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ジャガイモの一生を音にしたドキュメンタリー/Matilde Meireles - Life of a Potato [Crónica]

Artist: Matilde Meireles
Title: Life of a Potato
Label: Crónica
Genre: Field Recording, Experimental
Format: Cassette
Release: 2022.01.25

https://www.discogs.com/ja/release/22347349-Matilde-Meireles-Life-Of-A-Potato


ポルトガル共和国の海岸都市ポルトに拠点を置く実験音楽レーベルCrónicaより、アイルランドの音響作家Matilde Meirelesのジャガイモの一生について焦点を当てた本作。

本作は、ジャガイモの一生について、土とジャガイモの関係性から食卓に並ぶために調理される過程など、ジャガイモの状態の推移とともにその周囲の音を取り込んだ音響ドキュメンタリーである。

雨に打たれる音、食器がカチャカチャと鳴っている音、オリーブオイルで炒める音、オーブンで調理している音、遠くでヘリコプターが飛んでいる音、野鳥の囀る音など、ジャガイモを取り巻く物音が随所に盛り込まれている。物音の面白いところ、おおよそイメージの初期段階が具体的なもので統一される点にあると思われる。一般的な音楽は全て抽象的で最初から聞き手の想像力に委ねられるが、物音は具体音に分類され、それが何か分かれば自然とその物体を連想する性質がある。これが物音の面白い点であり、これを音楽に応用すると、起点は具体的なものに統一される傾向にあるが、その後のイメージや感受性については聞き手個人に委ねられることになる。

ジャガイモ及びそれに付随する環境音の録音素材を元に、一貫したテーマ性で創り上げられた本作。
A面ではジャガイモとジャガイモに纏わる具体音を中心に制作されているが、B面ではそれの具体音に薄いレイヤーを敷くが如く、抽象的な電子音や若干の音楽性をエッセンスとして加えている。

物音という性質上、共通した情景を思い浮かべやすいが、そこから先は各個人の人生経験や感受性により、楽曲に対する印象の無限の創造性があるように思われる。

ジャガイモという日常生活に馴染みがあり、食として世界共通であるが、そのジャガイモに対してサウンドアートという切り口でアプローチしていることや、これを音源にしようという着目点が非常に面白い。

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