俺たちに死者の日は来ない!
メキシコ麻薬カルテルのボス、リンゴはいつものように裏切り者をどう始末するかの会議で残虐な殺し方を提案したあと、麻薬を売って築いた邸宅の庭で葉巻を吸っているときに強い衝撃が頭を襲い、気を失った。
「起きろ、起きろ」
リンゴは肩を揺さぶられ目を覚ますと車の中にいた。手には手錠。運転席を見ると見知らぬ白人男がいる。
「誰だ、きさま」
「わからないのか?」
男は痩せこけた頬を引きつらせた。
「お前に妻と娘を殺されたアメリカ麻薬取締局の捜査官だ」
「毎日人が死ぬ。一々覚えられない」
リンゴの脇腹に肘が打ち込まれる。
「ジョナ・ジョンズだ。よろしく」
「こんなことしてただで済むと思うなよ」
「それどころじゃない! それどころじゃないんだ、リンゴ」
ジョナは妙な光をたたえた目でこちらを見る。
「世界に危機が迫っている。デーモンだ。まもなくデーモンの侵攻がはじまる」
ジョナは落ち着きなく頭を掻きむしる。
「止められるのは我々しかいない」
【続く】