赤いレコード
1960年生まれの私の耳に残っている最初のヒット曲は「帰って来たヨッパライ」だ。小学校低学年のころ、クラスのみんなが全員知っている爆発的な人気曲だった。
この楽曲が収録されている、ザ・フォーク・クルセダーズのアルバム「紀元貮阡年」は、赤い色のアナログレコードが一時的に出回っていたころの商品。すでに西暦2000年ですら遠い昔になってしまったわけだが、このアルバムタイトルは「紀元貮阡年」だ。発売された1968年には、メンバーが遠い遠い未来を思い描きながら、命名したのだろう。
大ヒット曲「帰って来たヨッパライ」は、酔っ払い運転で死んで天国に行ったのに、その天国を追い出されて地上に戻ってくるという、とんでもなくふざけた曲だ。
歌詞を通して追ってみると小学生に聞かせるには、ちょっとけしからん楽曲でもある。ただ、小学生にとっては、最近PPAPが流行ったときと同じように「オラは死んじまっただ〜」というフレーズが頭に刷り込まれ、つい歌ってしまうのだった。そして、真面目な性格だった私の父親ですら、この歌に登場する天国の神様のフレーズ「もっと、まじめにやれ〜」を私に言ったりもしていた。
今なら飲酒運転を助長する歌だと言われて、地上波テレビから締め出されそうだが、私はテレビでも確かにこれを見た。
さすがにYouTubeで当時のオンエアの映像は見つからなかった。私のかすかな記憶では、3人のメンバーが直立不動のまま、画面が揺れている映像のバックにレコードの音を流していた映像を見た。レコードのとおりの声で歌うことができない曲なので、クチパクどころか、ただ立っているだけだったのだろうか。
このグループ、今カラオケで歌っても美しい「悲しくてやりきれない」や、朝鮮半島の分断を歌った楽曲に日本語の歌詞をつけた「イムジン河」という名曲も残している。
これからも、あの日に帰りたい昭和ホームシックのみなさまに向けて、いろいろな文章を書いていきます。