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粋なヤジリストになれたかな?
地球上の大気は、酸素と窒素と“ことば”でできている。
これは主人、天野祐吉の持論です。
と言っても、天野祐吉のオリジナルではありません。
「地球上の大気は酸素と窒素と広告でできている」というロベール・ゲランのモジリです。
ただ、主人が言うには「ま、モジリではあるけれど、広告もことばの内、ぼくの言い方のほうがずっと正確じゃないかと思うよ。」だそうです。
グラフィック社から今月、『天野祐吉ことば集 広告の見方 ものの見方』が出版されます。
この本は、酸素と窒素と天野祐吉のことばでできています。
ウソだと思うのなら本屋さんで手にとって本のページをめくってみてください(笑)。
きっとヒューッと、天野祐吉のことばが飛んでくると思います。
粋のいいヤジを飛ばし続けたい。
最期までブレずに、天野祐吉なりの粋のいいヤジを飛ばせたんじゃないかなと思ってます。
ジャック・アマノン。
この名前で原稿を書いてたときもありました。
天野、天邪鬼。だから、ジャック・アマノン。
そうクスクス笑って教えてくれました。
突然、この世界からいなくなり膨大にある本棚の中を整理していると、本と本の間にちょこんとはさまってた2冊の日記帳。
天野祐吉が中学生の頃、そして高校生の頃に書いた日記でした。
戦前、戦中、戦後に書かれた主人の日記。
1950年にジャック・アマノンが誕生してました。
あぁ、ブレてない!
この頃から、天野祐吉は天野祐吉だったんだね!
読んじゃいけないと思いつつも、大事に残してたあなたのせいよ。
きっと読んでもいい、いや、もしくは読んで欲しかったんでしょう?
そう勝手に解釈して、パラパラ読んだりしました。
「みんな晴れが好きで曇りの日は嫌い。でもぼくは曇りの日も好きだ。
曇りがあるから、みんな晴れの日が好きだと思う。だからぼくはどっちも好きだ。」
そう書かれてた文章を読み、妻ながら「おっ。さすが祐ちゃん!」と拍手したかったです。
当たり前のように一緒に時間を過ごしてた。
ずっと面白くて、幸せな時間が続くと思い込んでた。
主人も私も、そういう時間を突然奪われるなんて思いもしなかった。
そして、ひとり取り残された私を助けてくれたのは主人の“ことば”でした。
主人の本をパラパラとめくる。
どの本とか、どのページとか関係なく、ただパラパラめくる。
そこに書かれてた主人の文章が、泣いてばっかだった私に「おいおい伊佐子。そこはこう考えればいいだろう?」と、ヒントというか答えをくれるというか?
私たち夫婦は無神論者ですが、う〜ん、、手離せないバイブル?みたいな感じ。
あと、世の中で起こってることについていろんな人から「天野さんだったらなんて言うんでしょうね?」と聞かれることが多く、そんな時もパラパラと主人の書いた本をめくったり、ふと目についた主人のコラムを読んだり、主人が録画してた本人出演の映像を観て、「あ、そっか。そういう見方ね」と主人がひょいと教えてくれる…
あまりにもひょいすぎて、考えすぎてた私って一体なんなの???と思うくらい、ひょいっと”ことば”を投げかけてくれるんです。
天野祐吉を知らない人の方が圧倒的に多いけれど、知らなくたっていいんです。
「なんだ?この文章?オモシロいなあ。」
「ふ〜ん、こんな人がいたんだなあ。」
と、パラパラ気まぐれにページをめくっていただければ嬉しいです。
コロナ禍、そして戦争と息苦しさが続き、アップアップと窒息しそうな日々。
そんな中で、ちょっとでも力が抜けて息がしやすくなる“ことば”がありますように。
そしてこの本はグラフィック社の編集者さんが、天野祐吉が1970年代から2010年代にかけて残してた“ことば”たち(書きことば、話しことば、天野祐吉という名前を使わず偽名で書いてたコラム)の中から約180の短文を抜き出すという大変な作業をしてくださいました。
ありがとうございます。
いつも、大切なことは何度でもしつこく繰り返して言うんだよ。
そう主人は私たちに言ってましたが、ブレずに繰り返して伝えてきた天野祐吉の“ことば”を吸ってみてください。
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