私に最も影響を与えたドラマ「奇皇后」

14世紀、高麗(コリョ:朝鮮)は強大な元帝国の支配を受け、元の命令により、莫大な貢物の他に、元の宮廷で女官や雑用係として酷使するための貢女(コンニョ)を多数差し出していました。
貢女は人権も認められない存在でしたが、陰謀渦巻く元の宮廷で貢女から身を起こし元帝国最後の皇帝トゴン・テムル(作中ではタファン)の皇后となった奇皇后(モンゴル名 オジェイ・クトゥク:作中ではキ・ヤン)の苦難の生涯を描く壮大なドラマです。
危機に瀕しても、死線を彷徨っても、そのたびに主人公ヤンは知恵と弁舌、度胸によって乗り越えます。
政治家を志す私は、この作品から測り知れない影響を受け、大きく成長しました。
今まで私はすぐに泣き言を言いました。
私にとって軍師であった母は、生前
「お前の泣き声を聞いたら、ぞっとする。
それでは生きていけませんよ。」
と言って嘆きました。
それでも治らなかった。
しかし、この作品を観て私は一切泣き言を言わなくなりました。

この作品を通して私は、国民を守ることこそが国の第一の使命である、と感得しました。
そして、国力が弱ければ国民を守れない、と痛感しました。

敬愛してやまぬキ・ヤンですが、たった一つ残念に感じたことは・・・宿敵である丞相ヨンチョルを倒すためにヤンはぺガン将軍の養女となり、皇帝タファンの側室になります。
しかし、悲願が叶って遂にヨンチョルを倒した時、それまで同志であった養父ぺガンは野心家の皇太后にそそのかされ、ヤンを敵視する様になっていくのです。
最後はぺガンがヤンの暗殺を企て、それを事前に察知したヤンの返り討ちに遭って絶命・・・私なら、今一度養父ぺガンに涙ながらに
「人買いにさらわれ売り飛ばされそうになった私を、あの時父上が莫大なお金で買い戻して下さった御恩は、終生忘れません。
父上は私の命の恩人であると共に、かけがえの無い同志でした。
どうか、野心家で陰謀好きな皇太后の讒言に乗らないで下さいませ。
皇太后との縁よりも、父上と私の親子の絆の方が遥かに強いと信じて居ります・・・」
と諦めずにぺガンに訴え続けたでしょう。
言葉による訴え、言葉による闘い・・・言葉というものの恐るべき力を私に教えてくれたのは、ヤンです。
だからこそ、今、私はこんな発想が出来る様になった。
だから、ぺガンの最期を嘆かずにはいられません。

もう一つ、気になることがあります。
あの中にノ尚宮(さんぐん)という女性が登場します。
タファンの父である先帝の死(丞相ヨンチョルによる毒殺)を受け容れられず正気を失った、と言われ、それ以上劇中では掘り下げられなかった女性ですが、私は、ノ尚宮は正気を失っていなかったのではないかと思います。
毒殺の隠蔽のため先帝ゆかりの者を皆殺しにしたヨンチョルの魔の手から生き延びるために正気を失ったふりをしていたのだと思います。先帝が死の間際に自らの指を傷つけて血で真相をしたためた血書を守り抜くために。
番組の冒頭 表示される様に、創作部分も多く、ノ尚宮もおそらく架空の人物であろうと思われますが、私は、優れた作品は登場人物が人格や魂を持った独立した存在であることをしばしば感じます。
だから、『架空の人物だから』『脇役だから』では片付けられないものを感じるのです。

私も命がけで国民を守れる人になりたい。
国政への道はなかなか開けませんが、ヤンの不屈の魂を思って、決して諦めないという決意を新たに致しました。

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