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(7) ペット

 ライナスの毛布という、タオルケットやぬいぐるみに対して強い執着をもつ一種の依存症がある。僕も小さい頃から大好きなタオルケットがあって、流石にもうボロボロになってしまったから枕元に置くのは辞めたけれど、つい5年くらい前までは強烈に依存していた。

 ペットという見出しでこれを告白したのには訳がある。それは小さな頃から依存してきたタオルケットが、僕にはある種の生命体に見えていた、つまりペット的な役割を果たしていたからである。イマジナリーフレンドとライナスの毛布を合体させた小悪的なタオルケットが僕の枕元にはずっと居た。

 幼い頃は耳をすませば声が聞こえた気がする。彼は常に僕のことを慰めてくれた。ベッドで泣く時は毎回一緒に泣いてくれた。1人で寂しい時も、タオルケットに触れていれば、気持ちが落ち着いた。

 こうして書き出してみると、僕は強烈に依存していたのだと気がつかざれる。ブランケット症候群について調べると「病気」だとか「発達障害」だとか謂れのないサジェスチョンが出てくるが、調べれば調べるほど多くの人に大小同じようにある精神的依存状態らしいので、読者の方で安眠毛布がある人はあまり気にしないで欲しい。普通は大人になるにつれ外れるらしいけれど、僕もまだ完全に外れた訳じゃない。触れていなくとも家の中にあるという安心感を前提に生活している気がするし、引っ越すとしたらボロの状態でもジップロックに入れて持っていく気がする。22歳男子大学生がこんな調子なんだから、別に誰も恥じる必要はないと思う。

 ペットという表題でずっと無生物について書き連ねているのもずいぶん変な感じだ。生物の切り口からも考えてみよう。うちでペットを飼っていたのは小さい頃で、灰色のネコがいた。名前はネコ。ただ小学校低学年の時に死んでしまった。すごく悲しかったと思うけど、記憶に蓋をしてしまったのかよく思い出せない。ただ昔の写真を見ると度々ネコが写っていて、なんとなく物悲しい気分になる。


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