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5打数5安打

2025年 2月

 イチローが大リーグの野球殿堂入りした。日本人選手として初めての快挙らしい…。
 彼は51歳、我らが奈緒ちゃんと同い年だ。

 障がいがあり、長くは生きれないと言われた奈緒ちゃんを50年にわたり撮り続けた「奈緒ちゃんシリーズ」にも、自慢したい快挙の連絡が入った。「奈緒ちゃんシリーズ」第5作『大好き〜奈緒ちゃんとお母さんの50年〜』がキネマ旬報ベストテン(以下 キネ旬ベストテン)に入賞、第1作から5作まで全て入賞という、シリーズ作で劇映画も含めて他に例のない快挙らしい。

 1995年『奈緒ちゃん』   第2位
 2002年『ぴぐれっと』   第8位
 2006年『ありがとう』   第5位
 2017年『やさしくなあに』  第3位
 2024年『大好き』     第6位

 もちろん、賞を取るために映画を創っているわけではない。「奈緒ちゃんシリーズ」はもともと、奈緒ちゃんを励まし、奈緒ちゃんの家族を励まそうという思いでカメラを回し始めたホームムービーのような映画だ。
 それが気が付いたら50年近くの記録になっていった、というシリーズ作品だからね。

 でも、多くの映画人がキネ旬ベストテンに入ることを、ひとつの目標にしている中で、シリーズ5作が全て入賞というのはたいしたもんだ。5打数5安打はイチロー並み、というかオオタニ君並みというべきか、自慢していいと周りの皆におだてられた。

 自分自身が、ちょっと自慢してもいいかな…と思うのは、映画生活51年で、30本に及ぶ長編映画を創り続け、そのほとんどが自主製作・自主上映で創られた、ということだ。
 つまりスポンサーやテレビ局の制作資金で創られたのではなく自力で創り、上映も配給会社にゆだねるのではなく自力で上映先を開拓し、観てもらう活動に取り組んできたのだ。もちろん、多くの方々の力を借りて、迷惑を目一杯かけ続けてのことだけど…。

 「奈緒ちゃんシリーズ」だけでなく、他の作品も多くの賞を頂いてきた。30作に及ぶ作品を遺すことが出来て、同時に多くの借財をも遺してしまっている。
 あと何年生き、何作映画を創ることができるかワカラナイけど、命ある限り創り続けようと思う。ボロボロになってもね…。借財を返さなければということもあるし、クタバリそこないの自分に、どんな映画が創れるか、楽しみじゃない。

 で、「まだまだあきらめない。粘って粘って、粘るだけしか武器はないのだから…」という思いを抱き続けた友人「えんとこ」の遠藤滋のように、映画創りに、しがみつくようにして生き続けるのだ。

 “映画『大好き』を、
 「いい映画だね」
 「すばらしい監督さんですね」
 で終わらせるのはもったいないなあ…。
 
 『大好き』は、
 閉じていこうとする社会を開いていく可能性を、
 「人間する」ことを思い出させる可能性を
 持っている…“

 と、友人から「奇跡が起きるかも」の追伸が届いた。

 その気になって、
 奇跡を起こしたい。


(かんとく・伊勢真一)



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