奢られたら、よいしょ?
職場の先輩と僕、後輩2人の4人でご飯に行った。
この食事会、楽しみではあったのだがやはり3人以上の集まりが苦手だった。
大人しくしていたら3人の間で会話が回り始めた。それに対して文句はない。なんせ3人以上が苦手なのだ。会話に入れず気まずいまま、早く帰りたいなぁなんて思っていた。
先輩は営業成績がいい。この食事会の少し前に大きな成果を出したばかりだった。同僚で集まれば自然と先輩の営業成績の話に移る。
後輩A「○○さん(先輩)、この間すごかったじゃないですか~」
後輩B「さすが○○さんですね!」
先輩「そりゃあねぇ。(満更でもない表情)去年の売り上げは〇〇〇万だったし、ずっと〇〇〇万超えてるから」
後輩A・B「すご~い!」
こんな会話を横で聞いていた僕は、ものすごく気持ち悪かった。今すぐにでもこの場をめちゃくちゃにして逃げたくなった。
確かに先輩の成績は他の人に自慢できるものではある。ただその先輩よりも良い成績の人はいる。
4人の中で群を抜いて成績がいいからといって、後輩にこんな形で持ち上げられて気分がいいのだろうか。
後輩も後輩である。いくら仲の良い先輩だからとて、そんな簡単に持ち上げることができるのか。みぞおちにぐっと力を入れて受け身を取っておかないと、吐き気を催してしまいそうだった。
ギブ・アンド・テイク。
僕は食事会の帰り道、1人でこの言葉を反芻した。
感嘆の言葉、尊敬の眼差し、嘘偽りなく言える純粋な心。この3つを先輩に与えないと、奢ってもらう資格がないのだろうか。
ご飯に連れて行ってくれた先輩に特別な思い入れがない。慕いたい先輩か、と聞かれたら真っすぐにはいとは答えられない。
人遣いは荒いし、先輩風を吹かすくせに大事なことを教えてくれない。「後輩からこんな風には見られたくない先輩像」の具現化のような人なのだ。
ましてや少人数の閉鎖的な空間で、一番先輩だからと調子に乗っている姿を見てしまったら、もうなんとも思わなくなった。
特段、尊敬も軽蔑もしない先輩を持ち上げなければいけないのであれば、食事をごちそうにならなくてもいい。
自分の血汗をにじませて得たお金をファミレスで、お腹いっぱい食べたほうが美味しく感じることができるから。