遺言を頼む専門家は誰?

遺言は自分で作成できます。ただし、揃えなければならない書類が多いのでなかなかたどり着けないかもしれません。
そのために誰かのアドバイスを受ける必要があると思っています。
私は行政書士ですが、自らの領域に無理やり誘導するようなことはしません
ので、最後まで読んでみてください。


1.相続に関わる資格


一般には公的資格の持っている人に聞くべきです。
民間資格も多数あり、知識もあるとは思いますが、対外的にその資格名称を名乗ったところで誰も相手にしてくれないでしょう。役所でも、金融機関でも同じです。
大きくざっくり書くと
(1)弁護士
(2)司法書士
(3)行政書士
(4)税理士
財産が多量にある場合、具体的には基礎控除分をはるかに超えると思われる場合は弁護士か税理士でしょう。
会社の経営者は潜在的に資産を多量に保有している可能性があります。自社株や借入金などを考慮に入れなければベストな遺言は書けません。
そもそも遺言にベストがあるのかと言われればそんなことはないのですが、一人に遺産を集中させたりしてしまうと相続税の負担に差が出てしまい、適切な分配方法を決めることができません。
また、法定相続人が多数存在する場合も同様です。

自宅の土地建物と若干の預金がある場合は司法書士がベストです。
預金だけなら行政書士でもよいかもしれません。
あとは許認可の必要な業務をやられている方も行政書士が適しているかもしれません。行政書士は事業承継も業務範囲に入ってきます。許認可は次代に引き継げるものと、引き継げないものもあり、廃業や事業譲渡も含めていったんは行政書士に相談が良いかと思います。
ただし、行政書士が行っている許認可は多岐に渡っているので、業務としてやっていない可能性があることもあります。

税理士さんの職業上の特性として相続税を安くするような方法を提案してくる傾向にあります。例えば、不動産を共有状態にすることは、売却前提である場合以外は避けた方が良いのですが、公平性を保つために共有にしておく例が多々見られます。これは問題の先送りであって、解決ではないので避けるべきです。
弁護士さんはハードルが高いかと思います。
ですが、弁護士さんも最近では少額案件も取り扱うこともあり選択肢としてはありでしょう。ただ、弁護士さんは相談の時点で自己の報酬を計算します。今の時代、弁護士さんも無料相談から受け付けてくれますが、報酬が安いとみられてしまえば、お断りされるかもしれません。

2.何を相談するか?

では専門家に何を相談するか。
結論から言えば自由です。
遺言を書こうと思っている、から始まっても構いません。
丁寧にヒアリングして方向性を定めていきます。
場合によっては他士業さんと共同で取り組んでくれるかもしれません。

一番相談しなければならないことは2点あると思っています。

(1)財産はどれくらいあって、どういう風に遺していくか

士業は皆さんの置かれた状況を勘案して提案型でご相談に応じていきます。決して一方的な提案はしません。
カウンセリングとかコンサルタントとか言い方は別として、自分の思っていることが実現可能なのか、残された人にとってよい考えなのか、対話型で進めていきます。戸籍とか、通帳とかの資料があればそれを参照しながら行うこともできます。
初回はおそらくどの方も無料ですが、どこまでを無料にするかはその士業の方の判断でしょう。一般的には30分を超えたら有料、としている方が多いですが、30分で話せる内容なんてたかが知れているので、できれば戸籍とか財産の調査に入った時点から有料としている方を選んだほうが良いと思います。
その対話の中で、法定相続分や遺留分を考慮しながら、ご意見を聞いて、進むべき手順を組み立てて、ご提案をします。あるいはご本人との同居・別居なども判断材料となります。
あくまでもご本人の意思が重要であることは間違いないので、しっかり意思を伝えることが大切かと思います。

(2)どういう書き方をするか

遺言には作法があります。
別に決まりがあるわけではないので自由に文言を決めて構いません。
ただし、法律というのは恐ろしいものでその言葉に一般の人が考えもつかないような意味が含まれていることがあります。
ですから、表現の仕方、順序は大切です。
例を挙げます。
たとえば、晩年世話をかけたご長男のお嫁さんに遺産を残すことを考えらえる方がいるとします。別に珍しいことではありません。
ですが、単に「譲る」とか「贈る」とかだと贈与になってしまうこともあります。
私が受けた相談例で、あわてて書いた遺言の中にそうした文言があり、これは相続ではないと判断されて困ったことがあるとおっしゃる方がいました。
誰かに財産を相続させたいならそれなりの書きぶりをしないと、第三者に伝わらない可能性があります。

相続させる資産の項目の順番も実は重要で、たとえば5人とかのお子さんがいる場合、年齢の上の人に相続してもらう資産を先に書く方が、相続人間のトラブルを避けやすいかもしれません。

遺言書に記載されていない財産が発見された場合の条項も入れておくべきだし、お墓をお持ちなら祭祀承継の条項も入れておいた方がいいと思われます。
忘れがちなのが自動車ですが、士業が関われば財産目録を整理していく中でアドバイスもくれるでしょう。

(3)ひな形の扱い

ネットを調べるといろんな遺言のひな形が出てきます。書物もたくさん出てきます。
ですが、相続は唯一無二のものなのでそのひな形に当てはめるだけでいいかどうかはわかりません。人は他の人とは違う唯一無二の人生を送ってきたはずですからその唯一無二をうまくひな形に押し込もうとすると無理も齟齬も出てきます。
できれば専門家に一度見てもらうことをお勧めします。

3.相談はどの段階からでも?


遺言を書く流れはそれぞれだと思います。残す人と資産を決めておく場合もあるでしょう。ざっくり亡くなった後のトラブルに備えてなのかもしれません。
士業はどの段階からでも相談は受け付けます。
極端な場合、公正証書遺言を作成してしまった後でも構いません。
もしかしたら、全容を聞いたら作業が後戻りすることもあります。
ですが遺言を書くと決めたら、まずはどの段階からでも士業に相談するのが良いと思います。
セカンドオピニオンとしていろんな人の話を聞くこともありだと思います。



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