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「ヘルステックが実現する『本質』とは〜トレンドからひもとく現在地〜」Confie・上田悠理- 医療人2030 Core

新しい医療のパラダイムが求められている現在。そんな時代にふさわしい、次世代医療を担う人材を育むプロジェクトが「“医療人2030”育成プロジェクト」です。

活動の核となるセミナー「Coreコース」の第7回は前後半の2部構成となり、後半はヘルステック分野で八面六臂の活躍を見せる上田先生が登壇しました。テクノロジーの進化で変わり続けるヘルステック業界の現在と、求められるソリューションの在り方とは?

2025年1月10日に行われた講演の一部をお届けします。


登壇者プロフィール
株式会社Confie代表取締役/Healthtech/SUM統括ディレクター/医療法人向生會 理事長
上田 悠理

医師、支援者、起業家と多様な顔を持つ上田先生。2024年に公開されて大ヒットとなった映画『はたらく細胞』の医療監修も手がけるなど、活動の幅は広がるばかりです。


M&Aで目まぐるしく変わるヘルスケア市場

ヘルステックは「ヘルスケア」と「テクノロジー」を掛け合わせた言葉で、人々の「よりよく生きる」をテクノロジーで実現するサービスや取り組みのこと。不妊治療、小児医療、ウェルネス、スポーツテック、ビューティーテック、予防医療、救急医療、介護、グリーフケアと、人の一生のあらゆるシーンを支えています。

セミナーの冒頭では、これらヘルステックの基盤となるヘルスケア産業の現状が確認されました。

現在の日本は超高齢社会・健康長寿社会を迎えており、ヘルスケア市場は引き続き拡大する見込みとなっています。世界に目を向けると、コロナ禍の後半でいったん減速したものの、現在は市場も徐々にではありますが回復傾向あるようです。また、IT業界全体の潮流と同じくM&Aが加速度的に増加しているのも特徴で、こうした状況下で日本のヘルスケア関連企業が海外企業に買収されていることへの危惧を、上田先生は訴えました。

「現在の日本は市況として安く、高齢先進国であるがゆえの高齢者向けサービスが買われている状況は、国家として危険ではないかと思っています。例えばデイサービスのツクイや介護サービスのユニマット リタイアメント・コミュニティも投資ファンドのMBKPに買収されました。彼らは『保険制度に拠らず、個人からお金をもらってサービスを提供するスキームに変えていく』と言っているのですが、それでは『お金を払えない人たちをどうするのか?』といった問題も出てきますよね」

もっとも、こうした問題はありつつも業界全体ではエコシステムが回り出しており、上田先生もビジネスとしてのヘルステックに「夢が見えてきた状況」とまとめました。


RWEで個人のデータが力を持つ時代へ

話題は「ヘルステックビジネスの変遷」を経て、トレンドの紹介へ。

EHR(電子健康記録)やPHR(パーソナルヘルスレコード)の社会実装によって、医療データが爆発的に増大している現在。こうして得られた臨床データ(Real World Data=RWD)によって導き出されたエビデンス(Real World Evidence=RWE)に、業界から熱い視線が注がれています。

興味深い事例の1つが、郵便番号と遺伝子情報のどちらが余命や健康に影響するのかを比較したアメリカのデータです。同じ所得層であっても、地域の教育レベルや生鮮スーパーの有無、飲食店の傾向といった生活環境によって余命に差があることがわかったのです。

生活の在り方を有用とする根拠が得られたことで、今後ますます個人のデータが重要になると予想されます。そうした時代に求められるのは、どのようなサービスの在り方でしょうか? 上田先生は意外にも、医療の根本に立ち返るかのような答えを示しました。

「デジタル化を進めて業務を効率化しても、我々医療従事者は、その背後に必ず有機物としての人間がいることを忘れてはいけないと思います。逆に言えば、高度にデジタル化やテクノロジー化が進んでいるからこそ、リアルのタッチポイントにおける体験がビジネスを成長させていく。だから“有機的なあたたかさ”を志向して、人間がいることを忘れずにソリューションを作ることが、成功の鍵の1つと考えています」




セミナーはまだまだ続きましたが、本レポートはここまでとなります。

上田先生が投げかける本質的な問いかけに、参加者も真摯な態度で応答。ヘルスケア産業からスタートした話題は、次第に医療ビジネスと診療報酬制度の共存可能性、国民皆保険制度の未来といった国の制度にまつわる問題へと移っていき、多くの方々が様々な立場から意見を交わしていました。



“医療人2030”育成プロジェクトにぜひご参加ください!

「“医療人2030”育成プロジェクト」では、魅力的なゲストを招いたセミナーを今後も開催していきます。2024年度は全12回+αを予定しているので、興味を持たれたらぜひ以下よりWEBサイトにアクセスしてください!

未来の医療を創る‘医療人2030’育成プロジェクト
https://marianna-dhcc.jp/