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箱男がついに公開された

石井岳龍が、いや,石井聰亙が『箱男』を撮る。しかもドイツとの合作で!と言うニュースを聞いたときは本当に驚いた。正直、『狂い咲きサンダーロード』『爆裂都市』『逆噴射家族』あたりで、なんとなくブーム的な人気に翳りが見えていたし、作られる作品の公開規模もどんどん小さくなっていた。それはちょうど日本映画が観客動員を見込めなくなった時期でもあり、石井聰亙の人気というよりも邦画人気そのものの凋落だったのかもしれない。



そんな時に、あの石井聰亙が、あの箱男を、なんとドイツで撮る!というニュースは本当にワクワクするニューだった。しかも、その制作がクランクイン前日に取りやめになる。なんと呪われた作品なんだろうと思った。もう、石井聰亙が『箱男』を撮ることはないだろうと、石井ファンでさえ思っていた。

確かに撮れなかった。石井聰亙は撮れなかった。でも、石井岳龍が撮った!ほんと、ワクワクする気持ちを抑えられずに劇場に向かう。頓挫した企画でも主演だった永瀬正敏はちゃんと老けたけど、箱男をふさわしいままなんだろうか。ドイツロケでなくても大丈夫なんだろうか。いろんなことを考えながら見た。

面白かった。執念がちゃんと実っていた。ちゃんと安部公房だった。安部公房の作品に漂うインテリゲンチャ臭も見事に反映されているので、どこかサラリーマンNEO的な頭の良さがチラチラして嫌味ではあるけれど、それはそれで、だって安部公房なんだもん!ということなんだろう。

正直、ラストの一言はグッと言葉を飲み込めば面白かったのに、とは思うけれど、やっぱり「生きてるものはいないのか」をそのままタイトルにしてしまう人なので、そこはガツンと言ってしまう。

というわけで、冷静ではないので、後々評価は激変する可能性はあるけれど、ひとまず、公開おめでとうございます!と書いておきたい。

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