樽を知る
ラモーンズのTシャツを着て入ってきたワタシを見てカウンターの向こう側でニヤリ。
そこからロックの話で盛り上がり、カウンター上のコルトレーンのCDを見てジャズの話題で盛り上がり、趣味性の一致に嬉しくなる。音楽の話と格闘技の話は本当に止まらないね、気がつくと朝になってしまうね。
まずは開栓の知らせを見たスコティッシュエール。
行儀よく1パイントか、あるいは2杯のエール、もしくはスタウトを飲んで軽く食事をしたあとはシングルモルトへがルーティン。
今夜はオーナーのお勧めによりキャンベルタウンのロングロウ。
ロングロウはピートのみで麦芽を乾燥させた2回蒸溜。スモーキーでパワフル。
グラスからたち登るその香りの素晴らしさに一瞬意識が吹っ飛ぶ。
最高級の烏龍茶を聞香杯という細長い小さな器で香りだけ味わう、というのがありますが、まさにそういう感じの悪魔的な香り。
このスモーキーさには、上品に薫製されたスモークサーモンのサラダが激合い!思わず「合うわ!」と顔を上げるとマスターがニヤリ。
二杯目はラフロイグのクォーターカスク。
普段飲み慣れているラフロイグとは一味違いますよ、と出してくれたグラスは、またしてもクラリとするほどの香り。
初めてラフロイグを飲んだ時のあの衝撃と「え?これ、そういうものなの?」というくらいのクスリ臭さや違和感をもう一度あらためて味わえた感覚。
最近は慣れてしまって忘れてしまったそのセンセーショナルな感覚を今一度思い起こされるね、と感想を述べたら「それそれ、それですよ」とまたニヤリ。
「呑み比べてみますか?」と、テイスティンググラスにいつものラフロイグの10年を注いで出される。
いつも一晩に2杯だけと決めていて、それ以上呑んでも自分の酒の強さでは味や香りが判別不能になるからキッパリ止めておくと自分にルールを課しているのに、そんな魅力的なテイスティンググラスを出されたら、イカンではないですか。これはイカン、イカンですよ。
などと言いつつやはり呑み比べてしまう。
うーむ、やっぱり違うんだなぁ。
決して普段呑んでいるラフロイグが美味くないわけではないのだけれど、 この通常の四分の一の大きさの樽で作られた(小さい樽で熟成すると酒が樽に接する面積が大きくなるので樽熟成が早く進むんだそうだ)クォーターカスクは格段に美味い。たまらん。幸せ。