#2 たった三文字のあいつの悔しがる顔が見たくて僕は無視する(後編)
〜前回のあらすじ〜
新型のウイルスな『あいつ』がなくならない
→ならせめて頭の中からだけでも消してくれるわ
→鈴木くんの妨害により決戦は日曜へと持ち越しに
詳しくは前回記事をご参照ください。
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さて、リベンジマッチへの準備が始まります。
まずは中断要因のリストアップ。
事前になんとなく「これは危ないな」という当たりはつけていましたが、より明確に行動指針を確定させなければ危ないことを身をもって知ったので、しっかり書き出してみることに。
とにかく最初に挙げられるのは、前回鈴木くんに介入する余地を与えてしまったLINEです。事前にSNSは閲覧しないよう固く誓っていたつもりでしたが、LINEをSNSに含めるという頭がありませんでした。
Twitter, LINE, Instagram, facebook等、網羅的にアウトです。
次に同じくインターネット系です。
試しにダメ元でYoutubeを開いてみたところ、トップページにこちらが上がっていました。
タイトルが「#StayHome #GWも家で一緒に 」。
今はもう出てこないですけど、GW中ずっといましたよね。ローラ久々に見た気がする。
ちなみにこれ、詳細欄にも『あいつ』の名前は出てこなかったので、動画を再生さえしなければセーフです。
あれ?じゃあ、動画の選定だけしっかりすれば大丈夫じゃね?
しかし少しスクロールすると、各マスメディアの運営するチャンネルが24時間ニュースを配信している動画が埋め込まれており、そこにはしっかりと奴の名前が。
あかん。5秒もたんかった。
次にサブスク系ですが、こちらは意外にもトップページ等はセーフ。
中段ほどにYoutube同様マスコミの配信欄がありましたが、サブタイトル含め名前の表記はなし。もしかしたら僕みたいに奴から離れたい人がこういうサブスクに閉じこもるのかな、と思い納得しました(?)。
ちなみにiPhoneのアプリからの閲覧の場合で、PCはページにたどり着くまでに5個ほどトラップが張り巡らされていたので却下。
勿論ニュースサイト等はもっての外ですので閲覧禁止とするとして、
【ネット関係はモバイル端末のサブスク以外は危険】という判断となりました。
続いてはテレビです。
「絶対にあかんやん」と自分でも突っ込みながら、時間もあるので起床後に検証を計画します。
テレビの場合、チャンネルが固定され延々と同じ局の番組が映るため、時間帯を間違えなければ視聴可能ではないかという仮説を立てました。
検証のために16時ちょうどからドラマの再放送を放映している局を選び、17時までの60分間、視聴を続けてみました。全く知りもしない連続ドラマを話数の途中から特に見る気もなく、でも食い入るように見たこと、皆さんはありますか。僕はありませんでした。辛かったです。
結論から言うと、C Mが少し危なっかしいという不安材料はあるものの、概ね良好と言えます。これで普段YouTubeを視聴していた時間に代替としてテレビを組み込むことができます。
あとは読書ですが、これも問題ないでしょう。最近の時事ネタやビジネス書を避ければ引っかかることはないはず。
結局、他人とコミュニケーションを取ることを制限されるだけで、ほとんど生活には影響がないという結論に。元より自粛期間中ですので外出は最低限しかしませんし、24時間くらい一歩も外に出なくたって問題ありません。
念のため、できることを元にスケジュールを組んでみます。
00:00 読書or 執筆
04:00 就寝
11:00 起床・入浴
12:00 掃除・洗濯
13:00 ブランチ
14:00 サブスク視聴
16:00 テレビ視聴
17:00 サブスク視聴
19:00 夕食
20:00 ランニング
21:30 入浴
22:00 読書or執筆
なあんだ、全然大したことないじゃん。
若干時間を持て余し気味ですが、なにも急かされているわけではないのでダラダラしてればいいんです。『あいつ』を認識しない時間を作ることが目的だ。どうせ時間があるなら、いつもより丁寧に生活してみようか。水回りの掃除も最近面倒で後回しにしてたし、料理もいつもより凝ってみようかしら。なんだかうきうきしてきました。もともと『あいつ』への苛立ちや反発心から出た発想でしたが、こんな豊かな気持ちにさせてくれるなんて、悪いことばかりじゃないな。というかそもそも、『あいつ』自体はなにも悪くないんです。ただ生きているだけ。種を残すため・増やすために生き物を苗床に渡り歩いているだけ。ウイルスが生物かどうかというのは議論があるみたいだけど、人を苦しめる意識があるわけじゃない。残念ながらそれによって副次的に苦しめられてしまっているだけだ。人間も同じだ。僕だって生き物の命を何千何万と犠牲にしてきた。違うのは人を殺したかどうかくらいのものだ。いや、それだってわからない。もしかしたら僕が生きてきた中で、僕のために死んでしまった人がいるのかもしれない。北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起きる。『あいつ』も僕も、無自覚に人を殺めている可能性だってーー。
そこで、高い音が響きました。
つけっぱなしにしていたテレビの画面上部に、ニュース速報が出る。
5月9日、東京都での新型コロナウイルス新規感染者数36人と発表
小池都知事
———。
で、出たーーーー!!!!!
マジか!ニュース速報とか反則だろ!じゃあもうテレビはダメだ。他のもので代用しないと……。
今考えると別に全然大したことではないんですが、この時はちょっと前までワクワク気分だったこともあってか絶望感が一挙に押し寄せてきて、軽いパニック状態に追い込まれてたんだと思います。そこから疑念がいろんなところに波及していく。
テレビがダメならサブスクは?いやあれは速報なんて機能知らないし大丈夫じゃないか?待てよ、動画の前に宣伝入ることあるよな、あれにももしかしたらニュースとか出る可能性も……じゃあ本は?関連書籍以外なら安全なはず。でも、ああ!文字列を横読みとか縦読みしたら浮かび上がってきてしまうかもしれない!!そう考えたらもうそこにしか気が回らなくなりそうな気がする!ちくしょう!ていうか!「〜の頃なにしてた?」なんて文章が音声になったら完全にアウトだ!人の声はダメだ!!ランニングも中止!!誰がどこでなにを話しているかわかったもんじゃない!!!窓も閉めろ!!誰が来ても戸を開けるな!!!夢も見るな!!ていうか寝るな!!誰も寝てはならない!!!電話も出るな!!!!でも電源切ったら緊急地震速報とか聞こえなくなるって危ないのでちゃんとつけときましょうね!!!!!!!ああ!!!!ああああ!!!!!!!
部屋をウロウロと歩き回りながら軽度のトリップをしたのち、僕は座り込んで考えました。何かあるはずだ。ネットも使わず、本も読まず、誰の声も聞かずにできることが。完全に本来の主旨を見失い、縋り付く物を探すように考え続けます。そして最後に、見つけました。
「ああ、あれなら……」
迎えた午前0時。
リベンジの時です。
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**■(再)実験開始
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しんどかった。いろいろ考えました。その中で、一条の光を見出しました。
この混迷の時代を救う、『あいつ』から逃れる唯一の手段。それはーー、
写経です。
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■結果
・仮説実証
・『コロナ』を文字・音声媒体で認識せず24時間生活することは可能
・唯一の対抗手段は写経(個人の見解です)
・般若心経写経枚数・2
(その後就寝、起きたら20時だった、二度寝して1日を終えた)
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※この記事は実際の思想・宗教・団体をなんら批判するものではありません。