見出し画像

深い森の中で

深い森の中で

樹々の間を
縫う様にある獣道は
水場へ続く道

蒸せる暑さの中
水を求め歩いて来たんだ

足元の木々の根は
苔蒸していて
水気の多い土が
足に付く

風が樹々の枝を
揺らす音が
子守唄の様で

樹洞で眠る者も
まだ
大人しくしている


深い森の中で②

川辺で
喉を潤した後

岩場で眠っていたみたいだ

空を見れば
陽が落ち始め

木々の陰の中から
黒く蠢く物達が
騷めき出した

樹洞で
眠っていた筈の
ミミズクは枝に留まり
空を飛ぶ鴉を見て

私は
連なる雲の筋を見てた

深い森の中で③

雲の筋の先に
星が瞬く頃

夜色を纏った私は
ミミズクに言う

歌を唄ってよ と

ミミズクは
葉擦れの音に合わせて
歌を唄う

夜風に乗って

ミミズクの歌が
森に流れて行くんだ

深い森の中で④

ミミズクが
一頻り歌った後

次は私に歌えと
此方を見るから
歌った

白い椿の歌を

私の声は
ミミズクみたいに
響かない

深呼吸して
呟く言葉は

向かい風に吹かれ
夜空に溶けてく

いいなと思ったら応援しよう!