【ショートショート】ブドウの観察日記
母を殺して埋めた花壇からブドウのツルが生えてきました。母はブドウが大変好きでしたから、きっと横着をして飲み込んだ種が芽吹いたのでしょう。今では家の壁中に張り付き雨樋を伝って、秋には美味しい実をつけるようになりました。産んでもらったこと以外で母に感謝することは、そのブドウくらいです。
ブドウのツルは、まるで毛細血管のように私の家を包んでいます。今年は遂に私の部屋の柱から梁に巻き付き二房の立派な果実がぶら下がりました。それを見て私は母を自殺に見せかけ殺したことを思い出します。寄り添うようなもう一房は私でしょうか。いつか私の首にブドウの蔓が巻き付くのでしょうか。それとも母と同じように天井の梁にぶら下がるのでしょうか。どちらにせよもうしばらく時間が必要です。