単独親権は国際条約違反。共同親権は当たり前
1970年以前は、ほとんどの国が『単独親権』でした。共同親権にして、子どもが「パパの家」と「ママの家」の両方に行くと言っても、車もなく公共交通も発達していなかった時代は物理的に難しかったのも事実です。また、離婚した父母で子どもの養育方針が違った場合も、携帯電話やメールで調整できる今とは全然違い、ハードルが高いものでした。理想と現実は違い、昔は単独親権はやむを得ないものでした。
しかし、経済と社会が発展するにつれ、先進国は共同親権への移行を始めました。1989年には「子どもの権利条約」が成立し、そこには共同親権も規定されています。諸外国は子どもの権利条約を守るべく、1990年代から共同親権への移行を進め、G7では日本以外の全ての国が共同親権になっています。日本も1994年に条約を批准しましたが、単独親権のままで条約違反の状態が続いています。
「子どもの権利条約」で、共同親権を規定している条文は少なくとも3つあります。
https://www.unicef.or.jp/kodomo/nani/siryo/pdf/cardbook.pdf?210831
①第9条 親子断絶の禁止。
特に、9条1項で、
「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。」と規定しているのが重要です。
さらに「父母の意思に反して」と明記されていることに注目です。ここの文言は「子ども」ではないのです。つまり、父母の「権利性」を認めています。子育ては、基本的に「親の子に対する義務」ですが、国家や他人に対して、父母は子どもを育てる権利があるのです。
②第18条 父母の共同養育。
父母の「共同養育」は、「結婚」の有無とは関係ありません。結婚は、あくまでも男女関係の話です。結婚・離婚は親子の養育とは関係ないのです。日本の単独親権では、結婚が出産育児制度も兼ねてしまっており、男女の別れが親子の別れにつながるという理不尽なことが起きています。
③裁判所の許可もなく、再婚相手が連れ子を養子にするのは禁止。
日本では、同居の単独親権者と再婚相手が、連れ子が15歳未満なら、子ども本人の同意もなく、実親の同意も裁判所の許可もなく、養子縁組ができてしまいます(代諾養子縁組)。実親の同意もなく、他人である再婚相手が親となってしまう世界では類例なき制度であり、条約21条違反でもあるので、速やかに廃止すべきです。
なお、単独親権は「女子差別撤廃条約」にも違反しています。
第16条
1 締約国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。
(a) 婚姻をする同一の権利
(b) 自由に配偶者を選択し及び自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利
(c) 婚姻中及び婚姻の解消の際の同一の権利及び責任
(d) 子に関する事項についての親(婚姻をしているかいないかを問わない。)としての同一の権利及び責任。あらゆる場合において、子の利益は至上である。
(e) 子の数及び出産の間隔を自由にかつ責任をもって決定する同一の権利並びにこれらの権利の行使を可能にする情報、教育及び手段を享受する同一の権利
(f) 子の後見及び養子縁組又は国内法令にこれらに類する制度が存在する場合にはその制度に係る同一の権利及び責任。あらゆる場合において、子の利益は至上である。
女子差別撤廃条約の第16条1項を見ての通りで、
(d)に共同親権が明記されています。もちろん、結婚の有無は関係ありません。
(f)でも、実の父母の同意がない養子縁組は禁止です。現在は、実の別居親の同意がなく、同居親権者と再婚相手の意思で、連れ子の養子縁組ができてしまうわけですが、この条文に違反しているわけです。
憲法98条2項では「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と規定しており、
子どもの権利条約と女子差別撤廃条約に規定されている
「共同親権」「共同養育」「親子断絶禁止」「代諾養子縁組の禁止」を遵守すべく速やかに民法などの法改正を行うのは、政治家などの公務員と国家にとって義務です。
しかし、「家族法制の見直しに関する中間試案」に関する意見募集
というものが現在、法務省から出されておりますが、子どもの権利条約と女子差別撤廃条約に違反する「単独親権案」「裁判所の許可なき養子縁組案」などが多数含まれています。
法務官僚と法制審議会の委員は、公務員ですから憲法98条2項に違反して、条約違反の法改正案を出してきたのは大変遺憾です。