安芸の宮島 厳島神社の能舞台を見ながら考えるスタジアム・アリーナ 〜スポーツ空間と第四の壁〜
エモさ溢れる厳島神社
先週末はマツダスタジアムのカープ戦観戦予定でしたが大雨で中止になりました。せっかく広島まで来たので宮島まで足を運んで厳島神社を参拝
さすがの世界遺産。多くの観光客で賑わっていました。厳島神社は平安時代の寝殿造と呼ばれる様式で作られており、張り巡らされた回廊をめぐりながら参拝します。宇治の平等院鳳凰堂などと同様左右対称のシンメトリーな構成で、神社としてのシンボリックな外観と奥へ奥へ伸びる回廊が独特の雰囲気を醸しています。
厳島神社のある宮島はその名の通り瀬戸内海に浮かぶ島であり、その昔は船で神社まで向かい鳥居をくぐって参拝していたといいます。エモい!
厳島神社には能舞台が設置されており、こちらもまた三方を海にしたここでしか見られない舞台となっています。
能は日本独特の独創的な世界観を展開しています。橋掛かりと呼ばれる廊下がかけられ、舞台そのものが別世界として表現され、橋そのものが此岸と彼岸、この世とあの世を繋ぎます。
こうした舞台芸術では、舞台と観客の間に見えない壁が生まれます。第四の壁なんて言われますが、能に限らずオペラ劇場や演劇などのプロセニアム型の観覧場などでも見られます。
一般的には門構え(プロセニアムアーチ)」をつくって第四の壁を明示しますが、厳島神社の能舞台では取り囲む海や回廊の支柱が複合的に重なって、舞台を別世界と意識させます。うーん、見事ですね。
スタジアム・アリーナの第四の壁
同じ観覧場でもスタジアムやアリーナのようなスポーツ空間には第四の壁を思わせるものはありません。あるとしたらフィールドとグラウンドを分ける境界となります。
フィールドの見せ方や空間演出として敢えてフレームをつかう場合はあり、マツダスタジアムでもあえてフレームで分けることで第四の壁を観戦者自身に超えさせる演出があったりします。
広島駅からプロムナードを登った先にあるゲートブリッジ。敢えて対称的な柱配置と張弦梁としています。まずはここで球場の外から非日常のスタジアムに入り、入った瞬間にグラウンドがワッと広がる体験の連なりを作っています。
メインコンコースの内野側には柱が並んでいますが、列柱によってグラウンドと内野席、コンコースが切り分けられ第四の壁を作っています。観戦者はこの見えない壁を超えることで応援モードに切り替わります。
コンコース上部のアーチが片側だけなのも、グラウンド側への意識の流れを意図してたりします。設計検討時には両アーチにしてトンネルのようなメインコンコースの模型も作りましたがボツとなってます。
マツダスタジアムで立ち見が多いのは圧倒的にこのメインコンコースの端部分で、見えない壁から落ち着いて向こう側のグラウンドを見る、そんな体験を作っています。
一般的に観覧場では第四の壁を舞台と観客席を分ける見えない壁をとして扱いますが、ことスポーツにおいてはガチ応援とユル応援の境界や応援と飲食との切り替えなど、体験シーンの切り替えに使うのが効果的なように思います。
演劇は観覧場の内外がはっきりしていることもあり、そこには明確に「見える壁」が存在しています。見えない壁を超えて日常と非日常の間を行き来する楽しさがスポーツ空間の醍醐味だと思います。
(了)
エモすぎる世界遺産、宮島の厳島神社に皆んなも行こう!
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