相続、特に不動産の相続に関する大きな誤解

士業をしているといろいろな方とお話しする機会があります。

特に、相続登記が義務化されたことで、不動産や相続に関するお話をすることが多くなりました。

行政書士は登記申請については職域外なので、あまり、深くはお話ししないことにしているのですが、多くの方が誤解している点があるのでその点についてだけ書きたいと思います。

これまで相続登記は義務とされてきませんでした。

相続だけでなく、不動産の登記は所有権移転の要件ではないので、たとえば土地を買っても登記をしないで放置しておいても所有権は実質上移転しているし、他から異議がなければ何ら問題はありませんでした。

ですが相続登記が義務化され、しないと過料が科されることとなりました。

相続に限らず登記を書き換えた方が望ましいことは言うまでもありません。

ならばなぜ相続登記のみが義務化されたのでしょうか。

放置することによる荒廃化などが理由にあげられることもありますが、

国などの資料によると、一番の理由は震災や災害の復旧の妨げになっているということです。

これは事実で、東日本大震災でも、今年の能登の二度にわたる震災と災害でも相続登記が未了である土地が多数あり、復興・普及の妨げになっています。

たとえば、仮設住宅を建設したい、一時的にがれきや廃材を置いておきたい、そういう段階となって、それに適した土地があってもそこが相続登記がなされていない土地で所有者が明確でない場合、勝手に使用することができずに立ち止まらざるを得ないという現実があります。

道路を広げて整備しようにもそこに相続登記未了地があると、非常に手間がかかる上に、時間もかかり、場合によっては別の方法をとらざるをえなくもなります。

能登ではいまだに傾いたまま放置されている家屋が数万件あるといわれています。家屋自体が相続未登記なのか、土地が相続未登記なのかわかりませんが、たとえ役所であってもそうした土地家屋に手を出すことをためらうのも事実です。

(危険度が大きく、緊急であれば話は別ですが)

相続登記がなされない理由は様々あろうかと思います。

ただ、勘違いして欲しくないことが一点あります。

登記簿の名義人は必ずしも所有者とは言えません。

ましてや死亡している場合は、その名義人は所有者ではありません。

その場合、所有者となるのは法定相続人です。

簡単に言うなら、名義人が亡くなると同時に、法定相続人の共有不動産となります。

代々相続登記をされていないとそれだけ法定相続人の数、つまり共有者が増えていくのは現実問題として想像できると思います。

どうもこの点が理解されていないような気がします。

これについては、お仕事や年齢に関係なく、もっと言えば、かなりハイスペックといわれるような経歴をお持ちの方もきちんと理解されていないような気がします。

もっと言えば、士業の方の相続に関する説明でもこのあたりについて省略されているように感じます。

(少し不謹慎な表現かもしれませんが)

死んだおじいちゃんの土地だから、私には関係ない。

そう考える方が多いかもしれません。

でも決してそうではなく、

死んだおじいちゃんの土地だから、相続人全員が所有権を共有している。

ということになります。

法律的に言うと、人は死んだ瞬間に物を所有する主体ではなくなります。結果として亡くなった瞬間に相続が開始し、法定相続人全員の共有地となります。

法定相続人全員で共有状態を解消する手続きを遺産分割協議と呼びます。

決して相続する権利があるのではなく、すでに相続していて所有者の一人なのです。

だからといって、すぐに相続登記手続きに着手できるかというとなかなか難しい面もあります。

費用はかかるし、手間もエネルギーもかかります。

共同相続人間で、つまり親族関係によっては自ら手を上げにくい状況かもしれません。

ただ、自分が所有者の一人であるということを意識するだけで不動産の登記に対する意識が変わるかもしれません。

もうひとつ、行政書士を含めた各士業のいわゆる「あおり広告」には注意してください。

過料は行政罰であって「罰金」ではないのに、相続登記しないと罰金が課されますよなどという表現をしている方もいます。

実際には過料が科されることはガイドラインで示されていて、おそらく適用されるのは稀と考えられます。

とりあえずこの件に関して、ご相談があればメールにてご相談ください。

簡単なご質問なら無料でお応えできるかもしれませんし、必要であればセミナーなどにも対応可能です。


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