#8 【仮説】雨の日に傘が必要だが買わない人の数をnとしたとき、世の中の傘立てに放置された傘の本数はn-1になる
むちゃくちゃ更新が久しぶりなんですが、そんなことは棚に上げて、雨ばっかりですね。
どうやら関東の梅雨明けは8月以降になるそうです。梅雨といえば6月という認識は令和には適用できないのかもしれません。このまま列島亜熱帯時代に突入してしまったら四季とかどうなっちゃうんだろうか。どうもなんないか。じゃあいいや。
ところで、僕は傘というものが嫌いです。
あんなに邪魔なものないでしょう。差している時ならまだしも、濡れた傘を持ったまま歩いている時が最悪です。雨水が滴るわ服に雨が付着するわで不快感が第一宇宙速度を超える勢いで上昇する。
そのためちょっとやそっとの雨では傘なんか差しませんし、万一の時の折り畳み以外所持していません。外出先でよっぽどの雨が降った時は買うこともありますが、そもそも雨予報の日に出かけることが少ないですし、車移動がメインなので駐車場まで走ってしまうことがほとんどです。
ですが先日、買い物をしていた時に猛烈な雨に見舞われました。
英語で土砂降りのことを「cats and dogs」って言うと誰かに聞きました。由来は知りませんが先日のあれはどちらかと言うと「tigers and dragons」って感じの雨で、そんなことはどうでもいいんですけど、僕はしばらくコンビニの軒先で雨宿りを余儀なくされました。傘を買おうかと何度も思いましたが自宅のある地域は曇天であるらしく、買ったら一定距離を持って歩かなければならないことが確定します。それはどうしても避けたい。
そんなこんなで天気予報アプリで雨雲レーダーと睨めっこしながら雲の切れ間を探していると、コンビニの入口付近が何やら騒がしい。20代前半くらいの女性二人組が八百屋のおっさんぐらいの声量で話していました。
「はぁ!?またなんだけど!!」
「なに、どしたん?」
「傘!!パクられてる!!」
よくあることですが、盗難のようです。僕も経験があります。
「え、最悪じゃん。タカシマヤのやつ?」
「違う、ビニ傘」
「なんだ、よかったじゃん」
「よくないっしょ!雨降ってんだから」
「買えばいいっしょ」
「さっき買ったばっかなのに」
「うーわ、最悪」
被害者ではない方の彼女の「最悪」の基準はダブルスタンダードなのかな、と思いながら聞いていると、そのまま店内に入り、しばらくすると新品の傘を持って出てきました。
「1,200円使ってんだけど、タクシー乗れたじゃん」
「それな」
「こんなに傘あるのになんで私のなん?ありえなくない?」
「わかる」
確かに、入口の脇に置かれた傘立てには複数のビニール傘がありました。
「私もどれかもらっちゃえばよかったか」
「そりゃダメでしょ」
「だってさ」
「盗んだカスと同じことするの?」
「まあそうだけど……」
むちゃくちゃ口悪いけどめっちゃ正論言うやん。
その後彼女たちは豪雨の中キャイキャイ言いながら小走りで駅の方へと向かっていきました。その後ろ姿に小さく拍手を送りながら、ふと頭に疑問が一つ湧いてきました。
『なんでビニール傘ってあんなになくなるんだろう?」
確かに、盗難する人が一定数いることは理解できます。ですが、それと同じくらい、いやそれ以上に捨てる人もいるのではないか?
さらにいえば、捨てるより置き忘れてくる人の方が多いのではないか?そうなるとたとえ自分の傘がなくなったとしても傘立てにはいくつか余剰な傘があるはずです。
大多数の人が「自分の傘が盗難されたとしても、別の傘を持って帰ったりしない」と考えるでしょうが、そもそもの数が確保されていれば一定数存在する盗人がその余剰な傘を盗っていく確率が高い数値で維持されるはずなので、そう人生で何度も自分の傘が盗まれることはないように思えます。
ものは試しと思いその日コンビニの軒先を出た後、雨の中近隣の傘立てを調べてみましたが、店内の人数と傘の本数はほぼ一致していました。つまり、余剰分の傘はない、と言うことになります。
となると、世の中で意図的にせよそうでないにせよ、「傘立てに放置される傘は、傘が必要な人数よりも少ない」という結果が得られます。
じゃあ一体、どれくらい少ないのか?
【仮説】《傘が必要だが買わない人数》−1=《全傘立てに放置された傘の本数》
少ない、ということはわかりましたが、体感として放置傘の本数がそう少ないとはどうしても思えません。誰しも、急に快晴になってさっき購入した傘がすぐ不要になった、みたいな経験はあるはずです。であれば、両者は限りなく近い数値なんおではないか?例えば、たった1の差とか?
そうだったらなんだか面白いですよね。
というわけで、検証です。
【検証①】
ある雨の日に存在するアクティブなビニール傘の総数は何本なのか?
ここでビニール傘に限定したのは、軽い気持ちで盗難しやすい、されやすいのがビニール傘だという仮定の上で一般化しやすくするためです。
また「アクティブな」とは、家の中で傘立ての肥し(?)にされていない、という意味です。フローな、と言い換えてもいいかもしれません。他人がアプローチできない傘を勘定に入れても今回は意味がないですからね。
まず第一に、データを集めましょう。
日本での年間の傘の消費量(購入量)は1億3000万本程度(日本洋傘振興協議会)。そのうちビニール傘は8000万本とも言われています。(産経新聞)。
日本の年間降水日数は世界13位らしいのですが、この消費量は世界一とのことで、いかに我々が安易に傘を買っているのかがわかります。
ちなみに、ビニール傘にはJIS規格が定められており、現在傘の規格として流通しているJUPA規格はこれと全く同様であり、この規格では500回の開閉テストをクリアすることが求められているそうです(洋傘タイムス)。
年間の降水日数の平均は117日なので(都道府県ランキング)、1日につき3回開閉したとして1.42年は耐用する計算になります。けれど、ビニール傘ってそんなに手元にありませんよね……。
先ほどの降水日数を使って考えてみましょう。
1年のうち117日に雨が降るということは、これで年間の消費本数を割って、
8000万(本) ÷ 117(日) ≒ 68.4万(本)
が、雨が降った日1日で購入されるビニール傘の本数です。
翻って、雨の日に外出する人の人数はどの程度なのでしょうか。
1日の外出率は平日と休日で大きく差があり、平成27年の調査で平日80.9%、休日で59.9%になるそうです(経済産業省)。仮に休日と仮定した場合、日本人口を割っておおよそ7577万人が外出している計算に。
しかしこれは晴天雨天関係ない数値なので、雨の日に限定する必要があります。
算出が難しいのでざっくりになりますが、「雨の日の休日はいつも通り外出しますか?」という質問に対し53%の人が「急用がない限り出かけない」と回答したというデータがありました(リサリサ調べ)。このすべてが晴天なら出かけていたと仮定すると、
7577万(人) × (100% ー 53%) ≒ 3561万(人)
ちょっと強引ですが、これが雨の日の外出人口ということになります。
雨が降っていても傘を差さない僕のような人間もいますが、それを考えないものとすると、雨の休日1日には3561万本のアクティブな傘があることになりました。
このうちビニール傘の本数を算定するのですが、これには「ビニール傘を普段使いする人口」のデータが必要です。つまり、その日に購入したわけではないがその日使われたビニール傘の本数が要るわけですね。
これに関してはアンケート結果で41.2%が普段使いの傘がビニール傘だと回答しています(アスマーク調べ)。
つまり、
(3561万本 ー 68.4万本) × 41.2% ≒ 1439万本
これに再度68.4万本を加えた1507.4万本が雨の日のアクティブなビニール傘となります。
【検証②】
ある雨の日に放置されるビニール傘の総数は?
フローなビニール傘の本数はわかりましたが、勿論この全てには持ち主がいます。通常であれば持ち主たちは傘立てに傘を入れた後、一定時間後にその傘を取り出し持ち帰ります。
ですがそのうち何本かは、晴れたとか置き忘れた等の理由で放置されることになるでしょう。その本数を確かめてみます。
アンケートによると、「あなたがビニール傘を処分する(手放す)タイミングをお知らせください。(複数選択可)」という質問に対し、13.2%の人が「外出中に紛失する」と回答し、そのうち最も多いタイミングで該当すると回答した人は4.0%となっています(アスマーク調べ)。
なお、「外出中に紛失する」も放置していると捉えることも可能ですが、あくまでも紛失なので、電車内での置き忘れ等の「不本意な」手放しと捉えることとします。
「4%の人が最も多いタイミングで外出中に不要になる」ということを「4%の傘が1日に不要となり放置される」と捉え直すこととすると、この「最も多いタイミング」をある雨の日に当てはめ、25本に1本は不要になって放置されていることになります。
1507.4万本 × 4% ≒ 60.3万本
これが「意図的に放置されたビニール傘の総数」です。
【検証③】
《傘が必要だが買わない人数》−1 = 60.3万本なのか?
最後に、この値が傘を盗む人数より1だけ少なければ仮説実証となります。
ですが、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、上記のアンケートには、「外出中に盗難される」という回答項目も存在していました。
この項目が最も多いと回答している割合は全体の2.8%で、「外出中に不要になり置いてくる」の4.0%を下回っています。
具体的な参考数値にすると、
1507.4万本 × (4.0% ー 2.8%) ≒ 18.1万本
という数が、盗まれる数より多く放置されていることになります。
ということは、都市の集中具合にも当然依拠しますが、街中を探し回ると使える傘が転がっていることになります。
当然ながら、傘立てはその所属する店舗などによって点検されていますし、逆にいえばそれがなければ我々が快適に傘立てを使用することもできませんから、そうそう不要な傘が見つかることはありません。
さらにいえば、不要になるタイミングは基本的に雨が上がった後でしょうから、傘が必要なタイミングに放置傘が多いとは言えません。
ですが、18万本以上の傘が放置される現実を認識すると、なぜか逆に傘を大切にしようかな、と思い始めました。
ある廃棄場では、多い日は1日に500本ものビニール傘を回収しているそうです(NHK調べ)。さらに、ビニール傘はリサイクルが大変難しいらしく、分別も大変。となれば、捨てる側がちゃんと分別したり、ちゃんと持って帰ってくることが大事になります。
傘を盗難するのはもちろんいけませんが、手放すことにもちゃんと気を配らなければならないな、と今回の検証を通じて柄にもなく感じました。
最近では傘のレンタルや寄付なども多いようなので、気になった方は調べてみてはいかがでしょうか。
あのコンビニで見かけたギャル二人が、買ったビニール傘をちゃんと持って帰ったことを願って止みません。
僕としては、今後もすぐに傘を買わないよう心がけ、出来る限り差さずに行こうと思います(?)。
【結果】 仮説実証ならず
《傘が必要だが買わない人数》−《全傘立てに放置された傘の本数》≒18.1万本
このnoteで仮説が実証される日は来るのだろうか……
(各データの出典は各項目のリンク先からお借りしました)