恋のやり方
ツクツクボウシが鳴いていた。この前星を見に近くの公園に行った。時刻は夜の11時過ぎくらい。場違いな彼の声が辺りに響き渡る。一匹だけで、時間の感覚も狂ってしまったのか。今年の夏は夜中に鳴くセミの声を何度も聞いた。他人と違うことをして興味を引いているのか、はたまた余って焦っているのか。異端な彼は、残り短い命を全うしようともがいている。私と違って。
ここ最近、逆にあまりマッチングアプリの話題を聞かなくなってきたように感じる。ようやく世間に認められたのだろうか。マッチングアプリの珍しさを感じない。私が大学生の頃は周りの人間達はこぞってアプリの話をしていたものだ。尤もまだCMなんかではよく見かけるのだけれど。
私の大学生の頃の友達にもマッチングアプリを使っていた人がいた。今度知り合った人と食事に行くなど聞いた覚えがある。彼はマッチングアプリで成功した人だった。無事?彼女ができたようだった。今でも仲良くしているらしい。直接聞いた訳では無いけれど、インスタを見れば分かる。前にも言ったけれど、どうか幸せの最大値を見せないで欲しい。私が死ぬから。
それはそうと、私はマッチングアプリを信じていない。最近じゃそんな人の方が少数派なのかもしれないが。まだちょっと、下に見ていると言ったら聞こえは悪いけれど、信じられない自分がいる。くだらないと思ってしまっている自分がいる。とはいえ、現実で出会いがあるからという訳では無い。もちろん出会いなんてない。会社と家の往復の毎日。社内にも同世代の女性はいない。恋愛感情なんか抱くはずもなく。
学生時代の彼女と別れてしばらく経つ。社会人になると恋愛が難しくなるとは良く言ったもので。出会いもなけりゃ、行動力もない。向上心もない。やる気もない。コミュ力もない。生きる気もない。こんな奴がモテる訳もない。そんな日々を過ごしている。もちろん、彼女がいらない訳では無い。そりゃ機会があれば恋愛もしたい。そんな機会が無いから。でもマッチングアプリは信じられないから。少し意地になっている節もあるかもしれないけれど。どうしてもチラつく。こんなものに頼っていいのかと。
来週で24歳になる。そろそろ同年代が結婚しだしそうで怖い。特に結婚式に呼ばれるくらい仲のいい友達はみんな田舎住みだから。田舎は結婚が早い。彼女がいる奴もいる。明日連絡が来ても別に驚かない。やっぱりって。後はタイミングだけ。私は帰る気は無いけれど、今更地元で恋愛をする気にもなれない。気持ち悪いから。