居酒屋 むら
丸亀市。
有名な骨付鳥の店の行列におそれをなして、ぶらぶらとあてもなく細い小路へ、裏通りへ、路地裏へと彷徨い歩く。
この佇まい、間違いないな。
ワクワクしながら扉を開けるてみる。
地元常連客でぎっしりの小さな狭い店内は、カウンターで5席、4人掛けのテーブルがひとつ。
一見空席がないようだったけれど、カウンターの向こうからお店のお母さんが
「ちょっと、○○ちゃん、そこ入れてあげて!」
と、4人掛けテーブルで女子会?をしていたおばあさん(失礼、妙齢の女性)3人組に声をかけてくれた。
流石に3人で呑んでるテーブルに相席ってどうなのかな?と思ったけれど、割とこの店ではよくある事らしく、いいちこの紙パックやらお皿やらを手際よく寄せて、座らせてくれた。
「お客さん、何にする?」
じゃあ瓶ビールください
「おにいさん、ここの人じゃないでしょ」
向かいに座っていたおばあさん(失礼、妙齢の女性)の1人がニコニコして聞いてきたので、
はい、県外から来ました。分かりますか、やっぱり
「そりゃまあねえ、ピアスしてる男の人なんてここらにはいないから、ねえ?○○さん」
「そうそう、間違いない。がははは」とめぞん一刻の一の瀬さんみたいな笑い声で同調。
お店のお母さんが「これ食べない?」と壁のおすすめメニューらしき貼り紙の手羽先を指差す。
断ると途端に機嫌が悪くなりそうな予感がしたので、ではそれを。と注文するとにっこり。
棚にずらりと並んで飾られている年代物の大きな徳利のひとつに、太い筆文字で丸亀製麺とあったので、あの徳利は?と聞くと、一の瀬さんが
「ああ、もちろんあの全国チェーン店の丸亀製麺じゃないわよ、本当の丸亀製麺ってうどんの製麺所があるのよ」
「製麺所だから玉売りなのよね」
玉売り?
「基本、スーパーや工場とか、あと食堂とかに卸してる製麺所だからね。丼や箸は用意してないし、出汁や薬味なんかを自分で持っていかなきゃ食べられないの」
ははあ、なるほど。そういう食べ方のうどんもあるんですねえ、さすがは丸亀。
例の兵庫の企業であるトリドールさんのうどんチェーンは、丸亀はもちろん県内にもたった2店舗しが出店していない(出来ない?)と聞いていたので、まあその丸亀製麺では無いとは思っていたけれど、元祖丸亀製麺所というのがちゃんとこの町に存在するのは初めて知った。勉強になるなあ。
芋のお湯割を頂きながら、女子会の3人組がお帰りになるまでご一緒させていただきました。
お店にはお手洗いはないので、店の外の、この通りの店の客用らしい共同便所にて、
「なんだ、あんたあの3人組と一緒のグループじゃなかったんだ」
と、他のお客さんに驚かれるほど馴染んでしまってましたとさ。