『Just Because!』 ─ 止まっていた時間が再び動き出す
大人になると「恋愛ものの深夜アニメなんかもう観ない」という方々が多いのではないでしょうか。ラッキースケベに始まり、ヒロイン同士の主人公争奪戦に超常現象…脂がギトギトに乗ったコテコテの演出や脚本をこの歳で観るものじゃないというご意見も理解はできます。
そんな方々でも、まるで普通の恋愛ドラマを観るようにスッと馴染めるのが『Just Because!』だと思うのです。
2017年秋に放送された作品で、ジャンルとしてはラブコメというよりも、青春群像劇だと思います。アニメーション制作のPINE JAMは今期私的イチオシ作品の『かげきしょうじょ!!』や『ゲーマーズ!』の制作会社でもあります。
監督は『ガールズ&パンツァー』に絵コンテや演出で入っていた小林敦氏です。シリーズ構成の鴨志田一氏は『さくら荘のペットな彼女』『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』の原作者ですが、安心してください。この2作品とは異なり、『Just Because!』にはスケベも超常現象も一切ございませんので。
あいつを好きな君の横顔が、
たまらなく綺麗だったから──
『Just Because!』は、高校3年生の3学期──すなわちたった4ヶ月の短い間に起きた恋愛模様を描いた作品です。
中学の頃に福岡へ引っ越した泉瑛太(いずみえいた)が4年ぶりに神奈川へ戻り、転入した高校で中学時代の親友と再会するところから「止まっていた時間」が動き出します。
キャッチコピーのとおり、自分の好きだった女の子が実は親友のことが好きで──という現実でもあり得るようなシナリオで、高校生のリアルが描かれたような作品です。
そのリアルをより強調しているのは、コミュニケーションアプリ・LINEを使った演出でしょう。
既読がつかず不安になったり、相手に送る文言を何度も訂正したり。高校生でなくとも、一度は誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。他にもLINEを扱ったアニメはありますが、『Just Because!』はその先駆けとなった作品であり、何よりLINEを効果的に使った心情描写に長けていたと思います。
LINEでの表現以外にも、キャラクターたちの台詞もカッコつけ過ぎない、等身大の言葉で話すのも良いですね。
そして何より、キャラクターが皆不器用なのも好感が持てました。不器用なくらいが人間味があって丁度いいんだと思います。
また、本作は受験期の高校生の葛藤を描いた作品でもあり、まさに「受験アニメ」ともいえるでしょう。就職組や推薦組、受験組の間にある絶妙な距離感をリアルに描いています。そしてその距離感から生まれる恋愛模様が何ともほろ苦いのです。
また、感情だけで片付けるのではなく、自分たちの置かれている環境や将来を考えて結論を出す姿は妙に現実的なんですよね。
様々な想いが交錯して「すれ違い」が生じる本作は、最後の最後まで目が離せないシナリオになっていたと思います。逆に言えば、ちょっと尺に余裕がなかったような気もするので、あとプラス1話あれば収まりがよかったのではないかと思いました。
他にも、湘南を舞台とした本作には様々な企業の協力があり、ティザービジュアルから登場している湘南モノレールは言うに及ばず、ビッグカメラやキャノンまで協力しているのには驚かされました。
その一方で、本作ではアニメーションが崩れる場面があったりと完璧なアニメでないのも事実であり、一流の名作とは呼べないかもしれません。
しかしながら、観てもらえれば「確かに『Just Because!』は面白かったな」と言ってもらえるレベルの隠れた佳作であると思う次第でございます。
全12話でサクッと観れますので是非。