見出し画像

すばらしい日々を

学生も社会人も専業主婦も小さな子どもも、
犬や猫、虫や木も、

みんな朝を迎えれば、それぞれの1日が始まる。

中でも、変わり映えのしなさに辟易するのなんか人間くらいだと思う。

 昨日と同じ日は無い

役所広司さん主演 映画「PERFECT DAYS」を観た。

主人公の平山は、朝起きて(それもかなりの早朝)
植物に水をやり、身支度をし、古びたアパートを出る。

トイレ清掃員の彼は、渋谷区のトイレを一つ一つ丁寧に掃除して周り、終わればアパートへ帰る。

家に着くのは昼下がり。
行きつけの銭湯。
行きつけの居酒屋。

規則正しく、毎日を繰り返す。
そんな描写が続くのだが、平山は一つとして辟易としている表情をしない。

玄関を出た時見上げる空に、笑みがほころんで、
空気を吸い込み吐き出す。

仕事に向かう直前には決まって缶コーヒーを相棒に。

時代遅れのカセットテープをBGMにして、早朝の首都高を駆け抜ける。

仕事にしている公衆トイレの清掃には、職人という形容が良く似合うほど。
丁寧に一つ一つこなしながら、束の間の休息には木漏れ日を見上げて笑みを浮かべる。

一つ一つが丁寧で、平山の笑顔に陽だまりのような暖かさを覚える。

役所広司さん、なんという表現力、なんという演技力。

こんなに地味で、変化や驚きのないセリフのない映画だからこそ、その余白について考えさせられる。

昨日と同じ日なんてなくて、変わらない日常でも特別にするのは自分次第なのだと、そう思った。

平山が、影踏みをした帰り、頬いっぱいに笑顔を湛えながら自転車で走り抜けるシーン。

胸に溢れるような暖かさを覚えた。

こんな記事を書いた後、つまらないように見える1日も、自分で彩りを描き足せるよな…
と書こうと、そう思っていた。

もう、役所広司さんに先を越されていたのである。

やられた。


イヤホンを付ける時
洗濯物を干すために出たベランダ
紅茶を注ぎ、口に運ぶ時
カバンを背負う瞬間

私は映画の主人公なのだ。

ふと思い出した。
こんな曲があったな。

いいなと思ったら応援しよう!