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オールの小部屋から㉚ 賞と編集者(後編)

 10月後半になっても、まだまだ暑い日が続きますね。寒暖の差が激しいからでしょうか、周囲で体調を壊す人がたくさん出ています。みなさん、どうかお身体に気をつけてお過ごしください。
 さて、いよいよ第104回オール讀物新人賞と、第14回本屋が選ぶ時代小説大賞を発表するオール讀物11・12月号が発売となります。22日より発売ですが、すでに書誌ページができていまして、各書店で予約もできますので、ぜひぜひお買い求めください!

オール讀物11・12月号

 あわせて、来年開催される第12回高校生直木賞の参加校募集も始まりました。私、この週末は机にかじりついて、高校生直木賞の通帳の数字と、請求書や領収書の束を睨みつつ、第11回高校生直木賞の決算書類をつくっております。助成をいただいている授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)さんに提出する決算書類、後援をしてくれている文部科学省に提出する報告書などをつくらないと、事業としての「第11回高校生直木賞」を締めることができないのです。
 私、25年も社会人をやっているものの、こうした事務書類の作成は本当に苦手。どんなに計算しても収入と支出の数字が合わず、ストレスで胃が痛くなります。「できた!」と思って先方に送っても、必ず辻褄の合わない箇所を指摘されて、修正する羽目になります。
 高校生直木賞について、昨年、このnoteの編集部だよりで紹介したことがあります。

 2014年に第1回を開催しまして、私自身は、第2回からスタッフとして加わり、以来、ずっとオール讀物編集部が事務のお手伝いをしています。
 時々びっくりされるのですが、この賞は、文藝春秋が運営しているのではありません。有志の団体である高校生直木賞実行委員会が、独自の予算で、自律して運営しています(オール編集部もボランティア参加)。主な収入は、賛助会員企業のみなさんの会費、最近はSARTRASさんの助成、そこに日本図書普及株式会社さんから図書カードのご提供をいただいて、運営することができています。
 とくに宣伝はしてないのですが、ありがたいことに参加校は年々増えるいっぽうで(今年は北海道から鹿児島まで46校)、これはうれしいことである反面、かかる費用も増加するので、痛し痒しの面もあります。コロナ前などは、いよいよ赤字に転落しそうになり「もうこれまでか」と思ったことが何度かありました。
 それでも、参加した高校生が感動のあまり涙したり、笑顔で全国の高校生と交流したりしている姿を見ると、「やっててよかった」と思います。
 なにより、高校生たちの真摯な議論を聞いていると、私たちのほうが勉強になるんです。小説の新たな読み方、新たな可能性に気づかされたりもします。若い感性に接することは仕事の上でも大いに役に立つと思います。

『ラウリ・クースクを探して』で第11回高校生直木賞を受賞した宮内悠介さん

 高校生たちの議論は、オール讀物7・8月号に詳細なルポを掲載していますし、今月23日には代表生徒の感想文を公式サイトに載せますので、ご覧いただけたらと思います。「活字離れ」と言われて久しいですが、こんなに楽しそうに読書し、議論する若者が全国にいるのか、と驚愕されると思います。
 11回を重ねてきて、初期のOB・OGは社会人として活躍しています。新聞社や出版社に勤めている方もいれば(文春にもOGがいます)、作家になった方もいます(『ちとせ』を上梓した高野知宙さん)。今後は高校生直木賞出身者たちのコミュニティづくりも大事になってくるかなと考えているところです。

第11回の全国大会の様子

 最初は雑誌の一企画として「直木賞候補作を高校生が読んだらどんな感想をもつか」という興味でスタートした賞ですが、たちまち規模が大きくなり、賛助会員を募るタイミングで、独立した実行委員会を立ち上げ、高校生たちの熱意に背中を押されて、続けてきました。
 が、いま、高校生直木賞実行委員会の通帳を眺めていて痛感するのは、コロナが明け、東京の宿泊費が急騰する中、多くの学校の高校生を東京に招いて対面で議論する環境を整えるには、やはり予算が厳しい……ということです。
 すでに多くの賛助会員企業(公式サイトにお名前を掲載)、日本図書普及さん、SARTRASさんのお力添えをいただいて、ありがたいことに回を重ねることができておりますが、もし、高校生直木賞に興味がある企業の方がおられたら、賞を長く続けていくため、賛助会員になっていただけないでしょうか(年会費1口5万円です)。
 ※ ご興味ある方は、こちらのお問い合わせフォームより気軽にご連絡ください!

 目下、「オール讀物」を定期購読してくださっている読者のみなさんへの様々なサービスを検討中です。文豪一筆箋をプレゼントしたり、豪華ゲストが登壇する愛読者大会にご招待したり、といった企画を始めております。

 それと同じように、高校生直木賞の賛助会員企業のみなさんにも「高校生直木賞を応援してよかった」と思っていただけるような特典を考えていきたいと思っているところです。
 高校生直木賞では、4月の地方予選、5月の全国大会のほかに、随時、作家の方を招いて高校生むけの読書会、講演会を開催しております。今夏は「高校生のための著作権講座」や、オール新人賞作家・米原信さんによる「現役東大生作家が解説 日本史の教科書まるごと一冊 歌舞伎で読み解く!」というイベントを開催して(生徒よりも先生に!?)好評をいただきました。
 そうした企画のうちの一部ですけれども、今年『ラウリ・クースクを探して』(朝日新聞出版)で第11回高校生直木賞を受賞された宮内悠介さんのトークイベントと、3月に開催した万城目学さんの「エッセイの書き方講座」を、来週発売のオール讀物11・12月号に記事化して掲載しております(宮内悠介「私はこうして小説家になった」/万城目学「エッセイの書き方教えます」)。
 ぜひお読みいただき、高校生の方は先生をつかまえて「高校生直木賞に参加したい!」とリクエストしましょう。社会人の方は、お勤めの会社が高校生直木賞を応援してくださる道はないかをご検討いただけましたら、こんなに幸せなことはございません。

米原信さん「日本史の教科書まるごと一冊 歌舞伎で読み解く!」

 高校生直木賞の話が長くなってしまいました。決算書をつくっている最中のためか、ついつい苦境をアピールするような、品のない編集部だよりになってしまったかもしれません、お許しください。

(オールの小部屋から㉚ 終わり)




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