おでんの店 ゆたちゃん
表の看板に「ラーメン」とあるので、いわゆる徳島独特の中華そば、甘い豚骨醤油のスープに生卵を落としてあるようなのを想像してたら、ぜんぜん違うのが出てきた。
徳島人といえど、誰もがあの徳島ラーメンを好きとは限らんようだ。
うまいラーメンだなぁ。
朱塗りの相当年季の入ったカウンターに、おでんを二、三品よそってもらって角ハイボールのアテとする。
おでんを食べるたびに思い出すのは、その昔、北海道の友人に教えてもらった
「おでんはな、おでんにカラシを付けるんじゃなくて、カラシにちょっとおでんを付けるくらいが旨ぇんだ」
と言う台詞。
もうなんかすごくカッコいい!と感激して、それからおでんを注文するたびにその台詞を口にしていたのだけれど、その時教えてもらった元ネタ?オリジナル?つまりは出典が思い出せずに、もんもんとする日々を過ごしていたのだ、実は。
ようやく見つけたその出どころは勝新の「座頭市」シリーズ第10作目、『座頭市二段斬り』
お客さん、そんなに辛子を付けたら目に悪いよ、と心配する店主に、件の台詞を勝新が言うわけだ。
やはり勝新の座頭市はいいなぁ、いいよなぁ。痺れる。
親父さん(ゆたちゃん)と他愛もない世間話をしながらゆっくり時間が過ぎてゆくのを感じるのは、とても幸せな気分だったなあ。
いや、違う、違う。別に泣いてるんじゃねえよ、付けすぎた辛子がちょいと目に染みたのさ。
R.I.P