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外界を絶ち 薄暗い部屋に独り 響くのは 本の頁を捲る音と ペンの音だけ 静寂の中で 自分の思考ばかりが忙しない 持ち出し厳禁の『禁書』 探し出した禁書の一文 移し綴られた文字を 無言で見返す 此の本に記された言葉が どれ程の 効果があるのか 試さないと 分からないけれど…
見えなくても気配は分かる だけど 此の眼で 表情を見れないのは もどかしい 歩き方や息遣いに 君の感情が透けて視える 皮膚が 部屋の様子を感じ取るんだ どうせなら 僕に 治る事の無い 酷い傷を付けれ良い 背中に押し当てた 君の手で皮膚を裂いて 僕の醜くい 心臓を刳り出せば良い
薄暗い部屋の 壁の中に閉じ込められ 僅かな穴から 何かの気配があると 声を掛けるんだ ねぇ誰か 其処に有る 一輪の花を取ってよ 触れてみたいんだ ねぇ誰か 甘い香りがするものが 近くに無い？ とっても美味しそうな 香りがするんだ ねぇ誰か 此方に来てよ ねぇ誰か… ねぇ…
ランタンがないと周りが見えない 古城の中 微かに聞こえる音を探し歩く 古い回廊の先に扉がある 重厚な扉を開けると 高い天井と 丸みのある部屋の造りが 聖堂を思わせる 正面の通路から 流れ出る黒い霧で 足元が見えない 黒い霧が流れる方から音が聞こえる 君は此の先に居るの？
外に出てみれば 空は曇り 秋風が吹いていて 金木犀が薫っている 季節が変わった事も 気付かずにいたのだ 自分の部屋の 窓辺の向日葵が 時が止まったままを 表しているかの様な 部屋の中の暗さが 余計に そう思わせる感じだと笑う 外の薄暗さに雨が降るのかな？ と空模様を見てみた
暗い部屋の中で 中身が無い者達の集い 蝋燭の無い燭台は 揺れる小さな炎に 暖かさを求め 華の無い花瓶は 美しき華の姿に魅せられ 潤いを欲し 人が無い服は 人の感情の変化を 気持ちの温もりを感じて いたいだけ 巻き貝は只､ 中身の無い者達に 波の音の相槌を返すだけだ
殺風景な部屋に 飾る為の フォトフレームを 買ってきて 何枚かの写真を眺める｡ それぞれに 想い入れが有るけど お気に入りの写真は やっぱり､ この写真だ｡ 一番目に付く所に 飾っておく｡
クリスマスの日になって 慌てて描いたツリー 今更､遅かったかな？と、 笑って壁に描いた絵は 部屋の中で 唯一 明るく感じる
