昭和のスターウォーズ「光線剣」/The London Symphony Orchestra - The Story Of Star Wars (Japanese Version) [20th Century Records]
Artist: The London Symphony Orchestra
Title: The Story Of Star Wars (Japanese Version)
Label: 20th Century Records
Genre: Drama
Format: LP
Release: 1978
ジョージ・ルーカスが制作したスペースオペラシリーズ超大作スターウォーズのドラマレコード。ジェダイとシスの戦いを長年に渡って描いた大河ドラマであり、サイドストーリーや膨大な設定資料、映像美としての世界観など、世界中の人々を今もなお魅了し続けている。
本作は、スターウォーズのエピソード4/新たなる希望のドラマレコードである。ドラマレコードと言えば、アニメ界隈では声優のドラマCDなどが有名であるが、本作は映画のドラマレコードという珍しい一品で、スターウォーズの記念すべき一作目が1977年に公開された翌年にリリースされたもので最初期のものにあたる。スターウォーズは復刻される毎に追加シーンなどが加わることが多く、単純なリバイバルよりもちょっとした世界観を楽しめるようになっている。
本作の内容はと言えば、作曲者兼指揮者のJohn Williamsの元、The London Symphony Orchestraがスターウォーズの楽曲を演奏しており、声優による日本語吹き替え音声とナレーションに効果音が加わった形で進行する。映画のダイジェスト版で映像がない音声のみのものとして認識していただいて間違いない。声優はというと、ルーク・スカイウォーカー=神谷明、レーア・オーガナ王女=潘恵子、モフ・ターキン総督=山田康雄など昭和を代表とする声優を確認できる。
中でも本作の驚くべき点は、翻訳である。スターウォーズの代名詞とも言えるライトセイバーが、翻訳の最初期のせいのためもあるのか、なんと「光線剣(こうせんけん)」と呼ばれているのである。既にネタバレになっているのであるが、初見で聞いたときのインパクトは凄まじかった。またレイア・オーガナ姫ではなく表記はレーア・オーガナ王女、ダース・ベイダーではなくダース・ヴェイダー表記であるなど、どことなく違和感というかパラレルワールド感を感じさせてくれる。
また映像抜きでドラマをテンポよく進行させることは困難であるが、それをナレーションという形で補っていることが特徴の一つでもある。このため、本作での大切な役割の大半をナレーションが占めていると言っても過言ではない。
当たり前であるが、雰囲気が全体的に昭和であり、完全に昭和のノリである。昭和を生きた人間にはよく分かる、その時代特有の空気がスターウォーズを覆っている。ジェダイのフォースでもシスのフォースでもなく昭和のフォース(空気)が強いのである。若い世代からすれば古臭く、古い世代からすれば妙に懐かしいのである。
本作の役割としては、当時は映像を再生する機器が広く普及していないため、レコードが映像再生の代替メディアとなっている。もちろん、映像はないので音声のみで想像力を働かせ、各々が音声を元に脳内再生をするのである。一方、現代ではYouTube、Netflix、Amazon Primeなどで見逃した配信や映画は容易に見ることはできるし、テレビの録画機能で保存も可能である。記録媒体としてのレコードの役割は既に現代の科学技術やインターネットに取って代わられているが、視覚に頼らず聴覚から得られる情報を元に空想上の映像を再構築するというアナログ的な楽しみがここには存在する。
英語の聞き取りは苦手であるが、海外の映画を見るときはその国の言語で字幕付きのものを見る。その感覚に慣れているためもあり、いざ日本語吹き替え版を見ると違和感を感じて仕方ないが、ある意味ではそういった違和感を楽しめる内容となっている。
音源として最初にYouTubeリンクを掲載していますが、視聴の際は目を瞑って視聴することをお勧めします。