降ってくる相続---相続登記義務化に関連して
タイトルは私の造語です。
相続登記が義務化されます。
本来的に順番でいえば親→子→孫という順番で相続は発生します。
法律的に言うと、亡くなった瞬間に法定相続人が法定相続分という持分でさまざまなものを共有することになります。
預金であれば端数は出ますが法定相続分で分割することは可能です。
でも土地や建物は分割するのは困難です。
土地は分筆して分けることもできなくはないですが、面積や地形によっては難しい場合もあります。
建物も共有とすることもできますが、問題の先送りでしかありません。
本来的な順番であれば親の相続に直面することになります。人は必ず亡くなるのでこれは避けて通れないと思います。
不幸にも事故や病気などで多少順番通りにはならない場合もありませんが、想定はできると思われます。
ただ相続登記が義務化されて古い登記が放置されている土地があることも忘れてはいけません。
昭和22年までは家督相続だったので長男なりが家長として土地建物を自動的に相続されることになりますが、戦後の民法改正により法定相続という分割相続が採用されました。
さらに、相続人が亡くなっていても代襲相続や数次相続によって相続人が承継した法定相続分はゼロになることはありません。
所有している不動産は人から人へと伝えられていくのが普通だと考えた方がいいと思います。財産目録のようなものが備えられていることは考えられないでしょうし、権利証は残っているかもしれませんが、現実には誰かが持っているにしても見たことがある人は少ないかもしれません。
そうすると、きちんと口頭なりで伝えていかれていないと、所有していることすら「知らない」土地というのが実在することになります。
「この山はうちの土地」「ここと、そこの田はうちの田んぼ」そうした伝え方です。
その知らない土地には持分としてはわずかかもしれませんが持分として所有権を持っていることになります。
知らないなら手のつけようもないのも事実ですが、遺産分割を行わないままでいると、相続人はネズミ算式に増えていくことになります。
私の経験したものでは、所有者がすでに亡くなっていることが明らかな土地で、調査したら30人程度が相続人であることが分かったケースもあります。
その土地を処分したり、逆に買おうとした場合、その相続人すべての共有持分を買うなどの何らかの手続きが必要で、誰かが主体となって全員と接触をしなければなりません。
その主体となるのは実質的にその家を継いでいる人だったり、道路整備などの公共整備であれば市町村役場の人が接することになることになるかもしれません。
でも、数代の相続が放置されていると共有者が多数いることにより、その多くは顔も知らない、どこに住んでいるかもわからないなどの状況に陥ってしまいます。そうなるともはや他人に近い状況です。
そこからいきなりある土地の共有者であるという知らされることになります。
多くの場合、都会ではなく地方の土地だったりするでしょうが、都心部でも十分ありうることです。地方の土地であれば売却が不可能に近かったり、財産価値もないものもあるでしょう。でも都心部であれば価値のあるもので、売却可能なので法定持分で分けることも可能かもしれませんが、一般的には遺産分割協議をして所有者を「全員」で決めることになります。
こうして登記簿を見ただけでは所有者を特定できない土地を、国は「所有者不明土地」と称して調査しています。
面積として、九州より大きな面積の土地が所有者不明土地であるといわれています。
誰かがその土地を利用して利益を得ていればなかなか法定相続分での分割は難しかったり、紛争の火種になったりするかもしれません。
さまざまなところで相続問題が生じることとなります。
相続登記義務となる対象は、最近相続の対象となった土地だけではなく、それ以前の土地も対象になります。
極端なことを言えば、明治時代、登記制度が設けられた際の登記がそのまま残っていることになります。
普段から親族関係を良好にしておくことも対策となるでしょうが、葬儀すら小さな葬儀が主流となっている昨今では難しいかもしれません。
「降ってくる相続」というのはそうした土地のことを指した私の造語です。
突然降ってわいてくる可能性の高いものですから、淡々と処理していけばいいと思いますが、疑問点があれば、専門家に相談してみることもお勧めしています。