【浄化槽】浄化槽も人間もガス抜きが大事。【徹底解説】
おはようございます。
最終的に結構なボリュームの記事になりましたが、
その分浄化槽のことを知らない方も理解できるように配慮したつもりです。
徹底解説と銘打ってあるのはほぼジョークです。
長文にはなりますが読み進めていただけると幸いです。
(全部書いてから序文を書いてます)
挨拶
去年の5月から浄化槽の管理その他をする会社に勤めておりまして、
8月に浄化槽管理士の資格を取らせていただき、
めでたく11月から一人で点検を回っている次第です。
まだまだ新参者でございます故、諸先輩方にはご教示願いたく存じます。
現在私がメインで回らせていただいておりますのが、
市が行っている浄化槽整備推進事業により設置されている浄化槽でございます。
ざっくりと調べた様子では市町村設置型では高度処理型の浄化槽が設置されていることが多く(もしかしてすべて?)、読んで字のごとく、処理が高度なのです。説明は全く高度ではないです。
もっと具体的に言うと、BOD除去率だけでなく放流水における窒素やリンの含有も少なくしてありますよーという基準が設けられているものになります。
BOD
→Biochemical Oxygen Demandの略。生物化学的酸素要求量を英語にしたもので、水分中の微生物が有機物を分解するのに要する酸素量のこと。
水が汚いと分解にそれだけ酸素を必要とする為、BODが高ければ高いほど水が汚いと言える。
窒素とリン
→NitrogenとPhosphorusなので、それぞれNとPで表される。
窒素もリンも植物の生育を助ける為、それ自体が悪いわけではないが、こと水質においては悪影響を及ぼす。
富栄養化が進むと藻類が繁殖してしまい、景観を損ねてしまう他、藻類による水質汚染、嫌気化による水棲生物の死、死骸による水質汚染…と良いことなしである。
脱窒はぼんやりと理解してますが、脱リンについては正直理解していません。嫌気処理と好気処理を繰り返すことでどうにかなってると認識しております。
ということで本題の「ガス抜き」に行く前に浄化槽について徹底解説(笑)をさせていただきます。
浄化槽の処理の流れ
「流入→固液分離①→好気処理→固液分離②→消毒→放流」
という流れが基本となっております。
固液分離
→文字通り。個体と液体とを分離させること。
基本的にほっとけば重い個体は沈んでくれる。
流入
お家から出た排水は水道管を通って浄化槽へと流れていきます。
アパートでも戸建てでも構いませんが、おうちの周りで
「おすい」と書かれた白い蓋を見たことはありませんか?
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↑最近の一般家庭はこのタイプが多いんですが、いかがでしょうか?
蓋を開けると水の通り道を見ることが出来ます。
(画像を探しましたが、家庭用の小さいものが見当たりませんでした…)
この通り道を「インバート(桝)」と言います。
設置基準を一部抜粋します。
ますは次の基準に従って設置しなければならない。
①排水の起点、合流点、屈曲点、内径や管種の異なる箇所、こう配を変える箇所、 その他維持管理上必要な箇所に設けること。
② ますの間隔は、排水管の直線部では排水管の管径の120倍以下(100㎜管の場合、 12m以内)とすること。
③ ますの蓋は堅固で耐久性のある材質とし、汚水ますは密閉蓋とする。駐車場など で車が通過する場所には鉄蓋等を設置すること。
というわけで、
・こっから汚水出るぞー!(起点)
・汚水が合流するぞー!(合流点)
・汚水が曲がるぞー!(屈曲点)
・道が広くなるぞー!(内径や管種の異なる箇所)
・汚水が落ちるぞー!(勾配を変える箇所)
ということでございます。
一般家庭の点検が多いためか、排水路の途中で管径が変わるパターンは見たことがありません。
恐らくいくつもの排水路が合流して管径を大きくする必要があるシチュエーションがあるのだと思います。
インバートも蓋を開けて確認する必要があります。
先輩は点検項目として次の3つを連呼してました。
・管の割れ→割れてると汚水が土壌に流出、土が浄化槽内に流入
・木の根の侵入→根が管を割ってしまう、管路を塞いでしまう
・停滞水→勾配不良で流れが悪いと脂が溜まって詰まったり…
というインバートを通って浄化槽の中に入ります。
固液分離①
インバートを通ってきた汚水は固液分離槽に入ります。
「沈殿分離槽」「夾雑物除去槽」「嫌気ろ床槽」「脱窒ろ床槽」など複数の形式がありますが、正直よくわかっておりません。
一番シンプルなのは沈殿分離槽でしょうか?特に何があるわけでもなく、流入水を落ち着かせて固形物を沈めて処理を助けます。
「ろ床」が含まれているものは、「ろ材」と呼ばれるプラスチック製?樹脂製?の…アレなんて表現すればいいんですか?ニトリで売ってる洗濯ボールみたいなやつ…が入っていて、ろ過を助けると共に、嫌気性微生物の生物膜が形成されることで嫌気処理を行っています。
ちなみに固液分離槽は2槽設けられていることが多く、
1槽目がろ材無し、2槽目がろ材有りというパターンもありますし、
1槽目と2層目でろ材の充填率が異なる作りをしています。
好気処理
ある程度固液分離したところで、好気処理に移ります。
所謂「曝気槽(ばっ気槽とひらがなで表記することがほとんど)」のこと。
現在製造されている浄化槽はもれなくばっ気工程があります(と思う…)。
その昔はばっ気工程を持たない「散水ろ床」や「平面酸化床」という方式もありましたが…
ばっ気をする際に接触材を用いる「接触ばっ気」や担体を用いる「担体流動」などがございます。
接触材
→目の細かいメッシュパネルみたいなやつが何枚か入っていたり、波状になって詰め込まれてたりする。
担体
→ちっちゃなスポンジだったり、短く切った塩ビ管みたいな見た目してたり、大きいのもある。
どちらも生物膜の定着を助ける役割がある。
担体流動の場合、いい感じに旋回している為、ついた生物膜が肥厚しすぎないという利点がある。
固液分離②
好気処理ではばっ気による旋回流が発生している為、それを落ち着けるために再度固液分離を行います。あまり大きくはないですがギリ肉眼でも見えるSS(Suspended Solid:浮遊物質、懸濁物質)を落ち着かせるわけですね。
この固液分離槽を沈殿槽というほか、処理水槽ということもあります。
先輩は、越流堰がある場合は沈殿槽、無い時は処理水槽と呼んでいます。
また、担体が充填されている生物ろ過槽や、同じく担体が配置されている高速固液分離方式がありますが、区別は存じ上げません。
…高速固液分離って西原ネオ様が言ってるだけ?
消毒
し尿中には当然のように大腸菌が含まれますが、その他病原菌を消毒するために水処理剤(よく「塩素」と呼びます)に触れてから放流されるように設計されています。
水の通り道に下端付近に穴の開いた筒があり、筒の中に水処理剤を入れることで、水処理剤が溶けながら放流に向かうわけです。
接触材や担体にも使用期限はあるのかもしれませんが、水処理剤はその比にならないくらい消耗品です。
大きなヨーグレットみたいな錠剤を入れるのですが、ゴリゴリに溶けていきます。溶けたら溶けただけ良いというものでもないので、筒のかさ上げをして水に触れる面積を減らすこともあります。
弊社で使用している水処理剤は「日曹 水処理剤」のZSTR、Z100、Z200です。STRは50mg、100と200はそのままグラム数です。
単独浄化槽ではSTR、合併浄化槽ではZ100を使うケースがほとんどです。
単独浄化槽
→し尿のみを処理する浄化槽。
現在は敷設することはできない。
厳密には浄化槽ではない為、みなし浄化槽と呼ぶこともある。
合併浄化槽
→現在敷設できる浄化槽はこちら。
し尿だけじゃなく、洗濯排水やキッチンの水も処理する。
放流
無事に消毒を終えて外に出ていきます。
自然勾配で側溝(開渠)や川に流れて行ったり、地下に浸透させたり自然に還します。
浄化槽の位置や側溝の位置によっては自然勾配で放流することが難しいので、放流ポンプ槽を設けて水中ポンプで放流するケースも珍しくありません。
適切に放流の管渠が整備されているか、放流ポンプが適切に稼働しているかも点検いたします。
「浄化槽にはガス抜きが大事」
こんなに浄化槽そのものの解説をするつもりはなかったのですが、
なんの知識もない状態で「ガス抜きが大事」という本題に入っても同業者以外はチンプンカンプンでしょうから…だいぶ時間を割いて書かせていただきました。
ということで本題です。
嫌気ろ床槽があるという話をしましたが、
嫌気ろ床は固液分離・夾雑物除去の役割があります。
あくまでも分離であって、夾雑物が別の空間に行くわけではないので
当然ゴミは溜まっていきますし、それを取り除くべくして清掃(汲み取り)をする必要があるわけです。
ちょっと話は変わりますが、換気扇ってあるじゃないですか。換気扇。
ガスコンロの上にあったりしますよね。あれフィルターつけてます?
うちはレンジフードカバーまではつけてないですが、デフォルトで金属の網みたいなフィルターがついてます。
あれ、普通に使ってる分にはそんなに目詰まりしないんですけど、
喫煙者の先輩のアパートはヤニで滅茶苦茶目詰まりしてるんですよ。
自分も喫煙者なので先輩の家に行ったら換気扇の下で吸いますが、
目詰まりの隙間からしか吸気しないんですよ。
確実に換気効率が落ちてるんですよね。
そ れ と 同 じ で す 。
嫌気ろ床も目詰まりを起こします。
詰まることでろ過してるので当然なんですが、
汚泥が、生物膜が、夾雑物が詰まることで流れが悪くなってしまうんです。
流れが悪くなったっていいじゃん?って思うかもしれませんが、
多分最悪の場合は排水管が詰まってお家の中に逆流します。
いや、実際にはオーバーフローで次の槽に移行すると思うので、
逆流するところまでいかないんじゃないかな…。
とはいえオーバーフローしているということは本来の処理工程を経ずに放流へ向かってしまうので、汚い水がそのまま出て行ってしまいます。
それでは浄化槽の意味がありません。
そこで点検業者の出番です。
といってもやることは簡単。
2槽目の嫌気ろ床を棒でつつくだけです。
なんで2槽目なのかというと、2槽目がよく目詰まりするからなんですが、
基本的に、嫌気ろ床のろ材の充填率は1槽目<2槽目なので、その分2槽目が詰まりやすいというわけです。
棒でつつくことでろ材がこすれて隙間からガスが出てきますし、生物膜が剥がれて水の通り道が出来ます。
これだけのことではあるんですが、ちゃんとこの作業をしないと浄化槽が適切に仕事をしてくれないので大事なことなんですよねぇ。
この作業をガス抜きと呼んでおりますのでタイトル回収でございます。
人生のガス抜き
皆様、ガス抜きしてますでしょうか。
ストレス社会を生き抜く皆様に於かれましては個々人で上手なガスの抜き方を習得されていることと存じます。
私、ガス抜くの苦手なんですよね。
趣味が無いわけではありませんが、趣味でストレスが溶けないタイプなんですよ。
福祉系の業界にいた時にコーピングという言葉を習いました。
一言でいうとストレスへの対処法のことですね。
コーピングは二種類に大別されます。
・情動焦点型コーピング
→お気持ちに焦点を当てたコーピング。
仕事で疲れたから友達と遊びに行く、など。
・問題焦点型コーピング
→ストレスの発生源を叩こうというコーピング。
パワハラ上司がムカつくから労基に行く、など。
この情動焦点型コーピングが苦手なんですよね。
そもそもストレスが溜まりやすい方ではないと思っているので、日々の嫌なことは直面してる瞬間こそ「嫌だなぁ!」と思いますが、過ぎてしまえば記憶にも残っておりません。
だからこそ自覚するレベルでストレスがかかっている時は本当に苦しい。
前にも書きましたが、嫌なことがあって気分転換に友達と遊んだあとに残る感情は「あの嫌な日々に戻りたくない…」なんですよ。
間違っても「さぁ!また頑張るぞー!」とは思えません。
だから結構気分転換してたのに鬱になったんですもん。
今は以前ほどのストレスはなく、それこそ定期的に友達と遊んでガス抜きをしているので、仕事に対してネガティブな感情は「お客さんの家覚えてねぇんだよなぁ」と「今日も汚れるんだろうな〜」くらいで大したものはありません。
やっぱりガス抜きって大事なんだな〜溜まりすぎる前に開放しないとなんだな〜と思う今日此の頃です。
というわけで本日のテーマは「ガス抜き」でした。
みんなもたくさんガス抜いてけ😎