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2024年 5月 50年がかりの新作『大好き 〜奈緒ちゃんとお母さんの50年〜』が、やっと出来上がった。 それも、完成上映会の二日前に最終の録音作業を終えてゼーゼー息を弾ませながらゴールに駆け込んだような塩梅だ。 よく「伊勢さんは粘り強く時間をかけてドキュメンタリー映画を創りますねえ…」と感心されるけど、実は何事もスローモーで優柔不断な性格が成せる技で、ただただ仕事が遅いだけなんだ…。本当は、完成させたくない、という思いが強いのかもしれない。 本格的にスタッフを組
2022年 11月 「わたくしは死んではいけない わたくしが死ぬとき あなたがほんたうに死ぬ」 つい最近の新聞紙上で、永田和宏さんという歌人が亡き妻のことを歌った短歌が、目に止まった。 丁度インドネシアでの、自作『いまはむかし 〜父・ジャワ・幻のフィルム〜』の上映巡業から帰った頃だった。戦時中、父が三年半にわたってインドネシアで国策映画を創り続けたことを描いた映画だったので、もう遠い昔に死んでしまった父が行きたかったに違いないインドネシアを、80年ぶりに再訪する旅
2022年 9月 夏から秋にかけて、週末巡業が続いた。 どこも、とてもいい雰囲気の上映会だった。 お客さんの人数は多くはないけど、上映して良かったと思える、いい集まりばかりだったように思う。 新作『いまはむかし』は公開して一年経ったけど、何故か、ここへ来てメディアが盛んに取り上げてくれている。「戦争」に対する危機意識のようなものが拡がっているからかもしれない。 国民の多くが反対しているにもかかわらず、強引に元総理の「国葬」をやるゴリ押しの政治姿勢が顕著になったのは、
2022年 6月 5月に旅立った学生時代の友人、映画『えんとこ』『えんとこの歌』の主人公・遠藤滋が、もっとも気に入っていた自作の短歌のひとつ…。74歳にして上梓した処女歌集のタイトルは、『いのちゆいのちへ』と名付けられた。「わたしのいのちから すべてのいのちへ」ということだ…と、歌集のあとがきに書かれている。 「ありのままのいのちを肯定し、生かし合う。たとえそれがどんな姿をしていようとも」と言い始めたのは、遠藤の障がいが進行して寝たきり暮らしを始めた頃、もう35年ほど
自慢の友人が、又ひとりいなくなった…。 遠藤滋、映画『えんとこ』『えんとこの歌』の主人公。脳性マヒで三十数年間寝たきり暮らしで、介助の若者たちと「いのち」を生かし合う日々を送ってきた。 75歳に成ろうとしていた。 その日、息が止まり、もう駄目かもしれないという状況で耳元に大声で「エンドウ!!」と呼びかけた。介助者のみんなも「エンドウさん!!」と口々に叫んだ。 そうしたら、振り返って戻ってくるように息を吹き返した…。聴こえたんだね。 それから枕元で珈琲をたて