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些細で酷な喧嘩をした日

「いつも本読んでるよね」

待ち合わせにはだいたい先に到着して本を手にしてるからだろう。
もしも忘れなどしたら駅で何か活字を買うという、まるでスマホを忘れたかのような心許なさに襲われるからこれはもう病気かもしれない。

さて、それでどれほど読んでるか?
読んでないね笑
眺めてるね笑
長いと1カ月かかる時があるからね
そうゆう訳で私は読書家ではない

だが…

「本は悪くないけど、情報とか知識はYouTubeがいいよ、本は読んでる人と描いてる人が好き勝手に解釈してるけどYouTubeはニュースとかも分析してるからね」

とふいに彼女にいわれ、にわか本好きのくせに沸騰してしまった。

なんだそれは⁈
YouTubeこそそうだろう!
だがこれは私の偏見なのでそこは黙った。
確かに彼女はいつも美しい
色々なことを知っている
社交的でいつもパワフルで素敵だ

「本は娯楽だしフィクションからノンフィクションまであるし書き手の自由、読み手の自由だろうに。ほっといてくれ!」とまともそうなことは黙り

意地悪に放った。

「色々な立場の人の気持ちがわかるようになるよ。不倫されてる妻の気持ちは簡単じゃない」

絶賛不倫街道数十年の彼女は嫌な顔をした。

私はすぐさま心の中でごめんねって言った。彼女には「好きで不倫してる訳でもなく、好きな人と結ばれないから私こそ辛いんだ」という持論があり、それもそうだろうと思うとこはあったから。
それでも不倫される側の苦痛を不倫してる者がその大小を語るほどおぞましいものはない(あくまでも口に出して語ること)と私には思える。

些細な言葉から酷い言葉で彼女の心に傷をつけただろう日だった。

YouTubeを勧められただけなのに
なんとも意地悪な私だ。
好きなもの、そう、趣味や推しを否定されるとこれほどに瞬時に沸くんだなと実感した。私は本好きだったんだな。
それにしても50過ぎてもこんななのか私はとなんだかなな瞬間に苦く口がへの字になった。
次に会うことがあれば謝ろうと思っている




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