ハレとケ - 持続可能性を高める地域への関わり方を考える-
ハレの日という言葉を聞いたことがある方はたくさんいらっしゃるかと思いますが、ケの日という言葉はいかがでしょう
ハレとケ
対をなすとされる概念
日本人の生活リズムを表現する言葉です
この『ハレ』と『ケ』の考え方が、コミュニティの持続可能性を考える上でとても重要になるのではないか
今回はそんなお話です
もしかすると作業療法士の方はピンときやすいかもしれませんが、地域づくりに関わる他の職種の方にも知っておいてほしい概念ですので、よろしければ間もなく大みそかとお正月というハレの日を迎える年の瀬のこの時期にご覧いただけると幸いです。
▼『ハレとケ』とは
・ハレの日、ケの日
小さな頃、お正月や節分などの節句、誕生日。
皆さんの思い出の中には1年の節目節目の特別な日はあるでしょうか。
思い出してみてください
いつもより豪華な、腕によりをかけたような食事が並んで、みんなでそれを囲んでワイワイと食べる
もしかすると親戚が集まったりしているかもしれない
いつもとは異なる何か特別なイベント
非日常
そんな特別な日を日本では『ハレの日』と呼びます
漢字にすると『晴の日』
特別があれば特別でない日ももちろんありますよね
当たり前、いつも通り、日常
こういった日を『ケの日』と呼びます
漢字で書くと『褻の日』
『ハレ』と『ケ』
『非日常』と『日常』
『特別』と『当たり前』
・ハレとケとは
ハレとケの概念を提唱したのは柳田國男さん
昭和初期の官僚で民俗学者の方です。
柳田は『日本人とは何か』という問いを探し求めた方だと言います。
ハレとケの定義については明確なものが見つかりませんでしたが、次のようなものを見つけることができました。
ハレとケとは単に、日常か非日常か。日常感の有無にしかすぎない
とのこと
▼専門職が地域に関わる時、それはハレか?ケか?
さてご覧くださっているみなさんに問いかけたいと思います。
昨今では、地域包括ケアシステムの構築や進化・深化のために、医療・介護・福祉専門職も地域づくりにより密接に関わることが重要視されていますね。
※地域包括ケアシステムについては、拙著の下記記事をぜひご覧ください。
専門職として地域に関わりを持つ時、地域住民目線でみるとその場面は『ハレ』でしょうか?それとも『ケ』でしょうか?
この記事を読んでくださっている方はおそらく地域支援事業などの地域づくりに関わる専門職の方が多いのではないかと思います。
なので、地域住民の方と接点を持つことが多い場面であろう地域サロン活動の支援の場面を例にあげてみましょう。
普段、医療機関やその他施設等に勤務されていることが多いはずの専門職。
その方たちに地域サロンの方々が自分たちのサロンで講話をしてほしい、運動や体操などを指導してほしい、健康チェックに来てほしい。
そんな依頼が来ることが多いように思います。
おそらくサロンを運営されている方々はいつもとは違う特別な手続きや方法で依頼をして、あなたをお迎えする準備をしているはずです。
どうでしょう?
この時点でもう『普段の活動とは違う特別な日』になっていないでしょうか。
そう
多くの場合、専門職が地域住民に関わる場面は地域住民にとっては良くも悪くも特別な日。
ハレとケの概念でいうとハレの日になっているはずなんです。
専門職側が用意する地域活動の場に参加していただく場合も同様であるように思います。
どちらが良いということはないと思います。
実際にハレの日はケの日に徐々に失われていった活力を非日常の場面を通じて回復する。リフレッシュするような役割があるとも説かれます。
そういった意味では、専門職が地域に関わる非日常感は地域に新たな彩りを与え活気づけることにつながります。
ただ、地域づくり、特に住民が相互に支えあう地域づくりの視点においてはケ(日常)も重要です。
▼ハレが常態化すると、それはケになる?
地域サロンや地域づくりのイベントなどを実施するにしても、その大きな目的は『地域住民の健康や幸福に寄与するような活動』だとか『地域住民同士の交流によるつながりづくり』だったりするはず。
それは言い換えるならば
地域サロンへの関りや地域でのイベントを通して、そこに参加する地域住民の日常生活にも効果を及ぼしていくことを期待しているはずです。
つまり、ハレの催しを通してケの日常にも波及効果を与えていきたい。
そんな思惑がある場合もありますよね。
例えば、こども食堂や地域食堂というハレの場でできた人と人とのつながりを日常というケのなかで活かすように意識づけをしたい。
例えば、地域サロンの場で実施した体操などが、日常生活というケのなかでも実践され汎化されていくように、継続することの大切さに気づいてもらえるようにお伝えしたい。
地域住民の日常生活(ケ)に好影響をあたえるために、自身の関りそのものを非日常の特別なもの(ハレ)として提供することもできるでしょう。
一方で、すでに非常に良い取り組みを実践されている方々に対して、特別感のある関りをする(ハレ)ことそのものが、その方々の日常的な取り組み(ケ)に不要な影響を与えてしまう可能性もありますね。
▼おわりに
柳田國男さんが昭和初期にハレとケの概念を提唱したころに比べると、現代社会ではいろいろな場面でハレの場に出くわすことが増えています。
ハレとケは、相互依存的に循環をなす概念であるように思います。
ハレばかりでは、特別感が薄れ、日常(ケ)になってしまうでしょう。
一方、ケばかりでは地域での生活に彩りが足りないかもしれません。
専門職のみなさんが地域との接点を持つときは
関われる頻度や、自身の立場、お伝えできる内容、関わる地域の方々がどのような実践をされているか、どういった方針をお持ちなのか
などによって
ハレの場として関わるのか、それともケの場として関わるのか
をよく吟味していくべきでしょう。
『ハレ』と『ケ』
ぜひ地域での実践の際に思い出してみてください。
それではまた
次の機会に