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金本位制への合衆国の姿勢に対する疑いは深まった ゴールド99
1890年、ロンドンでベアリング危機が発生した。
同じ年、合衆国議会はシャーマン銀購入法を可決した。これにより、合衆国が金本位制へ操を立てているかどうかが大きく疑われることとなった。
そして、シャーマン銀購入法が可決されたのは最悪のタイミングでもあった。
合衆国から金が流出
ベアリング危機により、ヨーロッパ人は保有していた合衆国の有価証券を現金化した。
そして、ヨーロッパ人は現金化した売却代金を自国通貨と交換した。そうすると、最終的にヨーロッパに金が戻ってくることとなった。
つまり、合衆国から大量の金が流出したのだ。この金の流出により、合衆国財務省の金準備はとてつもなく減少してしまった。
再び自然が合衆国を助ける
しかし、再び自然が合衆国に援助の手を差し伸べた。
1891年、ロシア南部が小麦の凶作に見舞われた一方、合衆国は史上最高の豊作となった。
この自然の助けにより、合衆国からの金の流出は食い止められた。
しかし、金は流出した
しかし今回、自然が合衆国を助けてくれた期間は短かった。
1892年には、再び金の流出が始まった。
財務省の金準備は議会が意図していた最低水準をかろうじて上回っていたが、政府の金による支払いを全て停止する以外に選択肢はないと結論した。
この決定により、国民と外国人の間で金への需要が増大し、合衆国の金本位制への姿勢は更に疑われた。
シャーマン銀購入法を廃止したことだけだった
さらに、金準備は減少した。
鉄道会社、銀行、企業が次々と倒産に追い込まれた。
株式市場全体も低迷し、取り付け騒ぎも起こり、国民の不安は高まった。
このような大惨事に直面して、政府がとった唯一の救済策は、1890年に制定したシャーマン銀購入法を廃止したことだけだった。
ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン