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趣味の話をしようか
10月、この変な時期に異動があった。僕は幸いにも異動する側にはならずに済んだ。
異動してきたのは1つ後輩の男の子。ついに僕にも後輩ができた。
異動してきて初めて車が一緒になったのは僕だった。彼の心中、お察ししますと申し訳なさと緊張とが入り混じっていた。
変わった環境の初日に、歳の近い先輩が無口でぶっきらぼうでつまらない奴だと、新しい職場で働く未来に不安を感じさせてしまう。
何事もファーストインパクトである。努めて、無口にはならないようにしよう。そう心に誓った。
彼はとてもフレンドリーだった。彼にもきっと気を遣わせてしまっていたのだろう。それでも車内で沈黙が気になることがないくらい盛り上がった。
初めましての相手にさらにパーソナルな部分に踏み込む質問。
それが「趣味あるんですか?」という質問。
身構えるほど難しい質問ではないように見えるが、僕にとっては「最後の晩餐はお寿司?ハンバーグ?」と同じレベルで返答に窮する。
毎回、無趣味と答えている。
以前はラジオ聴いたりテレビ見たりしてます、と答えていた。すると決まって返ってくるのが「どんなラジオ?テレビ?」という質問。○○って番組です、と答えると、ふ~んで終わる。
そんなニッチな番組を観たり聴いたりしているわけではない。少し知っている人であれば超人気番組である。それを何とも言えない空気感に作り上げる相手側が悪いと思っている。そんな雰囲気になるのが嫌で、今は無趣味と答えている。
アイドルを推しています、という返事は絶対に職場では発しないと決めている。
会社では、全く女の子にもてないキャラ(実際そうなんだけど)が定着しているから、そんな人間がアイドルの推し活を生きがいにしていると知り渡ればイタイ奴である。
推しにも、推し活をしている人にも大変失礼な話ではあるが、僕は胸を張れるほど余裕のある人間ではない。
noteに書いたこともあるが、他人に自分の趣味を聞かれ答えたら「こういう趣味の方がいい」「もっといろいろな人と関わりを持った方が世界は広がる」となんだかんだ言われたことがトラウマだ。
趣味を具体的に答えたら面倒なことになる。それならば無趣味だとぼんやりと、相手にこれ以上突っ込まれないような答え方をすればいい。
色んな趣味を持った方がいいよと言われれば、僕は「無趣味(仮)」のピエロを演じ「そうですね」「確かに」「勉強になるな~」の3種の神器を使いこなせば好印象は与えられないかもしれないけれど、悪い空気感にはならないだろう。
趣味の話をすることは、簡単に相手のプライベートなことを垣間見ることができる。
だけど僕はそれが一番怖い。
パーソナルスペース狭めな自分が趣味の話を自発的にし始めたら心を許した証拠である。
何が言いたいかというと、後輩君。僕が趣味の話をするまでもう少し待っていてほしいんだ。