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一杯一杯復一杯

かつて富山県高岡市のJR高岡駅前に、昭和40年代初頭に建てられたらしい、高岡駅前ビルアドニスビルという、いわゆる雑居ビルがありまして。

地上4階建てで地下街にも繋がり、全く人の気配のない地下に降りて、そこから吹き抜けのビルの朽ち果てた塔屋の裏側を見上げると、錆びた階段やむき出しの配管やら無計画に増築されたりしたわけのなからなさ、その雑多な風景も相まって、まるでかつての香港九龍城砦をイメージしたもんでした。

この興味深い迷宮のような建物は、残念ながら2013年(平成25年)に駅前再開発で取り壊されてしまうわけですが、強烈な富山の思い出として残っています。

今から15年ほど前になるでしょうか、当時月イチの会議が高岡市で行われていたので、昼食はこのビルの下の駅前飲食街で食べていました。

たいていは
とんかつ&ランチ キッチンひらた
か、そのお隣、
中華のお店、中国料理 李白

このどちらかを交互に訪れていたように記憶しています。

キッチンひらたはこじんまりした老舗の洋食屋さんで、当時も既にかなりの老齢のご主人が作るAランチとBランチが人気でした。
わたしはここのポークピカタが好きでしたねえ。




中国料理 李白の方は、割と高級店っぽい内装で、朱塗りの円卓なんかあったりして。

お店の奥の壁には酒仙、李白の七言絶句

兩人對酌山花開  
一杯一杯復一杯
我醉欲眠卿且去
明朝有意抱琴來


山中与幽人対酌」が額装して掛けられていて、それを眺めながら毎回炒飯、麻婆豆腐とかエビチリの中華ランチを食べました。

二人きりで向かい合い酒を飲み交わす
傍らに咲いているのは山の花。
語らううちに一杯、一杯、また一杯。
私は酔いが回ってどうにも眠くなってきたようだ。
君、ひとまず今日は帰ってくれないか。
そして気が向いたなら、明日の朝、琴を抱えてまた来たまえ。


もちろん会議とはいえ、仕事中の昼休憩なので、ここで昼間っから呑むわけにはいかないのだけれど、年取ったら気のおけない友人とこういうサシ呑みをしたいものだ、と思ったのを覚えています。

まあでも、それからずっと一人ぼっちの独り呑みの人生なんですけどね。

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