ラムネと魔法
夕焼けに恋い焦がれて、
嘘を吐くように朝日を追った。
君はまだ狭い世界にいるんだね、と
昔誰かに言われたような気がするけれど。
煙草は、一度だけ吸って止めてしまった。
お酒は、少しだけ。
まだいつもと違う帰り道を探すくらいの余裕はあるのに、
財布の紐だけはいつも固いままだなぁなんて
昨日と同じカーブミラーを曲がると考えてしまう。
飛ぶためだけに造られた羽に憧れて、私は何を欲していたんだっけ?
魔法の杖、奇怪な文字と生贄
子どもの頃に読んでいたファンタジー小説の題名なんて思い出せないし、
ダイヤモンドだって嫌い。
ましてやブランドの名前も、クラスメートの名前も、何だか気になっていたあの子の名前だってもう覚えてなんかいない、けど。
足の小指の小さな小さな爪を見たときの、あの感覚は何だろう。
言い様もないあの感情を何と言えば良いんだろう。
瓶のラムネは瞬時に溢れ、指先を、伝う。