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『いぬやしき』 ─ 俺が悪役で、じじいがヒーローか


奥浩哉先生の代表作といえば『GANTZ』が挙げられますが、こちらも大変面白い。

2017年秋放送のスタジオMAPPA制作『いぬやしき』でございます。


主人公は犬屋敷壱郎(いぬやしき いちろう)という人物で、妻と高校生の娘、中学生の息子がいる58歳のサラリーマンです。

会社でも影が薄く、家族からもぞんざいに扱われていた冴えないサラリーマンの壱郎ですが、健康診断で胃ガンが発覚し余命宣告を受けます。

このことを家族に打ち明けられずにいた壱郎は、愛犬と公園を散歩しているところで宇宙人の事故に巻き込まれて死亡します。

宇宙人の手によって、壱郎は兵器ユニットを搭載した機械の体として蘇り、人を助けることで自分の存在意義を見出します。

一方、壱郎と同刻同場所で宇宙人の事故に巻き込まれ死亡した獅子神浩(ししがみ ひろ)という高校生の少年も機械の体として蘇るのですが、こちらは人を殺めることで人間であるという実感を得ようとします。

一度死んだ後の話を描くところや、第一話で2人同時に死亡する展開は『GANTZ』と同様ですね。


奥先生ならではのシニカルな脚本も健在で、本作のヒール役である獅子神浩から『GANTZ』のことをディスるような台詞が出たり、とある有名某アナウンサーの頭が吹っ飛んだり…と皮肉たっぷりの内容になっています。犬屋敷家の隣に立つ豪邸に住む「織田」先生と漫画家を目指す壱郎の娘・麻理を絡めた脚本もその一部でしょう。

奥先生の作品である以上、『いぬやしき』の世界観は『GANTZ』に類似する部分も多い訳ですが、本作の特徴としてはシナリオ全体通してのテンポが良いことが挙げられます。

全11話という他の1クール深夜アニメと比べても1〜2話短い構成であり、尚且つ毎話目が話せない展開で間延びは一切しません。アニメ版『GANTZ』がかなり間延びしていた分、本作はかなり見易いと思います。

『GANTZ』同様グロテスクな描写が多いのは言うまでもないですが、終盤第10話の展開はドラマチックであり感銘を受けました。「親子」「正義と悪」といったテーマに沿って、名台詞がポンポン飛び出すこの回は必見でございます。ただのグロアニメではない、ということです。

『GANTZ』と比べても直接的なアダルトシーンは幾分か軽減されており(ヤクザの鮫島編は攻めた描写が多いですが…)、男女問わず見易い作品となっているかと思います。

Amazon PrimeやU-NEXT、Netflix等のサブスクで視聴できますので、気が向いたら是非。


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