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2020年9月21日 「ボクの穴、彼の穴」 5日目8公演目

開幕から5日目、8公演目の9月21日の夜公演。
2回目の観劇に東京芸術劇場へ向かう。まだまだ時間は間に合うのに、少し早足になるようなはやる気持ちを抑えながら。


今日の席は下手の前列。こんなに前で舞台を鑑賞できるのは初めてというくらい。
前回観劇した初日は全席発売されておらず、1席ずつ間を空けて、それでも1階席はほぼ埋まっていたように見えたけれど、今日埋まっていたのは1階の前半分くらい、後ろの方や2階は空いていた。
もう聞き飽きた言葉だけど、仕方ない状況なのだろう、会場に足を運ぶ決断を下すことができず配信されたものを固唾を呑んでそれぞれの場所で受け取っている人のため分の席なんだと何とか無理やり前向きに捉えることにした。
あんなに素晴らしい時間をくれる壇上の2人に心が動かされて揺らめく客席の熱を返したい、そう出来る日がこの先ちゃんと戻ってくるといいなと思いながら。

* 以下ネタバレが含まれる感想になっています。好まれない方こちらで回れ右お願いします。



目の前には佐助さんの演じるボクA(のちにボクAは”大鶴佐助26歳”であることが判明する)。
舞台に立つ俳優さんの中では身体が大きい方ではないのかも知れないけど、バランスのいい、スタイルもいい、舞台に映える役者さんなのだなと見入ってしまう。
自由自在の抑揚で彩られる声とコロコロと変わる表情、決して大袈裟ではないのに生きる役がどこまでもまっすぐに届く身体の動き。
色が白く肌理細かい美しい肌なのに、そこから発せられる熱と動きは迷いなく力強くて男性的、その感じがすごく色っぽかった。
穴から顔を出そうと足をかけ体重をのせた踏み台が後ろにガタンと回転してしまったのはハプニングだったのかな、でもなんてことない事のように動じず流れを止めない佐助さんにもっていかれてしまう。

穴の中で問いかけても問いかけても答えが出てこない憤りを近距離から直球でぶつけられ、心臓を素手で掴まれる思い、縮み上がる思いだった。
佐助さんとお姉さんとの配信二人芝居「いかけしごむ」でもそうだった。観ている人を巻き込む強力な引力がある佐助さんの表現。巻き込まれてひゃーとなっているのにそれはスリルではなくてどこか安心感を感じられる、何と言ったらいいのか、うまく言葉をはめ込むことが出来ない振り回され感がある。もっともっと佐助さんの創る世界に浸かりたい。

コミカルな場面だったのかもしれないが、家族と囲む食卓を回想する佐助さんに涙を我慢できなかった。役でない佐助さんの家族との温かい関係がボクAに繋がっているように見えてしまい、場違いだったらごめんなさいと思いながらも止められなかった。


場面が変わって氷魚くんの演じるボクB(こちらものちに”宮沢氷魚26歳”とわかる)。
氷魚くんは恵まれた健やかな骨格ときっとその骨格も良い影響を与えているであろう素晴らしい声、舞台に存在するそれだけで、兵士の装いだろうと顔が泥で汚れていようと隠しきれないその華やかさだった。
衣装が結構なサルエルパンツだったのは、普通のシルエットだとスタイルの良さが前面に出過ぎてしまうからなのかな。現役モデルだもんね、戦場にそぐわない洗練されたシティ感出ちゃうよね。

アタワルパの時より身体が細く見える。その少年ぽさ、ある種の幼なさのようなものさえ彼の持つ魅力の振り幅になってしまう。
外見の柔らかい雰囲気やその透明な少年ぽさの印象を覆す低く響く心地よい声、落ち着きある美しさの横顔、持て余し気味の長い手足大きな掌、色素の薄い瞳からのまっすぐな視線。神様から与えられ彼の素質と努力で何倍にもなった光が、見るものの視線を一瞬で奪い離さない。
きっとモデルとしてだけでも、映像の世界だけでも十分にその魅力を発揮できるのに、その佇まい・所作の美しさ、神々しさを、身体の奥から響く声を、生の”俳優宮沢氷魚”を、共有させてもらえる「舞台」「演劇」を自分の立つ場として受け止め取り組み続けてくれていることに感謝せずにはいられない。

死んだ仲間のマイケルを思う場面。言葉遊びで笑いをさそう場面なのだろうけど、ボクBの真面目さ、真面目さゆえのマイケルへの思い、自責の念、無念さ、惨めさ…。溢れていて涙が止まらなかった。そうやって笑い話のようにして、自分を慰めているんでしょう?ボクBの、1人きりなのにその中での精一杯の虚勢が、苦しかった。


セリフや言い回し、その動きについつい笑ってしまう、と思ったら次の二人の掛け合いに涙。そんな笑って泣いてをたくさん繰り返した1時間20分。
初日より、彼らが伝えたいだろうことが鮮明によりシャープに表現されていたように思う。
「ボクらだけでも」
まっすぐに力強く伝わってきて、胸がいっぱいになる。

雨のシャワーで佐助さんは初日の“半ケツ“ではなく、もはや“全ケツ“だったこと(目を手で覆ってるフリして指の間からしっかり見ちゃうような、一抹の罪悪感を感じながらしっかり焼き付けてきた)、
これも初日にはなかった氷魚くんの「歌います」宣言、歌い終わった時の赤くなった喉と耳(かわいいが過ぎる)、
チャーミングでサービス精神旺盛な二人に沢山笑顔をもらい、胸がいっぱいになる。


初日は大好きな二人と時間を共有できる嬉しさと緊張、初めて対峙する物語を理解しようと思考優位になってしまう感覚で感じ取れなかった二人の表現を、2回目の今日少しは拾い集めることができたように思う。
氷魚くんと佐助さんも回を重ねる毎に変化することを楽しんでいるかな。

楽しみに待つ時間が長いのに、もう後3公演を残すのみ。幕開けから千秋楽まで応援し続けられる(であろう)状況に感謝して。初日から8公演目までの変化を思うと、あと3回でまたどれだけメリハリがつきピントが合っていくのか、大きな期待と次で最後だという寂しさで気持ちの置き場が見つからない。
あと1回、千秋楽でまた共有できる幸せを大切に手の中であたためる。





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