見出し画像

「家族法制の見直しに関する中間試案」に関するパブリックコメント


「家族法制の見直しに関する中間試案」に関する意見

【意見提案者】
氏名 石井 敏宏(個人)
住所:千葉県館山市 
年齢:50歳 
性別:男性 
職業:館山市議会議員

 
【1】私の意見の基本原則
 私の意見は以下の7つの原則に基づく。とりわけ1番目の原則である「親」の定義は重要であり、これが実父母と定まれば、他の6つの原則は自明の理である。
 
1 親は「実父母」と定義する。(単独親権者の再婚相手という理由では親にはならない。特別養子縁組で親の代わりを務める者は、後見人や保護者などと呼び、混同をさけるために「親」とは呼ばない。)

2 よって、婚姻の有無は親権の有無とは関係しない。(法律婚を優遇しない。)

3 よって、婚姻の有無は問わず、共同親権・共同監護を原則とする。(監護者の指定という法制度は設けない。父母の親権と監護権の具体的内容については、父母と子どもの実情に合わせて「共同養育計画」で定める。)

4 当然ながら、父・母・子どもは全て対等である。(憲法が定める通り、それぞれが個人として尊重され、それぞれが平等である)

5 婚姻の有無を問わず、父母の意見対立があれば、裁判所が仲裁する。(現状の婚姻中共同親権でも仲裁規定を欠いており、令和5年1月25日の東京地裁判決でも立法不作為が指摘されている。)

6 子どものためには「特別養子縁組」があれば良く、「普通養子縁組」は不要なので廃止とする。(連れ子の代諾養子縁組は、実父母の同意もなければ、裁判所の許可もなく、子どもの権利条約21条に違反する)

7 「子どもの権利条約」と「女子差別撤廃条約」という国際条約は憲法98条の規定に従い遵守する。

(重視すべき条文は以下の通りである。
〇子どもの権利条約
9条 親子断絶の禁止
18条 共同養育
21条 裁判所の許可なき養子縁組の禁止
 
〇女子差別撤廃条約
16条1項d 婚姻の有無を問わない共同親権)
 
 なお、法制審議会家族法制部会についてであるが、議事録を見ると、DV・養育費・面会交流などの「各論」の話ばかりしていて、「総論(原則・定義)」がないので、全く議論の方向性が見えないことを指摘しておく。 
 また、議事録を見る限り、「子どもの権利条約」と「女子差別撤廃条約」を家族法制部会の委員も事務局も軽視している。法改正の議論において、憲法98条の条約遵守義務を軽視するのは公務員としてふさわしくなく、条約に沿った改正の検討ができないのであれば、その職を辞するべきであるし、法務大臣は解任すべきであることも付言する。
 そして、条約に基づいた改正の検討をしていれば、この中間試案のように条約違反の選択肢が多数示されることもなく、議論が迷走することもなかった。委員と事務局には猛省を促したい。  
 
 
【2】中間試案の内容に関する意見
 
P1 前注1であるが、「親権」という呼称を変えるならば、「親責任」が良いと思う。ただし、親権(=親責任)の内容であるが、民法820条「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」など、現行の親権規定は概ね問題がないので、内容はそのままで良い。

P1 第1 2 ⑴の「生活保持義務」であるが、その規律が共同親権であるべきだ。(民法877条の規律ではない。)

P1~P2 第1 2⑵は【乙案】とする。成年に達した子どもには、親は親権に基づく責任を負わない。任意に話し合う場合でも、成人なので子ども本人が親と直接やり取りをするものであり、父母間の交渉は基本的にない。なお、成人への支援が必要であるならば、それは父母ではなく行政の責任において行うべきことである。

P2 第2 1は【甲案】に賛成である。共同親権は婚姻の有無とは関係ないからである。
 【乙案】に強く反対する。現行の婚姻外単独親権は、子どもの権利条約9条・18条・21条および女子差別撤廃条約16条1項dに違反するので論外である。
 また、現行の単独親権において、データを見れば、ひとり親家庭と再婚家庭における児童虐待は、実父母の家庭よりも遙かに多く、容認できるものではない。ひとり親家庭の子どもは非行の割合も高く、不登校も多い。大学への進学率も低迷している。再婚家庭の「非行」「不登校」「進学率」はデータで確認ができていないが、児童虐待が異様に多いことから悪い結果が推測される。
 
●ひとり親家庭の児童虐待が多いことを示すデータとしては、法制審議会家族法制部会第21回会議における北村参考人提出資料1の2ページに「心中以外の児童虐待死事例が生じた世帯のうちひとり親世帯は27.3%であり、子がいる全世帯のうちひとり親世帯の割合が約7%であることを考えると明らかに高く、4倍近い数字である(注7)。」と記載されているがその通りである。
 なお、ひとり親世帯の割合は正しくは約14%である。全ての親のなかで、ひとり親は約7%という意味であろう。
●再婚家庭に児童虐待が多いことを示すデータは、令和4年版犯罪白書の198ページである。「養父・継父・内縁の夫」の人数は実父の5%くらいであろうが(正確な割合は不明だが、母子家庭などの数値から推測した)、異常に多い児童虐待件数である。再婚家庭の児童虐待リスクは10倍近いと予想できる。特に、女児は性的虐待のリスクが高い。
 
 ひとり親家庭と再婚家庭の状況の悪さを、家族法制部会では様々なデータを基に、しっかりと把握してもらいたい。
 
 ひとり親家庭で児童虐待が多い原因であるが、以下の2点が考えられる。
〇ふたり親だと相互チェックが効くが、ひとり親だと暴走に歯止めがかからない。別居の共同監護ならば、片方の親が児童虐待があったとしても、片方の親が気づいて対処することができる。
〇ひとり親だと、親権停止などの親権制限がかけづらい。なぜなら、ひとり親を親権停止にすると代わりがいないので、引き取ることになる児童相談所や児童養護施設がパンクする。一方、共同親権なら、片親が親権停止になっても、片親が子どもを保護できる。
 なお、ひとり親で親権停止のハードルが上がると、公平の観点から、ふたり親でも親権停止のハードルを上げざるを得ない。ふたり親だと一回の暴力で親権停止、ひとり親だと三回の暴力で親権停止とはできないので、ひとり親の基準がふたり親にも適用されるとならざるを得ない。このように、親権停止が難しいので、日本では「強すぎる親権」と言う者もいる。
 
 また、法制審議会家族法制部会第21回会議における北村参考人提出資料1の2ページに「離婚後、子と別居する実父母と子が月2回以上の頻度で会っている又は会ったことがある割合は、母子世帯で6.4%、父子世帯で13.0%しかない事実(注8)」とある通り、親子断絶の状況も酷いものがある。この傾向は『厚生労働省 令和3年全国ひとり親世帯等調査』でも確認されている。
 データの通りであり、「単独親権でも共同養育はできる」と言う委員が家族法制部会でも散見されるが、甚だ不正確な言い分である。これだけ親子断絶が起きている国は日本以外に存在しない。あると言うなら、他の国を明示して欲しい。
 
P2~3 第2 2は【甲①案】に賛成とする。児童虐待など不適格な親の場合は、親権制限制度(親権停止など)で対処すればいいからであり、原則として共同親権は当然である。婚姻の有無に絡めて、原則的に単独親権にする理由もない。
 なお、【甲③案】であるが、裁判所には個別具体的な判断を正確にし続ける能力もないので、社会常識を欠く判例が定着しかねない。これは判例よりも法令で、民主的に規定すべきことである。また、個別具体的に判断し続けることは、裁判所のキャパシティーからも無理であろう。

P3 第2 3⑴は、そもそも監護者の指定をする必要がない。共同養育計画でそれぞれの父母が監護について定めればいいからだ。
 なお、選択するなら【B案】がベターである。【A案】の単独監護は、現状の親子断絶がほぼ継続するので、強く反対する。
 そして、P5に「【B案】の考え方の中には、①一定の要件を満たさない限りは原則として監護者の定めをすべきではない」とあるが、概ね賛同する。ただし、一定の要件云々ではなく、監護者の定めという制度は全く不要である。
 また、P5には『監護者の定めをしないことを選択するに当たっては、「主たる監護者」を定めるものとすべきであるとの考え方がある』というが、主たる監護者の定めも不要である。いずれも、共同養育計画でそれぞれの父母が決めれば良いだけである。 

P3~4 第2 3⑵イは、そもそも監護者の指定は不要であるが、仮定として「監護者が指定されている場合の親権行使」について検討すると、【γ案】となる。親権は共同して行うべきであるし、父母は対等なので、意見対立があれば裁判所が決めるしかない。なお、「当該事項について親権を行う者を定める」こともありうるが、「当該事項の内容について判断する」ことが望ましい。 

P4 第2 3⑶イについて、「当該事項について親権を行う者を定める」こともありうるが、「当該事項の内容について判断する」ことが望ましい。
 引越しや進学などの重要事項決定権と日常監護権の区分けが必要である。日常の監護は、子どもといる監護親がそれぞれ決定すれば良い。
 重要事項の決定は父母双方の同意を原則とする。特に、引越し(居所)は父母の両方の同意が必要なものの筆頭になる。小中高の学校の入学と転校、幼稚園と保育園の入園と転園は、父母の意見対立が解決しないならば、監護日数が少なく養育費を負担する親の意見を優先するのが良いと思う。監護日数が多い親に権力が集中するのを防ぎ、パワーバランスを取るためである。また、進学には費用がかかることから、費用負担者の意向が大事だからだ。なお、入院に関しては、医師の判断も入り、緊急の場合もあるので、日常の監護権の範疇と捉えるか、片親による親権の単独行使でも良いと思う。
 ポイントは、居所と学校(幼稚園・保育園も含む)である。それ以外の重要事項決定権は大した問題ではない。

P4~5 第2 3⑷は、「父母の一方を監護者と定めた場合」ということであるが、そもそも監護者の定めは不要である。ただし、仮定とするなら、【Y案】であり、「上記⑵イの【α案】、【β案】又は【γ案】のいずれか」なら、【γ案】となる。
 子の居所指定又は変更は、親権の重要事項のなかでも最重要であり、原則として両者が合意しなければ変更はできないものとし、例外的に裁判所が内容を判断して居所を定めることはありうる。
 また、子の居所の変更について、第三者には父母双方の同意を確認する義務を課し、片親による親権の単独行使の余地をなくすべきである。子の居所の変更は、共同親権において最重要である。父母が遠隔地に住むようになれば、共同監護が困難になり、面会交流レベルの別居親との接触にも困難をきたす。

P6 第2 5は【甲案】とする。婚姻と親権は関係なく、原則として父母双方が親権を持つべきである。離婚後も未婚も原則は同じである。

P6 第3 1は【甲案】とする。原則受講を要件としないと、受講しない父母が多くなるだろう。また、裁判所のキャパシティーが足りなければ、都道府県など地方自治体が実施することも可能である。

P6 第3 2⑴は【甲②案】に基づくべきだが、弁護士等の確認よりも、裁判所の確認が望ましい。裁判所のキャパシティーが足りなければ、都道府県など地方自治体が実施することも可能であるし、厚生労働省などの国家機関が行なっても良い。

P7 第3 2⑵⑶の養育費であるが、共同親権・共同監護であれば、行政による自動強制徴収にすべきである。一方、単独親権・単独監護であれば、養育費の法定を廃止し、任意に委ねるのが当然である。単独監護ならば、単独費用負担は当たり前だからだ。逆に、共同監護なら、共同費用負担が当然だ。

P9 第3 3であるが、婚姻中の別居において、監護者の定めをしてはならない。両者が監護することを基本として、「共同養育計画」の策定を義務づけるべきである。

P9 第3 4⑴であるが、繰り返すとおり、監護者の定めは不要であり、必要なのは「共同養育計画」の策定と、不履行者には親権停止などの処分を課し、実効性を担保することである。
 なお、子どもの同意なき連れ去り(追い出しも)は、児童虐待等の正当理由がない限り、連れ去った親を親権停止にする。連れ去りが起きた場合には、速やかに児童相談所や警察などの行政機関が介入し、児童虐待等の事実認定を行い、加害者を処分する。

P9 第3 4⑵であるが、面会交流ではなく、大事なのは共同監護である。面会交流レベルは、児童虐待があった場合など限定的に用いられる「試行的面会交流」だけでよいはずである。そもそも「面会」とは他人が使う用語であり、親子関係には適さない。

P12 第5 2(注1)であるが、婚姻費用の分担(民法760条)は廃止すべきである。特に、同意なき別居の場合に、払う義務は全く感じられない。

P14 第6 1であるが、【甲案】③しかありえない。他は子どもの権利条約21条に違反する。なお、裁判所の許可は当然であるが、実父母の同意と、子どもの意見の尊重も規定するのが当然である。
 さらに言うなら、普通養子縁組は子どものためになっていないので廃止し、特別養子縁組だけで良い話である。

P14 第6 3、4であるが、普通養子縁組を廃止し、特別養子縁組だけにすれば、実父母と同じ扱いでよくなり、制度がシンプルになる。

P15 第7 1であるが、財産は、婚姻中から父母それぞれが、契約などで明確に区分しておくようにすべきである。なお、扶養義務を廃止して、扶養の努力義務に格下げして、財産の帰属が曖昧なものを減らすようにする。

P16 第7 2であるが、3年か5年であれば、「3年」がベターである。なお、父母の紛争は早期に終わらせるべきなので、現行の「2年」がベストである。

P16 第8 注1であるが、民法754条は削除すべきである。夫婦は、不倫の禁止及び扶養の努力義務がある「他人」と定義するのが良い。法定相続分の廃止も検討すべきだ。
 なお、夫婦の離婚理由に有責主義は不要であり、一定の別居期間があれば無理由で離婚できることを明確に規定し、別居もスムーズに行える制度にすべきである。現状は別居が難しいので、子ども連れ去り・配偶者追い出しが多発している。


【3】まとめ
 中間試案には骨格がなく、なぜこんなに支離滅裂なのか大変遺憾であるが、私の意見では、全体の制度設計は以下の通りシンプルである。
 
共同親権制度とは、「親は実父母。もちろん婚姻の有無は関係ない。児童虐待など親として不適格な場合は親権制限制度(親権停止など)で対応する。」という簡単なものである。
 
 法制審議会家族法制部会は、「基本原則」から話し合うべきで、DVなどの各論ばかり話していても意味がないことを指摘しておく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?