第54回 都市開発も多様化の時代へ
保育所不足が話題になっております。当社にもお子さんのいる社員がいますし、これから産休に入る社員もいますので、仕事に行きたいのに預かってもらえる保育園が見つからず復職できないことのつらさはよくわかります。
かねてより待機児童の問題は深刻で、国や自治体がそれに対応し、保育所の数は増え続けております。実際、以前に比べて待機児童数を大幅に減らせた自治体も多数存在します。一方で、さほど深刻でもなかった地域が急激に待機児童数が増大し、保育所不足が深刻になった地域もあります。これはなぜなのでしょうか?
そもそも、保育所不足は日本全国的に見たら大都市圏などの一部地域の問題です。「大都市圏に偏らず、バランス良く住めば良い。地方に引っ越せ!」という意見は暴論なのでさておき、注目すべきはその大都市圏の中においても保育所が充足している地域と、急激に不足し始めた地域がある点です。なぜこのような現象が起きるのでしょうか?
私見ですが、私は都市開発手法に問題があるのではないかと考えています。前回、「地域活性化には多様化が不可欠」との話を書かせて頂きましたが、この保育所の問題においても多様化不足が起因しているのではないかと考えております。大規模住宅地(特に大規模マンション群)などには、多くの場合、同じような若い夫婦世代が入居し、同じような世代の子どもが生まれます。結果、特定エリアで集中的に急激に保育所不足になる。こういうことが繰り返されているのではないでしょうか。その数年後、その子ども達が小学校に上がり始めると、急速に待機児童が減少し、今度はともすれば保育所が余り始めます。
東京圏において、新しく小学校がいまだに作られておりますが、一方でその数以上に生徒数不足で廃校も生まれています。大規模開発があると小学校が不足し学校を作る一方で、同じ市区内で、生徒数不足で廃校していく。文化やコミュニティの継続性を無視し、非効率で無機質なまちづくりと思ってしまいます。
そろそろ日本は、このようなまちづくり、都市作りから本気で脱却していかなければいけないのではないかと強く思います。
(株)フューチャーリンクネットワーク
代表取締役 石井 丈晴