子育て混沌期、仕事を辞めたくなった時に考えてほしい3つのこと
「転職は早まらないほうがいいよ」とこの1年間に一体何度言っただろう。
子どもを2人産んでから、長年勤めていた会社を辞め、地元の中小企業での時短勤務を経てベンチャーでのフルリモートワークへ、2度の転職を経験した。子供は中2と小4になり、なんというか、「子育て真っ只中」の混沌は脱出したように思う。
そのせいか、今まさに混沌の中にいる友人やかつての同僚から、退職や転職の相談を受けることが増えた。対面だったりオンラインだったりと形式は異なるものの、驚くほど毎回同じような話になる。それならいっそ、このnoteに書いておこうと思った。
当然ながら、私はキャリアカウンセラーでも人事でもなく、かつてキャリアの落ち武者だった者、くらいの肩書(?)しかないのだが、だからこそリアルに、伝えたいことがある。世の中は転職を美化しすぎているし、スカウトDMやらカジュアル面談やら、とにかく甘い話が多すぎるのだ。
「会社を辞めるかどうか迷っています、どうしたらいいと思いますか?」という人はだいたい辞めない
これは、私が1人目を出産して復職し、歯を食いしばって働いていた頃に当時の上司から言われた言葉。
「つらいですぅ、辞めようか悩んでますぅって言う人は辞めへんねん。本当に辞める人は、スッとした顔で「辞めます」って言うねん。」
これは真理だと思う。本当にそう。辞めたい辞めたいという人はだいたい辞めない。ただ、「辞めたいって言いたい人」なのである。辞めたいという意志が固まっていない状態だから、まずは辞めたい理由を因数分解して、現職で何が改善できるかを信頼できる人と考えたほうが良い。
冷静な判断は、まず枠のゾーンに入らないと出来ない。ただし、子育て混沌期はここまで歩を進める余裕がないことが多い。どうしろって言うんでしょうね。
転職はオセロ。何かが白になっても、必ず何かが黒になる
転職活動と言えば、かつてはエージェントや転職サイトに登録しないと始まらなかったが、最近ではLinkedinやFacebookのようなSNSからもスカウトが送られるようになった。
だから甘い話がすぐに飛んでくる。けれどスカウトを送る側は、まったく求職者のことなんて見ていないように思う。プロフィールや職歴などの検索条件でひっかけてテンプレからメールを作っているので、当然公開していない情報は知る由もない。
話が逸れたが、スカウトする側は検索条件で絞って量で送ったっていいと思う。でも受け取る側は、条件だけでは絞れない。たとえば給与に不満があり、もっと良い条件を提示してくれた企業へ転職できたとする。すると給与は希望通り白になったが、その分残業が増えて労働時間は黒になった。人間関係もギスギスしており、真っ黒…みたいなことが起こる。転職は一進一退のオセロなのだ。
企業の採用ページや採用スライドに書かれている美しい情報、シュッとした人事を見ると、まるで転職はリセットボタンで、素晴らしく真っ白な世界が自分を待っている錯覚をしそうになる。
しかし、現実はオセロである。現職の良い部分が黒に変わるリスクは、認識しておくべきだと思う。
退職理由はポータブル、結局自分にくっついたまま
先の話とも関連するが、退職に至る「癖」みたいなものは、自分にくっついており、付き合っていくしかないのだと思う。
たとえば、私は1社目を辞めるときに「こんなに働いていたら家庭が破綻する、もう無理」と思って辞めた。いつだって仕事が終わらなくて、子供を寝かしつけてからゾンビのように起き上がり、夜中まで資料を作っていた。日常化されすぎて、サドンデスタイムと呼んでいた。
洗濯機の前に小さな机を置いて、洗濯物がぐるぐると回転するのを見ながら深夜3時にカタカタとデータをまとめていた。休日に子どもとプラネタリウムを見ているときに、土日稼働である顧客からの着信と【重要】と書かれたメールが届き、断念してプラネタリムを出た。上司には全く話が通じず改善どころか悪化の一途だった。このトラウマはいまだ成仏していない。
働きたいのに働けないという絶望感で転職した後、前職でも現職でも長時間労働を強いられることは無かった。前職は6時間の時短勤務だったし、現職も自分でコントロールできるため夕方以降は家庭に全振りできている。一見すると、それはもうスッキリと解消された。
けれど、「無理をすることで自分の価値や組織への貢献をアピールしようとしてしまう」自分は確実に存在していて、連絡はすぐ返さないと気が済まないし、私がやりますよとかこの日なら調整できますとかそういうことをすぐに口走ってしまう。退職に至る癖は、私にくっついていたのだ。
それに気づいてからはかなり矯正できた。退職理由は、会社ではなく自分にある。同じように、たとえば上司と改善に向けた話し合いができず退職しても、転職した先でまた同じようなことが起こる。そうして気づく。「誰とでもうまく働ける自分にならないと意味がない」と。(もしくは「このタイプの人と一緒に働かないよう根回しするスキルが私には足りていない」)
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この3つを踏まえると、まだ現職でできること、やるべきことが見えてくる。長く勤めた先であれば、これまでの実績や人間関係があり、子育て期の混沌で生じる問題についても共有や交渉がしやすい。逆に言えば、この3つを鑑みた上で、それでももう打つ手がなく辞めようと思うのであれば、辞めるべき時なのでは?とも思う。
いずれにせよ、子育ての混沌期は頻繁するイレギュラーと中断でとにかく頭が混乱しており、正常な判断がしづらいように思う。どうしたって、今のしんどい自分!もう無理!にフォーカスしてしまう。
子供はやがて大きくなるし、会社も上司も時間の経過とともに必ず変化する。本当は大好きな仕事・会社であるならば、子育て混沌期の絶望を切り抜けて、どうか続ける道を見つけて欲しい。