、自社に入りたいと思ってくれるだろうか?」
から考え出来上がった採用ターゲットは、自然と他社とズレるはずです。

その代表例が、リクルートの伝説的なターゲティング「3ホウ」です。

弊社、リンクアンドモチベーション創業者の小笹芳央がかつてリクルート社で人事・採用を担当していたので、当時求めていた人材像について聞きました。
「3ホウ」というのを、新卒採用では求める人材要件として定めていたということで、1つ目のホウはアホウ、これは地頭が悪いというわけではなく、大学の成績が悪い人の話です。
大学の成績が良い人は銀行や商社にいくので、とにかくサークルやバイトに精を出していて、学校の成績が悪い人の方がリクルート社には合うということでした。
あとの2つは地方、貧乏で、このような人を採用していたそうです。

https://industry-co-creation.com/management/31313?fbclid=IwAR0akDUqhc4PDKcoqw6TEncdBt3F7ljGBD3ZiHQtufn_zh_T6FFbgxRP1gA

まさに、自社にとってはピッタリなのに競合は狙ってこない、採用戦略のお手本と言える事例かと思います。

■募集をかける場所

 ターゲットが設定できたら、次は募集をかける場所について考えていきます。

まず何よりも大事なのは、
「設定した採用ターゲットが就職しよう!転職しよう!と思ったときに登録する場所はどこか?」です。

採用ターゲットが決まれば、募集をかけるべき場所は自然と見つかります。

そのうえで、中小ベンチャー企業が明らかに勝ちやすい場所というのが存在します。
それは、
1.大手企業が入ってこない/入りずらい場所
2.お金でなく、汗をかかないと勝てない場所
3.直接接触できる場所

です。
Wantedly、CheerCareerなどが代表格になるかと思います。

この募集をかける場所を探すときに
一番ダメなのは、薄く広く網を張った結果リソースが分散してしまうことだと思います。
この場所なら採用ターゲットがいる!この場所なら勝てる!と思ったら、そこに時間的リソースをぶっこめるだけぶっこむことです
もし採用担当さんが1人なら、3つ~5つくらいに絞って戦わないと勝つことは難しいかと思います。

まさに、「戦略とは戦を略し、戦うべき場所にリソースを集中投下すること」なのです。

※採用ターゲットは設定できたけど、その人がいる場所がわからないという場合は、様々な媒体や手法を紹介できる採用コンサルタントに相談するとよいと思います。彼らは、自社に媒体や手法を持たない分、比較的オープンにおススメの場所を教えてくれます

2章‐⑶「選考プロセス」の力~歩留まりの高さは全てを救う~

 採用力を上げる5つのポイントの中で、最もレバレッジが効くのが選考プロセスです。最強の選考プロセスができあがれば、採用の歩留まりが劇的に変化します。

100人集めて1人採用という歩留まり1%の会社
10人集めて1人採用という歩留まり10%の会社

上記2社では、見える世界が全く違うのです。選考プロセスが強力なものになれば、母集団形成で悩む必要がなくなります。より素晴らしい人材を採用できるようになります。

 経営者さんも採用チームも、この選考プロセスにこそ時間とエネルギーを費やすべきなのです。選考プロセスに時間とエネルギーを割かずに、母集団形成のために複数の媒体やエージェントさんに時間とエネルギーを割くのは本末転倒です。大きな穴が開いたバケツに一生懸命水を入れ続けるようなものです。まず何より先に見直すべきは、選考プロセスなのです。

 では、自社の選考プロセスをどのように組み直していけばよいのでしょうか?
中小ベンチャー企業に特化した最強の選考プロセスのつくり方を、
「選ばれてから選ぶ」、「初期接触」、「3倍接触」という3つの視点で解説していきます。

■初期接触は採用の命

 初期接触で採用の全ては決まります。特に知名度・ブランドのない中小ベンチャー企業に対して求職者は基本的にマイナスからスタートします。
 マッキン〇ーにエントリーする求職者は「入りたくて入りたくてしょうがない」という温度感でエントリーすると思います。
白潟総研にエントリーする求職者は「まあ、いっちょ様子見ときますか。ヒマだし。」くらいの温度感です。

 マイナスからスタートする中小ベンチャー企業だからこそ、初期接触で自社の魅力を伝え切り、絶対に第一志望群に入らなくてはいけないのです。
新卒でも中途でも、初期接触で求職者の第一志望群に入らないと途中離脱/内定辞退が発生してしまうのです。

まずは、初期接触はどのような形式でやればいいのか?です。

 母集団が少ない会社さんであればやはり「カジュアル面談」に勝る初期接触はないと思います。エントリーする側の求職者から見てもハードルが低いので、より広くエントリーを集めることができます。
 母集団が豊富な会社さんであれば「会社説明会」か「ミートアップ」が主流になると思います。

つぎに、初期接触は誰がやるべきか?です。

 中小ベンチャー企業であれば、間違いなく「社長」です。社長でなければ、経営幹部か現場エースがやるべきです。初期接触では、一撃で求職者をファンにしなければいけないからです。

 白潟総研では人・組織コンサルティング部門へのエントリーであれば私が、M&Aコンサルティング部門へのエントリーであれば部門長の畦田がやっています。初期接触はその業務の魅力から自社のミッション、ビジョンまで実体験をもって深く語る力が必要になります。

もし任せられる初期接触を任せられる人材が社内にいないのであれば、やはり中小ベンチャー企業は経営者が行うべきだと思います。

 中小企業は大企業のように待遇は良くないし、福利厚生も十分ではない。ないない尽くしなんです。もしうちの会社が大企業であれば、優秀な社員を採用できるだろうという悩みはみんな感じていらっしゃる。

 会社に魅力がないとすれば、社長であるあなたにしか魅力は出せないのです。あなたが魅力的であれば「この社長は私に夢を与えてくれる。この社長と一緒なら、もっともっとこの会社は大きくなる」と思ってもらえる。だから、あなたがほれさせないといかん。ほれさせるだけの魅力がなければ誰も入社してこない

【経営者とは/稲盛和夫(日経トップリーダー)】

■選ばれてから選ぶ

「選ばれて」から「選ぶ」。これは現在の採用では絶対に外すことのできない順番です。特に中小ベンチャー企業は。

 本当に人材が市場にあふれていた時期ならいざしらず、今の市場感でエントリー直後から「見定める」ような選考プロセスをとってはいけません。いまの採用市場では、求職者からすれば数ある企業から選び放題なわけです。そんな中、ちょっと様子を見にいった企業に「志望動機は?」「強みは?」と質問攻めにされたらたまったもんじゃありません。過去のnoteでも書きましたが、これほどの悪手はないのです。

最初から見定めるような選考プロセスは、極端に例えるなら、超モテモテの人とお見合いした際に「私のどこが好きですか?」「年収どれくらいですか?」「どこがあなたのアピールポイントですか?」って質問攻めするようなものだと思うのです。
こんなことしたら、相手は引く手あまたなわけですから、当然他の人のところに行ってしまう

https://note.com/ishikawa_ssoken/n/n4908e7918980

 未だに最初から求職者を見定めるような"殿さま採用"をしている会社をたまに見ますが、その時点で自社をより魅力的にしてくれるような本当に良い人材は全員逃げ出していると思います。そういう人材こそ、引く手あまたなので。

 まずは、自社のことを知ってもらうこと。相手から「ちょっといいかも!」と思ってもらうこと。その後に初めて見定めるようにすべきです。

■3倍接触で、圧勝する

 ランチェスター戦略という、戦争から生まれた弱者が強者に勝つための戦略があります。営業戦略でも古くから使われており、いまだに中小ベンチャー企業の売上アップを考える際の王道になっています。
 ちゃんと勉強すると色々あるのですが、弱者の戦略を活用しやすいように超シンプルにまとめると、

①接近戦(直接接触できる戦い方)で戦う
②接近戦では相手の3倍の戦力差を維持する

となります。これをそのまま採用に転用すると、

1.接近戦で戦う
→採用広報や媒体などの求職者と距離の離れたところで戦うのでなく、直接接触できる選考プロセスで勝負しましょう

2.接近戦では相手の3倍の戦力差を維持する
→採用競合の3倍接触できる選考プロセスにしましょう

という話になります。
実際、白潟総研では採用競合3倍接触するような選考プロセスに変えたことで、オファー後の承諾率が75%まで上がりました。並みいる有名企業をおさえて、白潟総研を選んでもらえるようになったんです。

この戦い方はとにかく汗をかく方法なので、大企業はなかなかとることができません。まさに中小ベンチャー企業の弱者の戦略の大王道といえそうです。

2章‐⑷「ミスマッチ」を減らす力~採用の最大のムダを防ぐ~

 採用の最大のムダがミスマッチによる離職です。採用コストもすべてムダになるどころか、場合によっては自社のミッション・ビジョンのために一生懸命仕事に向き合っている他の社員にもマイナスを及ぼします。

 どうしても見定めきれない部分もありますし、求職者の自己理解が進んでいない場合「入社してから違うと気づいた」というしょうがない離職もあったりします。ですが、採用力の強い会社は技術的に予防できるところは最大限予防しています。ここではその予防策について解説していきます。

■最大の予防策はRJP(Realistic Job Preview)

RJP(Realistic Job Preview)とは、自社の良い情報も悪し情報も、ありのままにすべてを求職者に開示し、納得して応募した人を選考する手法です。選考プロセスのなかで、会社側から求職者を見定めることには限界があります。自分のことを一番わかっているのは求職者自身なので、でき得る限りの情報を求職者に渡し、自分で判断してもらうのが一番精度が高いのです。白潟総研では、この選考方法を「自分で見定めてください面接」と題して取り入れています。

 RJPを取り入れるコツを2つご紹介します。

1.「自社の課題」を見える化する
 自社の課題を洗い出せるだけ洗い出し、それをまとめて採用資料に組み込みます。これを見せて、じっくり説明することで自社の課題を洗いざらい漏れなく伝えることができます。

 入社直後の突然離職のほとんどが、『入社前の期待値>入社後の現実』という期待-現実のギャップで引き起こされます。
「そんな話聴いてなかった!」「こんなはずじゃなかった!」というギャップを解消するためにも、そこまで書くか?!というくらい包み隠さず思いっきりぶちまけちゃいましょう。

 例えば、白潟総研の「自社の課題」の資料では、

・クライアントワークなので「休めないプレッシャー」と「休んだときの罪悪感」がえぐいです
・クライアントワークなので土日祝日、朝昼夜に関係なく連絡がきて、対応しなくてはいけないことがあります
・ハードワークです(売れっ子になると週××時間、土日出勤も月に×回くらい)
・お客様の社長の話がすべて理解できるまで継続的に経営の猛勉強が必要です(本を月10冊以上)
・SNSの発信協力をお願いしています(Fb,Tw)実名、顔写真付きでの登録、社名の公表が必要です
・・・などなど、100個くらい書き出してあります

白潟総研 採用ピッチ資料より

ここまで書かれています。

ちなみに自社の課題は、口頭で伝えるんではダメなんです。求職者もその会社に入りたくなってくると、ついつい悪い情報は軽く受け止め自分にとって良い情報だけを受けとめがちになります。
 きちんと言語化して資料に落とし、一つ一つゆっくりしっかり伝えるように選考プロセスに組み込みましょう!そうすれば確実に伝わります!

2.でき得る限り多くの社員に接する機会をつくる

 でき得る限り多くの社員に接する機会を選考プロセスに組み込みましょう!やはり社員とは実際に接してみて感覚的に伝わる社風・文化というものがあると思います。多くの社員に会ってもらうのは、接近戦での3倍接触の観点からも効果的です。
 できれば日常の雰囲気を味わってもらえると良い効果的なので、ランチ座談会とか飲み会参加といった機会を組み込めると良いです。

2章‐⑸「採用資産」を貯める力~年々採用力を上げる思考法~

 最後は「採用資産」を貯める力です。
 実は、採用施策は大きく2つに分けることができます。

1.その施策は単年で効果をなくす、翌年の結果に全く影響を与えない『掛け捨て型』的な施策

2.その施策が翌年の結果にも影響を与えていく、頑張った結果が蓄積されていく『積み立て型』的な施策

 「採用力」のある会社は意図的に積み立て型の施策を行い、「採用資産」を蓄積しているのです。

 では、具体的にどのような施策が「採用資産」を貯める積み立て型の施策なのか、みていきたいと思います。

■集客力の採用資産を積み立てる施策

集客力を積み立てる採用資産を積み立てる施策の代表格はSNSです。ほぼすべてのSNSには”フォロワー”という拡散力を採用資産として積み立てることができます。
 SNSも様々な種類がありますが、拡散力と運用しやすさから考えるとやはり代表格はTwitterだと思います。中小ベンチャー企業であれば経営陣・採用チーム・広報チームはTwitterのアカウントをつくり、地道にフォロワーを貯めていくべきです。採用面だけでなく、営業面でもTwitterによる拡散力は大きな力になります。
 これからTwitterをはじめよう!と考える経営者さん・採用担当者さんは、Twitterを教えてくれるオンラインサロンに入るか、既にTwitterの運用に上手くいっている会社さんに声をかけて相談してみるとよいです。独力ではじめると100フォロワー超えるのも大変ですが、フォロワーを多く持つ人たちに力を借りながらTwitterをはじめれば1,000人くらいはすぐにいきます。

 このフォロワーが貯まるという採用資産の積み立てで、実はめちゃくちゃ優れているのがWantedlyです。
採用媒体の1つとして見られがちですが実は、

Wantedlyは、300万人のプロフィール・37,000社の募集と
出会い、つながり、つながりを深めるシゴトのSNS

https://www.wantedly.com/

とWantedly社自身も定義しているように"SNS"としての機能を持っています。
 そのWantedlyの機能が『積み立て型』としてめちゃくちゃ優れているなと思ってまして、これは大きく2つのWantedlyの機能がかけ合わさって発揮されます。

1.自社のWantedlyページにフォロワーがついていく
Wantedlyにも"フォロワー"を貯める機能があります。

自社の募集記事に応募してくれたり、ブックマークしてくれたり、会社ページをフォローしてくれたりするとその会社のフォロワーになるのですが、
フォロワーに対してはその会社の募集記事が上位表示されたりプッシュ通知されたりします。

2.Wantedly独自の上位表示アルゴリズムで、募集記事のパフォーマンスが上がる
Wantedlyは、Wantedly独自のアルゴリズムにのってその募集記事が上位表示される採用ツールです。
このアルゴリズム、完全公開はされていないのですが、間違いなく
・PV数
・応募数
・応募率
は強烈に影響しています。

・・・お気づきでしょうか。

Wantedlyでは、
「フォロワーが増えれば増えるだけ、そのフォロワーに上位表示される」

「出した募集記事がフォロワーに届きやすくなるので、PV・応募数が増える」

「アルゴリズムにのってすべての募集記事のパフォーマンスが上がる!」
という凄まじいロジックが成立しているのです。

採用資産を積み立てる施策としてはめちゃくちゃ有能だと思います。

■自社の魅力の採用資産を積み立てる施策

 自社の魅力の採用資産を積み立てる施策とは、ずばり採用に使えるコンテンツです。特に選考プロセスの中で伝えていく自社の魅力の"証拠"となるようなコンテンツは貯めれば貯めるだけ自社の採用力を上げてくれます。

まずは魅力の素材として「写真」「動画」をとにかく貯めるようにしましょう。文章や言葉で伝える魅力に対する一番の証拠になります。
 ことあるごとに写真・動画を撮る文化を自社につくりましょう。そしてそれを共有の保管場所に格納するようにします。
 白潟総研にもGoogleフォトをつかった"白潟総研写真館"という保管場所があるのですが、とにかく便利です。募集記事を書くとき、採用ページをつくるとき、採用ブログをつくるとき、写真に困ることがまずありません。さらには選考プロセスの中で"白潟総研写真館"にある写真をそのまま求職者に見せたりもしています。
 社内を見渡せば、写真が好きだ!という方が1人はいると思います。その方を社内カメラマンとして育成していくのも一つの手だと思います。

 素材の次は、採用コンテンツです。代表的なものは採用ブログだと思いますが、より広い視野で採用コンテンツを見ることができるように
・何をいうか?
・誰が言うか?
の2軸で整理してみると、

 横軸の誰が?を「採用者」と「採用者外」に分けるというのは、コンサルらしからぬかなり恣意的な分け方をしています。でも実はここにこそ、採用コンテンツの真実が隠れています。それは、

『求職者が、「採用する側」が自分で言っていることをもはや信じない』

という事実です。それくらい求職者側のリテラシーは上がっています。

 求職者が自社のファンになった後なら採用する側がつくった採用ブログも読まれるのですが、求職者をファンにしていくためには、自社の魅力の確たる証拠となる「採用者外」の人が言っているコンテンツをつくっていく必要があるのです。

 ぜひ一度立ち止まって採用チームで上のマトリックスに自社の採用コンテンツを並べてみてください。採用者外のコンテンツがどれくらいあるでしょうか?ここを増やしていくことこそが、最高の採用資産づくりになります。

 では「採用社外」のコンテンツとはどのようなものがあるのか?代表的なコンテンツはやはり口コミです。口コミサイトはもちろんですが、SNS上にあがる生の声も重要なコンテンツです。
 SNSの世界では、ユーザーがつくってくれた口コミをUGC(User Generated Content)と呼びますが、

UGCとは、「一般ユーザーによって作られたコンテンツ」のことです。
「User Generated Content」の略で、ユーザー生成コンテンツと呼ばれています。企業によって作られたコンテンツではなく、ユーザーによって作られたコンテンツを指します。
具体的には、個人のSNSの投稿、写真、ブログなど、消費者発信のコンテンツのことです。

https://www.hottolink.co.jp/column/20190326_101527/

このUGCをしっかり集めてまとめておくことで、自社サービスの魅力を伝える確たる証拠になります。

 一報で、SNS上であがる従業員の生の声をEGC(Employee Generated Content)と呼びます。

However, “users” aren’t the only group of influential content creators. Employees also have the potential to be a brand’s best advocates. A spin-off of this is employee-generated content (EGC), which is content that has been created by employees.

https://www.postbeyond.com/employee-generated-content/#what

 このEGCも非常に重要な自社の魅力の証拠になります。UGCとEGCを先ほどのマトリックスに位置付けると、下記のようになります。

 UGCとEGCほど強力な採用資産はありません。どちらもSNSで発生するものであることを考えると、現代の中小ベンチャー企業でSNSを運用していないというのは大きなハンデになりそうです。

 では、どのようにしてUGC・EGUを増やせばよいのか?

 結論は、「魅力的な会社をつくるしかない」です。ここでも結局は採用力の本質に戻ってくるのです。
 口コミは採用側からコントロールできるものではないですし、コントロールすべきものでもない
です。自社の採用力をあげ、採用力を起点に自社の魅力を愚直に磨き続けましょう。

3章 さいごに~サマリーと、その先にあるモノ~

 以上、かなり長めのnoteになってしまいましたが、中小ベンチャー企業の「採用力」についてまとめてみました。「採用力」に対する捉え方を根っこ見直していけるような機会になったならば幸甚です。

 あらためて「採用力」をまとめてみると…

■サマリー

採用力とは、

「我々の会社は、誰にとっての楽園か?」を定義すること
その人にとって魅力的な会社づくりを促進する採用を行う力。

具体的にいうと

「我々の会社は誰にとっての楽園なのか?」を言語化すること
徹底的に採用にかかるムダな費用と時間を削減すること
・ 自社の魅力を引き上げるような人材の採用を行うこと

そのために

▶戦略をちゃんと立てること
何を捨てるかを明確にし、集中すべきところにリソースを投入すること
集める力
・採用ターゲットは、
まずは「我々の会社は誰にとっての楽園か?」
つぎに「どんな人だったら入りたいと思ってくれるか?」
そして「その中で欲しい人はどんな人か?」
の順番で考えること
・募集を掛ける場所は、
上記で設定した採用ターゲットがいる場所にすること
▶選考プロセスにこそ力を入れるべき
選考プロセスで歩留まりがよくなれば、母集団形成は課題じゃなくなる。
歩留まりが低い選考プロセスは、大きな穴の空いた化けるに水をいれるようなもの
・初期接触で口説き切ること。口説き切れる人材を配置すること
・「選ばれて」から「選ぶ」の順番を間違えないこと
・3倍接触で圧勝すること
▶ミスマッチは技術的に減らせる
RJP(Realistic Job Preview)を取り入れること
・課題の見える化を行うこと
・できる限り多くの社員に会わせること
▶採用資産を貯めること
集客力を貯める採用施策の代表格はSNS
採用者側から発信するコンテンツの信憑性は低い。
・UGCとEGCは最強の採用コンテンツ
・UGCとEGCをつくるためには、結局魅力的な会社をつくること

以上です。

■「採用力」の先にあるもの

 我々中小ベンチャー企業にとって…中でも「ヒト」を軸に経営を考える中小ベンチャー企業にとって、「採用力」は経営のすべてを好転させる究極の力だと思います。

 本物の「採用力」を手に入れるために、採用を

"人を採るだけの活動"

という狭苦しい領域で捉えず、

"「誰かにとっての楽園」
…つまり、本当に魅力的な会社をつくるための活動"

であると捉えていただきたい。

 それが本noteで一番伝えたかったことです。
「誰かにとっての楽園」にこの世の中で一番なれる可能性が高いのは、中小ベンチャー企業だと私は思っています。小さいからこそ、クセやにおいをつくりやすいと思うんです。

1社でも多くの中小ベンチャー企業が本物の「採用力」を手にし、
 1社でも多くの「誰かにとっての楽園」が日本に生まれることを願って。

■続編

■おまけ(宣伝)

おまけ①:『日刊7秒しかけ』
たった7秒で、デキるビジネスパーソンに一歩近づける!誰でも簡単に始められて、仕事ができるようになる "しかけ" を(月)〜(金)まで毎日お届けします!採用・組織の勝ち筋について毎月2~4回やってますセミナーやってます

おまけ②:石川の採用・組織のセミナーはこちらより


中小ベンチャー企業のための採用・人材開発・組織開発についてnoteを書いていきます。 採用ー人材開発-組織開発 を切り離して考えるのではなく、1つの大きなシステムとしてみていくようなスタンスであります。